次に紹介するのはパズルではなく、マリモである。これが研究とどう関係するのか? 一見わからないだろうが、ぼくにはこれがプリオンの凝集体に見える!
どういうことかまだわからないだろう。プリオンやアミロイドを細胞内で研究するときにはプリオン蛋白質にGFPを融合させて、細胞で発現させる、ということがよく行われる。そのプリオン蛋白質がプリオン化して凝集になると、細胞内で緑に光る輝点(粒)が生じる(注)。それが視覚的にもわかりやすいので、プリオンやアミロイドになった証拠として使われるのだ(それに対して凝集になっていない場合には細胞質全体が緑になる)。
そこでぼくたちの研究である。
酵母のプリオンSup35蛋白質でもSup35-GFPの「輝点」がプリオン細胞の目印として用いられる。では、この輝点を酵母が増殖していくときにずっと観察していけばどうなるであろうか。この輝点がプリオンそのものならば「増殖」するはずなので、輝点は2つや3つに分裂して増殖していくのでは?と考えた。
答えは、否。
この輝点は分裂して増殖するどころか、観察していくうちに見る見る消失していくことがわかった。
と言っても、ほんとうに「消失」していたわけではなく、大きな輝点がほぐれてオリゴマーとなる(通常の顕微鏡ではオリゴマーは細胞質に拡散して見えるだけである)。詳細はKawai-Noma et al., Genes to Cells, 2006を参照してください。
ここでマリモに戻るが、マリモは酵母プリオンで見えた「輝点」に相当する、と考える。マリモも元はと言えば、小さな藻が球状に集まったものだ。なので、その小さな藻をプリオンのオリゴマーと考えたわけである。
ちなみにこのマリモは札幌出張の帰りに買ってきたものだ。天然モノではなく人工マリモです。頭の中がプリオンのオリゴマーと巨大な凝集体でいっぱいだったので、見た瞬間、これだ!となった。
さらに言えば、ずっと観察していてもほぐれてはいきません。マリモとはそういうものだろうけども。
(注)細胞内でプリオンの存在状態というのは案外わかっておらず、試験管内で作るとできるきれいな線維と細胞内プリオンの実体の関係はまだよくわかっていない。
2006/09/26
マリモとプリオン
ラベル:
プリオン
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