2013/10/06

プリオン線維もどきの積み木


 夏前の国内出張でいくつかのブログネタのおもちゃを入手したと書いて最初のを登場させてから、あっという間に2ヵ月も経ってしまった。

今回紹介するのは、めずらしくプリオン(アミロイド)線維もどきのおもちゃである。

小っちゃな積み木。一番長いところで3cmくらいである。

どうプリオン線維に似ているかというと、
こんな風に並べてみる。


 これが、とある酵母プリオンの論文 (DePace AH et al, Cell 93, 1241, 1998)の中のプリオンの模式図にそっくり。見てもらえば一目瞭然である。


ほぼ同じ形である。

ここでこの積み木から連想する酵母プリオン研究の謎の一つを。

 狂牛病のプリオン蛋白質は今のところPrP一種類しか知られていないが、出芽酵母(パン酵母)では十種類以上のプリオン蛋白質が既に見つかっている。しかも、おもしろいことに、機能もアミノ酸配列もちがう酵母プリオンはお互いに関係し合っているのである。

「関係しあっている」というのは、たとえばA, Bというプリオン蛋白質があったとき、Aがプリオン状態になっているとBもプリオン状態になりやすい、その逆もある、というような相関関係だ。

 そのメカニズムとして、異種間のプリオン線維がつながるというモデルがある。それが、上の写真で言えば、色違いのファイバーである。

実際には、酵母プリオンがプリオン状態になるには、シャペロン(Hsp104など)も必須なので事はそれほど単純ではないようだが、プリオンの増殖機構を考えるときに大切な知見であることにはまちがいない。





2013/07/30

マルチカラーのフォールディングパズル


 このブログのネタにできそうなパズルやおもちゃは海外出張時の街歩きのときに見つけることが多い。

 幾何学的なパズルの類を楽しむ土壌が日本にはないのかと寂しく思ったりすることもあるが、最近出かけた国内出張先ですばらしいお店に遭遇した。木製玩具を扱う個人経営の小さなお店だ。

 外観は幼児向けっぽい玩具店だったが、中に入って一瞬で、すばらしい品揃えであることがわかった。しばらくは子供に交じって大の大人が一人黙々とあれやこれやとおもちゃをいじり、結局かなりの大人買い。右上の写真は購入した一部。少しずつ紹介していこう。

 まず今回は定番のフォールディングを模したパズルから。

 これまでにも最終的に立方体にする木製パズルはいろいろと紹介してきた(例えば、「経路の違うフォールディングパズル」など)。今回見つけたのもそれらに似ているが、もう少し自由度が高く、しかもパーツひとつひとつの色がちがっていて美しい。



パズルとしては簡単だが、 よりタンパク質らしいかもしれない。以下、崩した「変性」状態。


今まで使ってきたパズルと一緒の写真。


日本国内であまり見つけられないのは、単にふだん街を歩いていない、歩くとしても同じようなところしか歩かない、ということかもしれない。

知らない街をアテもなく歩きながら思わぬよい店に巡り会うのはやはり楽しい。研究活動でも似たようなことがたまにある。

2013/07/27

シャペロニンの模型が手元に!

 1年ほど前の本ブログエントリーにて、柔らかく透明でリアルなタンパク質模型について紹介した。北陸先端大の川上勝さんが3Dプリンターをうまく活用した作成法を考案したすばらしい模型である。

「柔らかくて透明なタンパク質模型(1)」
「柔らかくて透明なタンパク質模型(2)」

あるミーティングでこの模型を一目見て感動し、川上さん経由で小さなタンパク質をいくつか特別に注文してラボに置いていた。小さなタンパク質というのはリゾチームとリボヌクレアーゼなどである。この両者の模型だけでも存在感を放っていて満足していたし、このブログを見たある方が「川上タンパク質モデルをぜひ生で見たい」ということで部屋に来てもらったこともあるくらいだ。

とは言え、シャペロニン屋としてはもちろんGroELとGroESがほしい。実際、川上さんは試作品の一つとしてGroEL14量体、GroES7量体を作っていて、実物を見て「いいなぁ、いつかは・・・」と思ってはいた。ただ、小さなタンパク質の単量体でも気軽ではなかったので、14量体、7量体となると手が出なかったのである。

が、夢はかなった。




川上さんから連絡があり、GroEL、GroESの模型を貸し出してくれることになったのだ。

ぼくのところにふだんは置いておき、講義を始めとしたタンパク質科学の紹介(サイエンスカフェなども含めた種々のアウトリーチ活動)でぼくが使うのはもちろんのこと、さらには希望する方に貸し出してどんどん活用してもらうという約束である。

20年来シャペロニンGroELの研究をしている一人としては実にうれしい申し出である。

すぐに届けてくれて部屋のテーブルに置いてある。その存在感はすばらしい。
写真で7量体など全部つながっているが、実際には簡単に個別のサブユニットにばらせる。この模型は実によくできていて、磁石でサブユニットの接触部位がつながるのだ。
質感や一部をバラしたようす、組み上げるようすは川上さんが作成したYoutubeの動画でわかる。


リアルなのでGroELの作用機構に関する新しいアイディアも湧いてきそうだ。

ということで、見たい方、何かのイベントなどに使ってみたい方はぜひコンタクトをとってください。

この「川上モデル」模型は昨年の公開のあと、たいへん評判がよく、さまざまなメディアで取り上げられていたり、さらには別の3D模型に展開している。興味のある方は以下を参照してほしい。もしくは直接川上さんに連絡を取ってください(川上さんツイッター kmasaru426)。

・バクテリアの3D模型 → 科研費新学術「運動超分子マシナリー」ウェブサイト
・分子模型のオンラインショップ 「SilMol

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 以下はおまけで、リングとリングを分割(スプリット)させた。(→参考 Taguchi H.et al., J. Biol. Chem. 1997


他のものと一緒にするとその大きさの感じがわかってもらえるかもしれない。


2013/05/06

新しいメンバー

 春になり、新人が研究室に入ってきた。研究室サイトのメンバー欄を更新した。

以下、ふつうの写真。


 以下、ふつうじゃない写真。
 学生たちのアイディアで飛んだり、散ったり。加工もお任せで、隠れキャラがいたりする。



 今年もがんばりましょう!