2016/05/28

Snaak:カチカチと折りたたむ3Dパズル

次もアメリカで入手したモノで立体造形パズルというかおもちゃである。Snaakというらしい。snaak.comによると、"3D puzzle and shape-maker tool."と定義されていた。

日本では未発売のようだが、なかなか気持ちよくいろんなかたちを作ることができる。

まず、一番の典型のキューブ型に造型してみる。
写真ではちょっとわかりにくいが、4×4×4=64個のパーツがゴムでつながっていて、カクカク、カチカチと折れ曲がるようになっている。


では、キューブをバラして、「変性」させてみよう。














購入時は8×8の平面状として販売されていた。


右がパッケージ。MOMAのミュージアムショップにて購入。





説明文として、
Millions of shapes in your hands
ということでかなりいろんなかたちを作ることができる。

研究室のお茶部屋に置いておくとなかなか人気で、学生が日に日に違ったかたちを作ってくれる。



売り場には透明、赤、緑があった。GFPや赤蛍光タンパク質を意識して緑と赤を購入。


緑と赤をそれぞれ GFPとRFP(Red Fluorescent Protein)に見立てると、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)バージョンを作ることも簡単だ。


真ん中の「ペプチド」領域がヘリックスを形成して緑と赤が近いと、エネルギー移動が起こって、緑蛍光を励起したとき、赤蛍光が出る。
以下は、真ん中の「ペプチド」が伸びきって、GFPとRFPの距離が拡がり、FRETが起こらない。


それはさておき、開発元を見ると多様なかたちが紹介されている。
 (→ Snaak Geometry by Gideon Cube-Sherman )。

そのサイトにはDNA二重らせんもある(→ Double Helix by Dane Christianson )。


 さらには、そこにあった動画も載せてみる。カチカチ感が伝わるかもしれない。








2016/05/21

Playable ART Ball でカラフルな「ポリペプチド」アート

 海外に行くと紹介するネタが増えるのが常である。

先月アメリカのCold Spring Harbor Laboratoryのミーティングに出かけた際にもいくつかネタを入手した。

 まずは、Playable ART Ballという木製のボールが連なったおもちゃである。
 カラフルなボール一つ一つをアミノ酸に見立てれば、つながっている状態は「ポリペプチド」である。
 ショップ(MOMA museum shop)での展示品や箱に入っている状態はリング状になっているが、切り離せば一本のヒモとなり、より「タンパク質」らしくなる。


ボールは20個。いろんな形を作ることができる。

ダブルリング構造。二層と言っても、2つの独立したリングを重ねているわけではなく、一本のリングからこのダブルリングを作っている。

写真ではサイズ感はわかりにくいが、ボール一つの直径が3cmくらいなので全体としてはけっこう大きく、重量感たっぷりである。適当に形を作って置物にして飾ってもいい感じだ。



 

ボールを切り離したところ。
連結部はあまり動かない仕組みであることがわかってもらえると思う。
 購入時の箱の裏面にいろんな形が書いてある。


日本内でも入手可能なようだ(Google "プレイアブルアートボール")。
ネットショップの中に動画があり、リンクをはれるようなので以下に載せてみる。



木製の質感やカラフルさもあいまって、そばに置いてあるとついいじりたくなる代物だ。小さな子供のおもちゃにもうってつけである。

2016/05/15

新設の細胞制御工学研究ユニットに所属変更

この4月に東工大では大きな組織改革があり、それに伴って所属の変更があった。


これまでの大学院 生命理工学研究科から科学技術創成研究院 細胞制御工学研究ユニット へ移ったのである。ただし、生命理工から離れたわけではなく教育は生命理工学院担当のままだ。

 大学改革は大きく教育改革研究改革に分かれ、前者では学部と大学院が統一・再編されて「学院」が創設、後者では研究所が全て「科学技術創成研究院」に組み込まれたのに加えて、最先端研究を小規模のチームで推進する「研究ユニット」が設置された。

 この研究ユニットの一つが大隅良典栄誉教授をユニットリーダーとする細胞制御工学研究ユニットであり、そこに移ったということだ。

細胞制御工学研究ユニットHP:http://cell-biology.jimdo.com/

 既に先月このユニットの設立シンポジウムが開催された。

http://cell-biology.jimdo.com/%E3%82%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0/


このポスターはユニットの木村研ポスドクの佐藤さんが写真撮影も含めて作ってくれたもので、このブログネタにぴったりである。写真に登場する小道具のうち右から2番目の「細胞」以外の3つの「タンパク質」を提供した。左から、GroELユビキチン、一番右がGFPだ。GFPについてはまだ紹介していないが最近講義用に大学予算で作ってもらったもの。なお、右から2番目の透明の筒に赤い毛糸玉が見える「細胞」は佐藤さんが作った凝ったもので、核、小胞体、ゴルジ体などが毛糸やパスタで表現された秀逸な作品である。





2015/12/19

タンパク質模型を自分で作ろう(Tangle Proteins Building Set)(1)

今回紹介するのはこのブログの趣旨にとてもよく合うネタである。

Tangle Proteins Building Set

Tangle
Tangleはこのブログの初期にも登場しているタンパク質の「ひも」を表現するときによく使ってきたプラスチックのおもちゃである(過去エントリー→「ポリペプチドもどき)。左の写真がそのTangleをつなげた「ポリペプチドもどき」であるが、Tangleだけではブラブラしているだけで何か特定の形を作る、さらにその形に固定する、のは至難の業だった。ただ、タンパク質というのはアミノ酸が連なった「ひも」であることを示したり、ぶらぶらで変性しているのを示すのには都合がよい。

今回のセットは、このTangleをベースにしてタンパク質の立体構造を作る一種の教材である。箱を開けると、赤、青、緑、白の4種のTangleパーツ(アミノ酸に相当)と、Tangleでのタンパク質造型を支える透明の棒(水素結合)が入っている。


箱の中身
パーツ(「アミノ酸」と「水素結合」)
Tangleパーツに小さな穴が開いているのが見えるだろう。この穴に「水素結合」の棒をつなぐのだ。

解説書が同封されていて、「タンパク質とは何か」という説明から始まってαヘリックスやβシートなど2次構造についての説明が続く。さらに、実際のタンパク質立体構造に基づく立体構造の組み上げ方が書かれている。それに出ていたユビキチン(76アミノ酸)の立体構造を実際に作ってみよう。

まず、Tangleを76アミノ酸つなぐ。赤:αヘリックス、青:βシート、緑:ターン、白:コイル、となっている。

ユビキチン(76アミノ酸)の「変性」状態
 さらに、αヘリックス、βシートを形成する。

「フォールディング」中間体:2次構造の形成

「αヘリックス」
右は、αヘリックスの拡大写真。
それぞれのTangleパーツには穴が開いていて、ヘリックスを安定化するための「水素結合」の棒をつなげる。

この辺りの細かい部分は実際のタンパク質の立体構造に合うようよく考えられた作りになっている。詳細は次回に解説することにして、先に進もう。
 ユビキチンの立体構造はPDB(Protein Data Bank)の1UBQがベースだ。


実際に立体構造形成、すなわちフォールディングを開始させると、実際には「水素結合」棒をつなぐのがななかか難しい。レゴのようにカチッとはまらず、ひずみがあるとすぐに棒が抜けて飛んでいってしまう。それでも、何だかんだと進めていくと、一応それらしくできた。実際にはαヘリックスとβシートをそれなりに置いて全体をつなげただけで、細部はかなり適当である。
一応完成した「ユビキチン」もどき

PDBのサイトで作成したユビキチン(1UBQ)の構造図を右に付ける。一応雰囲気は出ているかも。



ということで、ひとまずユビキチンの「フォールディング」をやってみた。かなり不安定で、形をもう少し丸っこくしようとしたりするとすぐに壊れそうになる。タンパク質のもつ不安定さを象徴しているかもしれない。

このタンパク質造型セットは、来年度から始まる東工大の学部1年生向けの実演講義での教材を探していた途上でネットで見つけた。Tangleを買い足そうかと探していたら、タンパク質造型用のセットがあったのだ。ちょっと調べた限りでは国内で入手することができなかったので、アメリカamazonから購入。一週間ほどで到着した。

細かいこだわりについては次回に回すことにするが、なかなかに楽しい教材(おもちゃ)である。


2015/08/12

東寺の紋とシャペロニン

 京都にて東寺に立ち寄った。

 新幹線で京都駅から新大阪方面へ出発してすぐに見える五重の塔が東寺の境内にあることはよく知っていたが、行ったことはなかった(いや、もしかしたら、中学か高校の修学旅行で行ったかもしれないが・・・)。

東寺 御影堂
思っていた以上に見応えのある素晴らしい仏像たちを拝んだあとに、境内をぶらぶらと歩いていた。
 この御影堂というお堂も国宝なのか、などと思いつつ、ふと目に留まったのが提灯の紋である。

 一目見て、おや?と思い、近づいてしっかり数えてみる。

 1,2,3,・・・7。

 シャペロニンGroELだ! である。 拡大写真を載せる。

東寺にて
いったん見つけると、この紋が描かれている提灯は東寺境内あちこちにあるのがわかった。
 ネットで調べると、この紋は 外側の7つの塊の「雲」に加えて、内部の「雲」を合わせて「八雲(やくも)」というらしい。

 どうGroELに似ているのか。

 GroELは7量体のリングが二つ積み重なったダブルリング構造である。
 その一層リングの一部を上から表示したのが右の図。
 7量体というのはタンパク質の多量体構造の中でもそれほど多いものではない。



しかも、もう一つ面白く思ったのは、この紋は7つの塊が一筆書きでつながっている点だ。
 というのは、GroEL遺伝子を7つつなげ、「一筆書きGroEL」を精製して、GroELの7つのサブユニットの重要性を調べた研究が、Horwichらによって実際に行われたからだ(Farr GW et al, Cell 2000)。GroELのサブユニットのN末とC末は距離が近いので、左図のようにC末と次のN末を適当なリンカーでつないで大腸菌で発現させ、精製することができる。この「一筆書きGroEL」は東寺の紋にそっくりである。

 ちなみに、この共有結合でつながったGroELを使うと、任意のサブユニットに変異を入れことが可能となる。例えば、図の3と6のGroELサブユニットの基質タンパク質認識部位をつぶす、というようなことができるわけだ。上述のHorwichらの論文によると、GroELの7つのサブユニットは全てがアクティブでなくてもよく、3〜4個は基質タンパク質やGroESを結合しなくても、GroELのシャペロン機能はほぼ維持されるらしい。

 さらに、東寺の紋が示唆に富むのは、内部に「雲」が描かれていることである。上の図にも描きこんだように、GroELが基質タンパク質を内部に取り込んだようすとそっくりである。

 ということで、東寺の紋は本当にGroELにそっくりであり、GroELのロゴとして最適と言っていいだろう。密教の世界の深奥さを垣間見たというか、率直に本当に驚いた。

 海外でのスライドなどでも使えるかもしれない。
 何でもっと早く気付かなかったのか悔やまれる限りである。

2015/08/10

Brainstring:ひもを絡めて元に戻すパズル

 未更新のままあっという間に半年が経っていた。

近傍でネタが見つかることが多いのは、お台場の日本科学未来館のミュージアムショップだ。たまたま行く機会があったので、ショップを覗いたら、見たことのないパズルが置いてあった。

 Brainstring

 まず、形がキューブ状というだけで、買いたくなるが、それだけでなく「string(ひも)」ということで、「タンパク質はアミノ酸がつながった "ひも" である」と事あるごとに言っている身としては、ますます気になるではないか。
 サンプルなど置いてなかったが、気になるモノは逃すといつ入手できるかわからないので、とりあえず購入。

 家で開封する。キューブ状のスケルトンの容器に、ボタンとボタンでつながった「ひも」(実際はゴム)が向かい合う面同士に渡してある。この「ひも」は各面に4つあるので、全体では4×3=12本となる。ここまでが初期状態。
 下にあるのが拡大写真で「ひも」が直線上に渡されているのがわかる。


 容器にはボタンを動かすためのスリットが入っていて、ボタンをあちこち動かすといずれ中の「ひも」が絡まるという仕組みだ。
 以下、ある程度絡めた図。 いくらでも絡まらせることができるが、元に戻らないとイヤなので、最初はほどほどに。


 そして、元に戻す、というパズルである。

 タンパク質が変性した状態で「ひも」が絡まって凝集体になるという表現をよく使っているので、このパズルで「ひも」が絡んだ状態は「凝集」状態になぞらえることができるかもしれない。すると、この絡んだ状態を元に戻すのは、脱凝集ということになる。
 とは言え、実際のタンパク質凝集で本当にポリペプチドの「ひも」が絡まっているかどうかは定かではない。
 それに、 このキューブ自体が、形を持ってフォールディングしたタンパク質っぽいので、内部で絡まっているのは凝集っぽくないかもしれない・・・。

<初学者の方へ>
 シャペロンはタンパク質の凝集を防いで、フォールディングを助けるのが基本だが、いったん絡まって凝集体を元に戻すシャペロンも存在する。Hsp104(バクテリアのClpB)というシャペロンはHsp70/Hsp40(バクテリアではDnaK/DnaJ)、ATPと共同で、凝集体をほぐして機能を回復させることができる。
 これは例えて言うなら、「ゆで卵を生卵に戻す」ということであり、にわかには信じがたいかもしれないが、そういうスーパーシャペロンが存在するのである。

<サプリメントのサプリメント>
このパズルの発売元のRecent Toys(http://www.recenttoys.com)に見覚えがあるな、とサイトを見たら、既に5,6種類は持っていた。だいたいはこのブログで紹介している。ツボにはまったパズルメーカーだ。





2015/02/22

「顔 東工大の研究者たち」に掲載

 またまた久しぶりの更新となった。

今回は自ら記事を書くのではなく、大学が準備してくれた記事の紹介だ。

 東工大全学サイトの「顔 東工大の研究者たち」シリーズにて、田口ラボでのシャペロン研究や新学術領域研究「新生鎖の生物学」を紹介してくれたのでご覧ください(昨年12月末に公開)。

http://www.titech.ac.jp/research/stories/faces10_taguchi.html

 サイエンスライターの方が取材に来てまとめてくれたので、専門外の方でもわかりやすいと思います。

2014/10/13

ラボに導入された3Dプリンターでシャペロニン模型

 1年ほど前の本ブログにて、3Dプリンターで作成したシャペロニンの模型を貸してもらった旨を掲載した。→「シャペロニンの模型が手元に!
 そこで紹介したタンパク質模型は川上勝さん(現・山形大学・工・ライフ3Dプリンタ創生センター)が作り方を考案した非常に凝ったもので気軽に作れるモノではない。

 その川上さんが、最近出回ってきた廉価版の3Dプリンターでもタンパク質模型作れますよ、とおっしゃっていた。学内のある会議の雑談?で、「東工大・生命理工でも3Dプリンターを導入していろいろ活用しはじめてはいかがでしょうか?」と意見したところ、研究科で購入してくれることになった。川上さんにどの機種がよいのかなどアドバイスをいただいて、購入し、さしあたりうちのラボに置いてある。本体(UP! Plus2)は10万円台の機種だ。

 「いろいろ活用してはいかがでしょうか?」とは言ったものの、ノウハウなどない中で「何」を「どう」作るのかが問題である。そんな中、川上タンパク質モデルを実際に作っている3D印刷業者さん(スタジオミダス)がラボに来る機会がたまたまあり、その際に、導入したのと同じプリンターで作ったシャペロニン模型と、それを印刷する際の元ファイルをいただいた。このファイルでまずはシャペロニンを「印刷」してみた。

 以下がうちのラボにある3Dプリンターで「印刷」したシャペロニンGroEL(白)とGroES(黄色)である。


 大きさは直径が7~8cmくらいだろうか。以前紹介した川上モデルのGroEL/ES模型より一回り以上小さい。
 以下はGroELとGroESの複合体。右側はスタジオミダスさんよりいただいた模型である。樹脂がちがうようで同じプリンターで作ったとは言え、質感が若干ちがっている。


 当初は、PDB(Protein Data Bankもしくは日本PDB)から入手できるタンパク質の3次元座標情報をどのように3Dプリンター用のフォーマットに変換するのかわからなかった。しかし、ラボの学生がいろいろ調べて試行錯誤してくれたおかげで、今ではPDBファイルを3Dプリンター用に変換して、シャペロニン以外のタンパク質でも印刷できるようになった(注1)。

以下は「印刷」途上のようす。


 できると「おぉー」となるが、いろいろと問題点もある。

(1)まず、3Dプリンターでの模型は「印刷」後にすぐに完成しているわけではない。複雑な形状のモノを作る際には不安定な部分を支えるための余分な「バリ(サポート材)」も大量に印刷される。実際、上の写真で印刷されている外形のほとんどはサポート材だ。なので、実際には印刷完了後にけっこうな時間をかけて黙々とバリ取りをするという面倒がある。

(2)印刷自体もかなり時間がかかる。数時間から一晩かけてかたちができあがっていく。

(3)つくるタンパク質にも向き不向きがありそうだ。シャペロニンは空洞がある特徴的な形状なのでこのプリンターで作っても非常にわかりやすいが、分子量数万の球状タンパク質だと印刷してもあまり印象的ではないかもしれない。

(4)単色である。樹脂を変えると色違いのはできるが(上のGroESは黄色い樹脂を使用)、一つのタンパク質内でマルチカラーにはできない。(プラモデルの塗装が趣味ならばいい素材になるかもしれない)

 ということで、問題点や制限はあるのだが、自分のところでGroELとGroESの簡易模型ができたのは素直にうれしい。今後さまざまなタンパク質をプリントアウトして楽しむと同時に、PR活動、さらには実際の研究にも活用できないか模索していきたい(注2)。

ーーーーーー

注1:この模型の作製にはラボの星君、和泉君を筆頭とした何人かが時間をかけて試行錯誤してくれました。どうもありがとう。

注2:本プリンターは研究科の予算で購入いただいたので、東工大・生命理工の方で興味のある方はお気軽にご相談ください。



2014/10/05

シャペロニン的な樽型パズル

 海外出張に行くとネタが増える。9月に大学の用務でスウェーデンに行った際に仕入れたパズルを紹介したい。

 シャペロニン(GroEL)のかたちを表現する言い方にはいろいろある。リング、 かご、ドーナッツ、そして樽(バレル)などであろうか。

4年前にHartlとHorwichがラスカー賞を受賞した理由も

 For discoveries concerning the cell's protein-folding machinery, exemplified by cage-like structures that convert newly made proteins into their biologically active forms.
ということで、cageすなわち「かご」が使われている(注1)。

今回の出張で立ち寄ったノーベル博物館のミュージアムショップで見つけた(注2)のが樽型パズル(注3)。


 バクテリアやミトコンドリアのシャペロニン(GroELやHsp60)は、このパズルのように真ん中が膨らんでないが、古細菌や真核細胞の細胞質にあるシャペロニン(CCT)はまさしく樽型である。


ただ、内部が空洞になっていない。これだとシャペロニン的ではないなぁ・・・。



ということで、このおもちゃについて「書きます」という約束を果たした。え、まだあるじゃない、という声もあるかもしれない。少しお待ちください。

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注1:以前のブログで「この二人に加えてもう一人入ってほしかった。Lorimerだ」と書いたが、この受賞理由を深読みするとLorimerが入ってない理由が透かし見えることに気付いた。"exemplified by cage-like structures"という部分である。Lorimerの研究はGroELがフォールディングを助けることを明確に示した最初ではあるが、まだ「かご」の内部でフォールディングを助けることまで気付いていなかった。その後、Horwich(と亡くなったSiglerの共同研究)が「かご」状の立体構造を明らかにし、Horwich、Hartlらの研究でかご内部がフォールディングに使われることがわかった(いろいろ異論はあるだろうが)。ということで、「かご」状の部分に重きを置くとLorimerは入らない。

注2:この博物館には一人で観にいったが、中には今回のスウェーデン出張に同行した東工大の方数名が先におり、ぼくがブログでパズルを紹介しているのを知っていて、「こっちに田口さんが好きそうなのがいろいろありますよ」と教えてくれた。
 ついでに言えば、この博物館でノーベル賞メダルチョコを購入し、研究室メンバーにお土産として配った。

注3:樽型のタンパク質でノーベル賞が出る予兆・・・・な訳はないだろう。


2014/10/04

「新生鎖の生物学」がスタート

 ブログでは紹介していなかったが、この数ヶ月で研究環境に大きな変化が生じた。
田口が代表として申請していた科研費新学術領域研究にめでたく採択されたのだ。

「新生鎖の生物学」

(いつもは大きなフォントは使わないが、例外的に強調したいので大きくしてみた)

新学術とはなんぞや、ということで知らない方も読んでおられるかもしれない。補足しておくと、新学術領域研究とは科研費の種目の一つで新しい学術領域を推進するためにチームを組んで研究を行う。以前は特定領域というのがあり、本ブログで数年前までたびたび「タンパク質の社会」のニュースレターやらウェブやらの記事があったが、その後継が新学術領域研究だ。

今年度から30年度までの5年間の新学術領域研究の一つとして「新生鎖の生物学」を推進できることになった(注1)。

そもそも「新生鎖」って何だ、ということで、まずは申請書に記した概要を以下に示す。
 ごく最近、リボソームで合成されつつある新生ポリペプチド鎖(新生鎖)を主役として、フォールディング、シャペロンといったタンパク質研究とRNA研究の接点から、新たなバイオロジーが生まれつつある。新生鎖は何事もなく進む合成の通過点ではない、ことを示す知見が急増している。新生鎖は、リボソームに自ら働きかけることで自身の翻訳速度を制御しつつ、シャペロン群と相互作用しながら正しいフォールディングに向かう。タンパク質の品質管理は新生鎖の段階からすでに始まっている。そればかりか、異常mRNAの品質管理も新生鎖を介して行われるらしい。さらに、新生鎖自身が成熟タンパク質とは異なる新規の機能を有する例もわかってきた。そこで、以上の開拓的な研究を遂行してきた研究者を中心に“新生鎖”を主役とする新たな研究領域を設定し、技術開発も含めながら、新生鎖が関わるさまざまな生命現象の包括的な解明をめざす。
概要図があるとわかりやすいであろう。


 つまり、新生鎖とは新生ポリペプチド鎖である。リボソームの中でtRNAが結合したままなので、ポリペプチジルtRNAとも言える。

事務局は稲田利文さん(東北大学)に置き、既にウェブサイトもオープンしている(→こちら)。

http://www.pharm.tohoku.ac.jp/nascentbiology/


  図は空をリボソームを模した飛行船がぷかぷかと浮いていて、そこから「新生鎖」が伸びていき、最後は飛行機雲となる。よく見ると飛行機雲はタンパク質のかたちっぽくなっている。つまりフォールディング完了しているということだ。カラフルなアミノ酸が連なった変性状態の新生鎖のそばには白い雲らしき何かがそばにいるが、これはシャペロンのつもりである。

ということで、今後は「新生鎖の生物学」にまつわるトピックスも紹介していくことにする。

思い起こせば本ブログでも新生鎖にまつわる話題は既にときどき扱っている。
もっともそれっぽいのは以下の写真を紹介した2008年の「The Waltz of the Polypeptides」である。


アメリカのCold Spring Harbor研究所でのミーティングの際に撮った写真である。
このモニュメントでは新生鎖は既にフォールディングしているが、 実際にいつもそうなのかどうかを調べるのが本領域でのミッションの一つである。


ーーーー
注1:通常もっと長い領域名称が正式にあり、略称を付けるのが常である。が、本領域は正式名称が「新生鎖の生物学」だ。この7文字は最短記録ではないか、と調べたら(新学術一覧)、5文字と6文字のが一つずつ存在した。ついでに言えば、5文字の領域(原子層科学)は略称でさらに短く3文字(原子層)にしている。本領域も略称は「新生鎖」にすればよかったか。)



2014/10/03

科学未来館のノーベル賞予想は・・・

 もう今年も10月である。気付けば前回の更新から4ヵ月も経ってしまった。この間に「ブログ更新しますから」と約束した人は何人になるかわからない・・・。

さて、10月上旬と言えば、ノーベル賞発表のシーズンである。つい数週間前にスウェーデン出張に行ったのだが、その余韻の中、唐突に日本科学未来館の科学コミュニケーターの方からメールが届いた。

「画像提供と引用へのご承諾について」

?と思ってメールを読む。

画像はぼくが行ったシャペロニンがあると固まらないゆで卵実験の写真(右写真。元のブログ記事注1こちら)。

引用は3年前の本ブログ記事「ラスカー賞にシャペロニンGroEL研究者」であった。

 どういうことかと言うと、未来館ではこの季節に今年のノーベル賞予想をしているということで各方面に話しを聞いたところ、遠藤斗志也さん(今年度から京都産業大学)が化学賞にシャペロニンが来るのでは、とうことでHartlとHorwichの名前を挙げたらしい。

この二人は3年前にシャペロニンの作用機構でラスカー賞を共同受賞しており、その際に本ブログで紹介していた(→こちら)。
ラスカー賞はご存じのように「ノーベル賞の登竜門」であり、Hartl、Horwichはいつ受賞してもおかしくはない。(ちなみに、今年のラスカー賞受賞者は京大の森和俊さんとPeter Walter。遅まきながら、森さん、おめでとうございます。Walterについては「タンパク質の社会」ニュースレターのVol.7にインタビュー記事の掲載している。)

話しを戻すと、未来館のブログにてシャペロンの解説を行うということで、「ゆで卵」写真をシャペロンの役割を示す写真として使ってくれた。

日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ
→「研究者に聞く!ノーベル賞は誰の手に?①化学賞に分子シャペロン?

未来館のブログでシャペロンを解説してくれてうれしい限りだ。
シャペロンの作用機構の手描きイラスト、おにぎりを作るようすでタンパク質のフォールディングになぞらえたり、わかりやすく解説されているのでぜひ読んでみてほしい。
 
話しはもう少し続く。

実は、未来館ブログが予想したのはHartl、Horwichに加えてもう一人。それはGeorge Lorimer。
3年前の本ブログのラスカー賞記事に「ただ、本当はもう一人入ってほしかった。George Lorimerだ。」という部分があったのをきちんと読んでくれていたのだ。

さて、どうなることやら・・・。

ーーーー
注1:そもそもこのブログを初めて書いたのが「ゆで卵実験の思い出」という投稿であった。2006年なので、かれこれ8年続けていることになる。

2014/05/17

アメリカから届いたパズル

 このブログを読んでいる方からときおりメールが届くことがある。うれしいことで大いに励みになる。

 そして、今回は何とパズルが届いた。しかも、アメリカから!

と言っても、直接郵送されてきたのではない。ポートランドでポスドクをしている石川善弘さんが、Cold Spring Harbor Laboratory(CSHL)でのシャペロンミーティングに参加したうちのラボの丹羽助教に託してくれたのだ。
感激しました!

 写真はCSHLのショップの中のようだ。ここで仕入れたネタは以前紹介したことがある(→狂牛病の実体?)。CSHLは分子生物学の聖地の一つと言ってもいいところだ。今も2重らせんのワトソンとCSHL内で会えるらしいし(実際、学生で参加した奥田さんは会ったらしい)、会場前には燦然と輝くDNAダブルヘリックスのオブジェがそびえている。タンパク質科学者としては、リボソームから新生ポリペプチド鎖(新生鎖)が合成される途上およびフォールディングしたあと、の作品がうれしい(→The Waltz of the Polypeptides)。奥まったところにあるのがちょっと不満だが・・・。

 本来はぼく自身、今回のCSHLミーティングに行くつもりで申し込みまでしたのだが、国内でやむを得ない用事ができてキャンセルした。


パズルは竹製の立体パズル。
壊す途中。


6つのピースに分かれる。


またコレクションが一つ増えました。
石川さん、どうもありがとうございました。 いずれ、どこかでお会いしましょう!





2014/03/09

新著紹介「学んでみると生命科学はおもしろい」

 突然だが、1月末に本を出版した。

学んでみると生命科学はおもしろい

 これまでにも専門家向けには共著や編著ということで出版してきた経験はあるが、今回は一般の方々に届けたい内容かつ単著である。ベレ出版の「学んでみると○○学はおもしろい」というシリーズ本の一つとして、編集者からお声がかかり、足かけ3年がかりでこつこつと執筆し、ようやく完成。
 自著なのに発行後2ヵ月もしてからこのブログで紹介しているくらいだが、出版社では宣伝もしてくれている。例えば、大学生協の全国版カタログ(2月号)のおすすめ書籍に載っているよ、と教えてもらったときにはびっくりした(が、東工大すずかけ台生協には置いてなかった・・・。大岡山の生協には置いてあったが)。また、とある大手書店では表紙が見えるような売り方で7,8冊陳列してあった(面出し、というらしい)。

以下、宣伝用に書いた文章。
生命科学は生活に密接に関係しています。「生命とは何か」から「人工的に生命は創れるのか」といった最先端の話題までを解説します。
遺伝子、ゲノム解析、病気や薬に関する研究など、生命科学は私たちの生活に密接に関係しています。これからますます発展していく生命科学の知識を持つことは、現代人にとって必須といえるでしょう。本書は、「生命とは何か」を考えることからはじめ、「細胞」や「タンパク質」、「代謝」、「DNA」、生活に大きな影響を与える「健康と病気」、「人工的に生命は創れるのか」といった最先端のテーマまで、丁寧に解説していきます。
 ということで、本ブログで紹介してきたタンパク質関連というより、もっと広く生命科学全体を貫く入門書となっている。目次は以下の通り。
第1章 「生きる」ってどういうことだろう?
第2章 細胞の中を覗いてみよう
第3章 生命を支えるタンパク質の世界
第4章 細胞はエネルギーをどう生み出すか?
第5章 生命の設計図DNA
第6章 健康と病気の生命科学
第7章 生命は「創れる」のか?
ちょっと読んでみたい方には、ネットで一部だけ「立ち読み」ができるのでどうぞ(Amazonの「なか見!検索」→こちら)。

 文章のトーンは通常の教科書的というより、このブログのような感じだ(ただし「ですます」調)。全体としては高校の生物の教科書レベルよりやさしめだと思うが、部分的にやたらと細かいかもしれない。例えば、タンパク質のフォールディングは妙に詳しい・・・。

 本ブログを読んでいる生命科学に関わる方々にはほとんどが常識として知っている内容だと思われるが(後半やコラムは最新のトピックスもあり)、理系でないご家族などに自分たち研究者のやっていることを理解してほしい、と思っているような場合には、ぜひご推薦いただければ幸いである。

発売後に何人かの方(主に文系)から感想などいただいた。

・コラムが面白かった。
・ 第6章に出てくる手塚治虫の「火の鳥」の話しとの関連がよい。
・研究者しか知らないちょっとした小ネタが入手できた。
・後半は難しく読み進められなかった・・・。

などなど。

どうです、読んでみたくなったでしょう?(笑)
絶賛発売中です!

2014/01/20

4×4×4のキューブパズル

 最近、滞りがちのブログだが、いいネタが手に入った。例によって、出張先で見つけた一品だ。真冬のヨーロッパの街を歩いた甲斐があったというものである。


 一見、これまでに何回も紹介してきたふつうのキューブパズルに見えるかもしれない。

経路のちがうフォールディングパズル(2010.12.18)
ここで、これまで紹介した典型的なキューブパズルの写真を見てみよう。

もうわかるであろう。

今までのは一辺が3つからなる 3×3×3 なのに対して、今回のは 4×4×4 である。




今までのが 3×3×3 = 27 だったのに対して、今回のは 4×4×4 = 64「アミノ酸」ということになる。当然、キューブのかたちを崩して「変性」させたあと、元に戻す「フォールディング」は難しくなる。

以下、キューブを崩して「変性」させた状態。


途中まで戻した状態。


 と、自力で戻したわけではなく、購入時に付いてきた解法を元にしている。
 この解法が、実際のタンパク質のフォールディングにちなんでたいへん興味深い。

これまでの3×3×3パズルでは、片側から順にかたちを作っていけば完成するのだが、今回付いてきた解き方はちがう。最初は片側からかたちを作っていって塊を作ったあと、反対側からかたちをつくってもう一つ塊を作る。すると、下の写真のように二つの塊ができるので、この二つを合わせることで立方体となり完成だ。


 この写真のNとCの記号は何なのか、生化学を学んだ方ならすぐにわかるだろう。タンパク質になぞらえてみたのだ。

 タンパク質はアミノ酸がつながったヒモだが、細胞内のリボソームというタンパク質合成装置でつながっていくときには向きがある。最初のアミノ酸がN末端、最後がC末端と呼ばれる。これをこのパズルに当てはめる。最初に作っていくのがN末端側の塊(ドメインと呼ぶ)、後半の方はC末端側のドメインだ。

最後にできたキューブのどこに末端があるかというと次のようになる。


 実際のタンパク質の立体構造で、アミノ酸の数が少ないタンパク質では塊(ドメイン)が一つだが、アミノ酸が増えて長くなるにつれて、塊がいくつもに分かれてくることが知られている。塊が一つだとフォールディングも比較的簡単だが、塊が増えてくると塊ごとにフォールディングが進むと考えられているのだ。 

 このくらいのパズルでもフォールディング機構の一端を垣間見ることができるということである。

 街で一番大きいと思しきデパートのおもちゃ売り場にふつうに置いてあった。珍しかったので何個も大人買いしたかったが、一個しかなかった。