2010/12/21

ARTODAY 芸術家の卵に蛋白質研究をレクチャー

 縁あって芸術を専攻する学生に生命と蛋白質に関するレクチャーを行った(詳細はこちら)。
 
 東京芸術大学の岩間賢さんが主宰するゼミの一環ということで、岩間さんと岩間ゼミ履修生10名ほどが東工大に来てくれて、まずはこのブログで紹介しているタンパク質パズル・おもちゃで少し遊んでもらい、そのあとで蛋白質についての講義を聴いてもらった。

 蛋白質研究と現代芸術に接点はあるのか、と思うかもしれない。自分自身「?」な部分があるのが正直なところだが、蛋白質の立体構造の美しさ、かたちのないところからかたちが形成される現象(つまりフォールディング)、かたちが機能を決定するという蛋白質の基本原理についてわかってもらえるよう、このブログのネタを随所に登場させたりして工夫したつもりである。(例えば、シャペロニン・ケーキ。これは思いのほか受けた)


 講義のあとには、うちのラボのメンバーにも手伝ってもらって簡単な実験(GFPの変性・再生実験→写真動画)をしてもらったり、GFP発現酵母や大腸菌を蛍光顕微鏡でのぞいてもらったりした。芸大の学生さんにとってはとても新鮮な体験だったようだ。


 最後に懇親会を行い、そこでは芸大の学生さんが持ってきてくれた作品ファイルを見せてもらった。一言で言えば、とても素晴らしかった。絵、インスタレーションの記録、映像作品、などなど。アートに詳しいわけではないが、一人一人がそれぞれまったくちがうスタイルで何かを表現していることはよくわかる。来てくれたのは油画専攻一年生ということでタイトルに「芸術家の卵」と書いてしまったが、大学以外ですでに発表の場を作っていたりもして、もはや立派なアーチストである。そのクオリティーの高さに非常に強い感銘を受けるとともに理系の実験系の学生ではこういう表現をすることはなかなかできるものではないな、とも感じた。

 これまでたまに美術館に行くことなどはあっても、作家さんと直接交流しながら作品を見るという機会はほとんどなかったので、アーチストさんが何を考えて作品を作っているか、その一端を垣間見ることができたと思う。アートとサイエンスで通じる部分もけっこうある。うちのラボの学生たちにも強い印象を与え、刺激になったことだろう。

 いずれにしてもとても楽しい時間を過ごさせてもらった。このような会を企画してくれた岩間さんに感謝である。岩間さんご自身、現代美術家であり、この企画の前にも会ってお話ししたり、作品を見させてもらって楽しませてもらっている。興味ある方は岩間賢さんウェブサイト(http://www.oh-mame.com)をご覧ください。
 

2010/12/18

経路のちがうフォールディングパズル

 このブログ(補足情報)にはいろいろな立体パズルを登場させているが、記念すべき第一弾はタンパク質のフォールディング、特に格子モデルを模した木製キューブパズルである。その後の情報によると立方体(天然構造)をバラした「変性」状態はくねくねしてヘビっぽいのでスネークパズルとも呼ぶらしい。

 このパズルはその後もさまざまなところで活躍中であり、本当に重宝している。不満としてはもう「飽きた」こと。パズルとして解がわかっているので、今や目をつぶってもできるくらいである。それはそれで講義などで使う分には、ささっと折りたためてかっこいいのであるが、自分としてはちょっと物足りない。100円ショップのチェーンで入手した別のも同じフォールディング経路であった・・・。

 ところが、ここにきて別の「経路」のパズルがあることが判明した。しかも、7種類もあるという! 100円ショップで同様の物が売っているのを知っているとおののく価格だが、シャペロン屋の「商売道具」ということで売り切れを除いて入手可能な6種を大人買いした。


 チェコ製というこのパズル、なかなかいい質感と動きで大枚はたいた甲斐があったというものである。色によって難易度もちがうということだが、最難関のがあっさりフォールディングしたりしたのでよくわからない。



 どれも27個の小さなキューブ型木片が硬いゴムでつながっているという点では同じだが、色によってつながり方が微妙にちがっている。端から見て、ある色は2−2−3−・・・、また別の色は3−3−3−・・・、というようにちがっていて、その「トポロジー」のちがいによってフォールディング経路が異なるわけである。




 何本もの「変性状態」を絡み合わせば、「凝集体」も簡単に作れる優れもの。




 と、これを読んで欲しくなった人、いるでしょう? 「コブラ チェコ」ですぐにわかります。ぜひ楽しんでください。