これまでに何冊か一般の方に向けた書籍を何冊か執筆した。
今年になって小学館より子供向けの書籍2冊を監修したので紹介する。
1)ドラえもん科学ワールドspecial 遺伝子のふしぎ 藤子・F・ 不二雄 (イラスト) 2025/7/3 小学館 (→小学館サイト、Amazon)
蛋白質科学者がつづる、シャペロン、フォールディング、「新生鎖の生物学」、「多面的蛋白質世界」など・・・にまつわる補足情報。
NHKスペシャル「人体III」の最終回(6/15放映)で私のライフワークのシャペロニンを取り上げていただいた。
「人体III」シリーズ4回の全体を貫くテーマは「細胞」、特に細胞内ではたらくタンパク質(細胞内キャラクター)に焦点を当てている。最終回の序盤で、細胞内キャラを育てるキャラクターということでシャペロンが登場する。観ておられない方のために概要をお伝えしよう。
1.オルセー美術館に収蔵されているルノアールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」が映される。
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Pierre-Auguste Renoir, "Le Moulin de la Galette" from Wikimedia Commons |
2.この絵画を使ってJudith Frydman博士(スタンフォード大)がシャペロンの概念を解説する。Frydman博士は真核生物シャペロニンの圧倒的なリーダーである
3.細胞内で赤ちゃんタンパク質(新生鎖)がリボソームから産まれてくるようすが「人体」シリーズお得意のCGで解説される。ぶらぶらしたヒモ状態の新生鎖が働けるかたちに折りたたんでいくようすが紹介される(注1)。
4.新生鎖は絡まって凝集体になりうるリスクがあるので、それを防ぐためにシャペロニンが空洞内に新生鎖を閉じ込めて成長させる。
5.最後に私が10秒ほど登場して、「シャペロンはバクテリアからヒトまでどんな細胞にもどっさりと含まれていて、いろんな細胞内キャラが自らの能力を発揮できるようにするためになくてはならないキャラクターだ」と言って締める。「シャペロンは細胞内にどっさり含まれている」というところで、ヒト細胞でシャペロン(Hsp70-GFP)が発現しているようすの蛍光顕微鏡動画が映る。
という流れである。
番組のエンドロールの協力者は該当部分で一人だけということで私の名前しか出なかったが、本来NHKの方にお願いしていたのは以下の方々である。この場を借りて御礼申し上げます。
伊藤隼人さん:現在私のラボの博士課程学生で疾患関連塩基リピートによる非AUG(RAN)翻訳を研究している。最近ライブイメージングも行っているので、番組ディレクターから要請のあったシャペロンが細胞内にどっさりあるようすをHsp70ーGFPを内在プロモーターで発現させて動画を作ってもらった。実際には、細胞に熱ストレスをかけてシャペロンが大量に発現するところなども見せたいということだったが見送りになった。
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ヒトの培養細胞(U2OS細胞)でのHsp70-sfGFP発現のようす |
川上勝さん:私のインタビュー画面で私が持っているシャペロニン模型は川上勝さん(現在神戸大)が考案した作成法で作られた特別な模型である(Kawakami-model)。川上さんは私がGroEL研究者ということでずっと貸し出してくれており、本ブログでもたびたび紹介している(→「シャペロニンの模型が手元に!」2013.7.27)。このような印象的なタンパク質模型に興味ある方はスタジオミダスさんのウェブサイトをご覧下さい。
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Kawakami ModelによるGroELーGroES複合体模型 |
上村英里さん:この番組の当初の構想では、私があちこちで好んで使っている「シャペロンがあるとゆで卵にならない」実験を実際にやってみましょう、という話しが進んでいた。久々の実験だったので古い好熱菌のシャペロニンをフリーザーから発掘して私自身で予備実験するとともに、それだけでは足りなかったので、技術補佐員の上村英里さんにシャペロニンの精製などを行ってもらった。結局見送りになった・・・。
突然ですが、YouTube始めました。
題して「パズルでひもとくタンパク質」(Unfolding protein science from toy box)
突然と言っても、本当は5年前に科研費学術変革A「マルチファセット・プロテインズ」が立ち上がったときのアウトリーチ活動で動画コンテンツを作ると「公約」していました。ずるずると後回しにしていましたが、YouTube番組を作ってくれる素晴らしい人が現れたのと、NHKの取材でインタビューを受けたりしたのがきっかけとなって、思い切って作ってみました。
今回の内容は導入部だけですが、大学1年生向けの講義や高校での模擬授業、サイエンスカフェなどでのネタを刻んでシリーズ化していきます。「これが私にはタンパク質に見えます!」というのが決めゼリフ?です。
どう転んでいくのかわかりませんが、新たな挑戦です。
お久しぶりです。4月下旬からNHKスペシャルで生命科学のシリーズ「人体III」を日曜夜9時に隔週で放映していますがご覧になっているでしょうか。タモリと山中伸弥さんが司会の生命科学番組です。
最終回、明日6月15日(日)21:00〜の一部で「シャペロン」を取り上げてくれます。
NHKの担当ディレクターさんが私のところに何度か取材に来てシャペロンのCGの監修をしたり、私が紹介したJudith Frydman(スタンフォード大)がシャペロン(やシャペロニン)を解説します。
ぜひご覧下さい。
今年度が科研費学術変革領域 (A)「マルチファセット・プロテインズ」の最終年度ということで当初より予定していた国際会議を先月(2024年9月)開催した。会場の収容人数が限られていたこともあり、広く周知せずに基本はクローズドな会となったが、ポスターを見てもらうとわかるように国内外からたいへん豪華なゲストに参加いただいた。
会の詳細はいずれ領域ニュースレターにレポートが載り、ウェブで公開するのでそちらを見ていただきたい。で、このブログ的な見地で一つ紹介したいことがある。
この会議で学生ポスター賞を実施したが、その副賞の一つとして前回のブログで紹介したダイヤモンドの3Dパズルを送ったのだ。以下は授賞式で受賞者3人との記念撮影の一コマである。
さて、受賞者のみなさんが送ったパズルを完成させたのか気になるところである・・・。実際、このパズルだけだと私が嬉しがっているだけかもしれないので、もう一つメインの副賞があり、そちらは現実的にみなが喜ぶものだったと思う。
この写真の背景を見て、どこで撮ったんだと思われるかもしれない。この会議の最終日のパーティーはホテルの前にある水族館(マリンワールド)を夜に貸し切ったのである。夕刻より貸切となって、会議参加者はまず水族館をぶらぶらと歩きながら内部を一通り見て、最後にマリンワールドの目玉の一つの大水槽前に到着する。そこで懇親会を行い、ひとしきり飲み食いしたあとで、学生ポスター賞授賞式となったのだ。レベルの高いサイエンスを存分に楽しんだあとに水族館でも楽しめて、参加者全員の印象に残るイベントとなったのはまちがいない。
ということで、この授賞式のあとに、知り合いの方から、今日の内容は田口ブログネタにぴったりじゃないですか、ということで取り上げた(実は、前回のはその伏線であった)。
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というようなことを書くのは、やはり楽しいものである。この1,2ヵ月に何人かから「ブログ更新されてませんね」とおっしゃっていただけて、たまにチェックしてくれている人がいるということは幸せなことである。小ネタはけっこう溜まっているのであまり考えすぎずに更新していこう。
2020年度に始まった科研費学術変革(A)「マルチファセット・プロテインズ」もあっという間に最終年度となってしまった。
本領域の基本コンセプトは、従来見えていなかった、見ようとしなかった、見ることができなかった、「タンパク質の世界」の新たな面(ファセット)を開拓する、ということで、領域のシンボルは多くの「ファセット」を有して光り輝くダイヤモンドである。
ということで、領域発足後に卒業生が私にくれるギフトは、このロゴにちなんだモノが多い。2021年3月の卒業生たちのマルチファセット的なランプ(手作り!)は以前ブログに書いた(→2021年4月「マルチファセットプロテインズ的なランプのギフト」)。
その後ももらっているけど紹介していなかった。
2023年3月卒業生
これは「ストームグラス」と呼ばれているモノでいろいろな形の商品が販売されている。容器に密閉された樟脳(しょうのう)の結晶形が天気によって複雑に変化するので天気予報に使えるということだ(それほどの精度はないようだが)。
これをひっくり返すと、
ダイヤモンド的になる!
真上から見ると・・・
8角形である。これが7角形だったら、シャペロニンGroELの7量体コレクションの一つにもエントリーできたのだが・・・。まぁ、普通この手のモノを7角形にする必要はないので仕方ない。
2024年3月卒業生
今年3月は、ダイヤモンド型の3Dジグソーパズルをもらった。
ゼロから始めて完成させようとしばらくもがいたが、できそうもないので、答えを見ながら完成させた(パズル好きだが、パズルを解くのが得意ということでは全然ない)。なお、3Dジグソーパズルは初めてだったが、なかなかうまくできていて、少しずつ形が整っていって、最後に見事に組み上がるのは快感である。
かなりキレイだ。プラスチックではあるが質感もなかなかしっかりしている。
透明なので、何かひと工夫してできないかということで、調べるとディスプレイ用のライトが市販されているようだ。それは買ってないが、手元にあるブラックライトを下に置いて光を当ててみた。
それなりにキレイに輝く。
オマケとして、このダイヤモンドパズルと、マルチファセット・プロテインズのうちわを並べてみた。このうちわは、昨年9月に定山渓で領域会議を開いた際に世話人の内藤哲さん(北大)が作成してくれた代物である。
前回のブログで、米国土産で作った「セントラルドグマ」を披露したが、その後さらに少し「拡張」していたのだった。
リボソームやシャペロン(シャペロニンGroEL/ES複合体)の3Dプリンタ模型があったのでそれを置いたのだ。
さて、私の専門分野は、タンパク質がリボソームでポリペプチド鎖として産まれてきてから立体構造形成(フォールディング)するところである。このタンパク質フォールディングに関しては、「アミノ酸配列がタンパク質の立体構造を決定する」というタンパク質科学の前提となる基本原理がある。この基本原理は「タンパク質は自発的にフォールディングする」、「タンパク質は自由エネルギー最小の構造にフォールディングする」などさまざまな言い換えがあるが、本質は同じだ。まとめて、Anfinsenのドグマと呼ばれている。
このドグマの確立に貢献した実験は1950〜60年代に行われた今考えるとシンプルな実験である。尿素で完全に変性させた酵素タンパク質(RNase)を透析したら変性前と全く同じ酵素活性になったことが証明されたのだ。この実験を主導して行ったのがChristian AnfinsenだったのでAnfinsenのドグマと呼ばれるようになった。
前置きが長くなったが、NIHの本館のようなビルの展示コーナーで予期せず、「Anfinsen」さんに遭遇した。Anfinsenは長らくNIHで研究していて、1950年代ころからタンパク質は自発的にフォールディングするということを実験で証明したのだ(その功績で1972年にノーベル化学賞を受賞)。
思わず嬉しくなって「ツーショット」を撮ったのが以下の写真だ。
昨年3月にアメリカ出張に行った際、NIHに立ち寄った。NIHはNational Institutes of Health(アメリカ国立衛生研究所)の略で、ワシントンDC中心から30分ほどのところにある米国最大の生命科学の研究機関だ。私のような生命科学に携わる人間なら、以前からよく聞く機関で、ポスドクも含めて日本人も多くいる。最近では、アメリカでの新型コロナウイルス対策のヘッドがNIH内のお偉いさんであるアンソニー・ファウチ博士だったので日本のニュースでも名前が流れていた。
NIH内部を案内してもらい、本館みたいなところにあるショップに立ち寄ったらいくつか興味深いモノがあった。一つはファウチ博士のバブルヘッド(頭がぶるんぶるんと動くコミカルな人形)。あちらでのファウチ博士の人気(?)がよくわかる(日本で言えば尾身茂さんのバブルヘッドが売り出されただろうか?)。
もう一つがRNAのぬいぐるみ(?)である。これはGIANT microbesシリーズで、今までもDNAとかプリオン(狂牛病)なんかをCold Spring Harbor(CSH)研究所のショップで購入したことはあるが、RNAは初めて見た。
RNAと言っても、要はメッセンジャーRNA(mRNA)である。一般の方には、RNAはDNAより知名度が劣っていたので以前は商品になっていなかったが、新型コロナウイルスのワクチンでmRNAが使われて、その名が浸透したので売り出したのだと思われる(もしくは前からあったとしても前面に出した)。
既にDNA「ぬいぐるみ」は購入済みだし、タンパク質のおもちゃも多数ある。
そこで、生命のセントラルドグマを作ってみた。
・・・どうでもいい脱線であった。さらにバリエーションを加えてみよう。まずは、私の専門のタンパク質のフォールディングやプリオンを参加させてみた。フォールディングしたタンパク質もいくらでもある。さらに以前購入した狂牛病、つまり異常構造のプリオンタンパク質も登場させてみた。
クリックのバブルヘッド人形なんてマニアックなのをよく買ったね、と思われるかもしれない。実は、コロナ前に行ったCSH研究所ショップで無料で配っていたのだ。大量に作ったが売れずに在庫処分となったのかもしれない・・・。ワトソンークリックと並び立てられるが、ずっと目立っているのがワトソンであることに異議を挟む生命科学者はいないだろう。ちなみに、CSH研究所はワトソンが長年務めている(今も!)ことでも知られている(少なくともコロナ禍前まではCSHLミーティング途中に開かれるピアノコンサートによく来ていた)。とは言え、ある程度分子生物学の歴史を学んだ人なら、クリックの残した功績がワトソンークリックのDNAの二重らせん構造解明に留まらないのはよく知るところだ。その先見性、考察の深さには感服するよりない。
以上、米国土産で作成したセントラルドグマであった。実は、ドグマはドグマでも私のライフワークに関係するアンフィンセンのドグマについても、昨年3月の米国出張では実りがあったのだった。次回辺りで報告したい。
気が付いたら2023年も年の瀬。このブログを1年以上更新していなかった・・・。
定期的に読んでくれている人がどのくらいいるのかわからないが、このブログをもう閉鎖したと思われているかもしれない。ただ、ときおり、会った人からこのブログの感想をもらうこともある。先日40年数年ぶりに会った中学時代の同級生が、このブログを見ていてくれているということで、感激したこともあり、ネタを披露したい。
実はネタはけっこうあるのだ。今回は、卒業生がくれたシャペロニンもどきの容器とメガネ拭きである。まずは、上方からの写真。
これを見て、何だと思うだろうか? 折り紙で7角形をいくつか重ねたような手作りのモノであり、このブログでの定番中の定番のシャペロニンGroELの7量体的なモノであることがわかる。
横から見ると、次のような容器であることがわかる。
真ん中は透明のプラスチックである。つまり、7角形の透明の「筒」がオレンジの折り紙パーツで閉じるようになっている。これだけでシャペロニンGroEL的だと嬉しくなる。
卒業生からの贈り物はこの「筒」だけでなく、驚きのグッズが付属していた。
形状記憶?のメガネ拭きである。赤い方は鶴、青い方はペンギンのカタチをしている。青い方はペンギンがまだ折りたたんでいないので開いている(変性している)。
つまり、これらの「鶴」や「ペンギン」はシャペロニンの基質タンパク質ということで、開いた状態で7量体オレンジシャペロニンの中で振るとフォールディングするというわけである。その過程を図にしてみよう。
「ペンギン」も入れて、写真を撮ったら万華鏡のように美しくなった。
(他にも本ブログのネタになるプレゼントがまだいろいろある。遠からず記事にするのでもう少し待ってほしい・・・)
すっかりこのブログの更新をさぼってしまっているが、生命科学に興味のある一般の方々にもお届けできそうな書籍を編集し、7月に羊土社から出版されたので紹介したい。
転写・翻訳の驚きの新機構と再定義されるDNA・RNA・タンパク質の世界
田口英樹,小林武彦,稲田利文/編
生命のセントラルドグマというと、DNA→RNA→蛋白質、という情報の流れで、生命科学を少しでも学んだことがある人なら誰でも知っている基本中の基本の概念である。今さら、と思われるかもしれないが、セントラルドグマの周辺でびっくりするような面白いことが続々とわかってきている現状を専門家に解説してもらうという実験医学増刊号である。
羊土社さんからこの増刊号の話しをいただいたきっかけの一つは、2019年に私が編集した実験医学の特集「再定義されるタンパク質の常識」が好評だったということだ。編集者さんが言うには、ふだんの読者層よりも幅広い層に手に取っていただけたそうで、とりまとめた私としては嬉しい限りである。羊土社さんとしては、タンパク質だけでなく、DNAやRNAなどを含めたセントラルドグマで増刊号をということで話しをもらった。とは言え、私はタンパク質周辺(や、最近は翻訳周辺)の新常識なら山ほど紹介できるが、DNA、RNA、複製、転写などはからきし弱い。そこで、私が明るくない分野についてどなたか編者を加えてくれるならぜひ引き受けましょう、ということで、小林武彦さんや稲田利文さんにも編集に加わっていただいた経緯である。結果的に、お二人の先生方に加わってもらい、素晴らしいコンテンツになったと自負している。
この記事を読んで気になった方は、羊土社ウェブで概論部分を「立ち読み」できるので(Amazonの試し読みもあり)、ぜひお読みいただければ幸いである(もちろん、その上でぜひ購入を!)。
セントラルドグマの周辺が最近どうなっているの?ということを知りたい方々だけでなく、生物系の授業や講義ネタを探している高校などの先生方にもオススメです。
Visualizing 3D imagery by mouth using candy-like models
Baumer KM et al, Science Advances 28 May 2021: Vol. 7, no. 22, eabh0691
DOI: 10.1126/sciadv.abh0691 (オープンアクセス)
この論文の紹介記事 → Gummy models may be aid for students with vision loss (Nerdist)
Science podcast (July 8 2021): 3D-printed candy proteins
少しずつブログネタがあったのだが、下書きのまま公開せずそのままにしていた。
特に、お土産や記念品としてもらっていたものがたくさんあって申し訳なく思っていた。最近、ウェブサイトをリニューアルしたりして、宣伝活動モードになっているので、少しずつ紹介していきたい。
まずは、現在私のラボで今春から博士研究員になった野島達也さんからのお土産である。と言っても、野島さんが中国で職を得ていた1年半ほど前(コロナ禍になる前)、一時帰国した際にもらったものだ。
本ブログでの長年の鉄板ネタの一つ、シャペロニンGroELの7量体もどきということで、7角形の品々である。
3ついただいた中で写真の左に置いたメタルな7量体は、ハンドスピナーの一種でくるくる回る。回ってもきちっと7つが見えますね。
いつの頃からか3月に行われる送別会にて卒業生が記念品をくれるようになった。今年はコロナ禍のため送別会自体は当然中止だったが、記念品は準備してくれていてラボで渡してくれた。
カラフルなランプである。
よーく見ていると、だんだんと自分が好きなアレに見えてきた。7量体リングからなるシャペロン、シャペロニンGroELである。基本は六角形なのだが、傾けたり、いろいろしていると、角度によって7量体になるのである(ちょっと無理やりだが・・・)。学生たちもそこまでは考えていなかっただろう・・・。
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今年度から発足した科研費学術変革領域 (A)にめでたく採択された。
マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界
という領域である。
領域概要:この数年間での発見や技術革新により、従来のタンパク質像が揺らいでいる。例えば、非典型的な翻訳が普遍的に起こるため、タンパク質の種類は急激に増加している。また、細胞内でのタンパク質の機能発現様式も多様であることがわかってきた。つまり、タンパク質の世界において従来見えていなかった多くの面(マルチファセット)が見えはじめている。この拡大し変容しつつある真のタンパク質像を理解するためには、マルチファセットにタンパク質の世界を捉えなおす必要がある。そこで本領域では、突出した成果をもつ研究者を束ねて融合研究を推進することで、従来のタンパク質に関する固定観念を刷新し、未踏のタンパク質世界を開拓することを目的とする。あらゆる生命現象に関わるタンパク質の描像を変革し、生命科学のパラダイムシフトに貢献する。
領域のウェブサイトを仮オープン(→http://proteins.jp)したので、もう少し詳しく知りたい方はそちらを見てほしい。
なお、領域発足に当たってキックオフミーティングをZoomウェビナーで1月26日(火)に開催する運びである。以下がその案内。
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文部科学省科学研究費補助金・学術変革領域研究 (A)
「マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界」キックオフミーティングのお知らせ
この数年間での発見や技術革新により、タンパク質の世界において従来見えていなかった多くの面(マルチファセット)が見えはじめています。本領域では、この拡大し変容しつつある真のタンパク質像を理解するためにマルチファセットにタンパク質の世界を捉えなおすことで、従来のタンパク質に関する固定観念を刷新し、未踏のタンパク質世界を開拓することを目的としています。
本領域の発足にあたり、以下のようにキックオフミーティングをオンラインで開催し、領域概要、公募研究について説明しますので興味ある方はふるってご参加ください。
領域代表 田口 英樹(東京工業大学)
日時:2021年1月26日(火)13:30-15:55
Zoomウェビナーによる開催(事前登録制、参加費無料)
登録用URL https://zoom.us/webinar/register/WN_WU321LHSSKaIR3qrZBVjxQ
・第1部(領域概要・公募説明)は録画した内容を後日HPにて公開予定です。
・質疑応答はZoomのチャット機能にて行います。
【第1部:領域概要・公募説明】
13:30-13:50 領域概要説明(領域代表:田口 英樹)(録画)
13:50-14:00 公募研究について(領域代表:田口 英樹)(録画)
14:00-14:10 質疑応答
休憩
【第2部:計画研究概要説明】
14:20-14:30 田口 英樹(東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター)
「非典型的な翻訳動態の多様性・普遍性と分子機構」
14:30-14:40 千葉 志信(京都産業大学・生命科学部)
「機能性翻訳途上鎖の生理機能と分子機構」
14:40-14:50 永井 義隆(近畿大学・医学部)
「新規AUG非依存性RAN翻訳の分子機構とその神経変性病態における役割」
14:50-15:00 松本 有樹修(九州大学・医学部)
「ノンコーディングRNAから産生されるタンパク質の生理機能」
休憩
15:10〜15:20 遠藤 斗志也(京都産業大学 生命科学部)
「細胞内タンパク質の多重局在とその制御機構の解明」
15:20〜15:30 松本 雅記(新潟大学 医歯学系)
「未開拓プロテオームの同定・定量技術の開発」
15:30〜15:40 渡邉 力也(理化学研究所)
「未開拓タンパク質の1分子計測技術・デバイス開発」
15:40〜15:50 太田 元規(名古屋大学 情報学研究科)
「未開拓タンパク質データの収集・特徴抽出・予測」
15:50〜15:55 閉会あいさつ(領域代表:田口 英樹)
閉会後にも質疑応答時間を設ける予定です。
問い合わせ先:
領域関連:田口英樹 taguchi@bio.titech.ac.jp
本ミーティング関連: multifacetedproteins@gmail.com
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文部科学省科学研究費補助金・学術変革領域研究 (A)
「マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界」(略称:多面的蛋白質世界)
(2020-2024年度:領域代表 田口英樹 東京工業大学・科学技術創成研究院)
領域ウェブサイト http://proteins.jp
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2016年9月に共著で出版した書籍が文庫化されて今月初めに販売を開始している。
今回はごく最近出版された論文紹介をしたい。内容は、本ブログで何度も登場しているキューブパズルに着想を得た本格的な蛋白質フォールディングの論考で、著者は郷信広 京大名誉教授の単著である。
Snake cube puzzle and protein folding
Nobuhiro Go
Biophysics and Physicobiology, Vol. 16, pp. 256–263 (2019)
doi: 10.2142/biophysico.16.0_256 (無料でpdfダウンロード)
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スネークキューブパズル |
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Wikipedia(folding funnel)より |
突然ですが、YouTube始めました。 題して「パズルでひもとくタンパク質」(Unfolding protein science from toy box) 突然と言っても、本当は5年前に科研費学術変革A「マルチファセット・プロテインズ」が立ち上がったときのアウトリーチ活動で動画...