このブログの自己紹介欄で、
「タンパク質が細胞内で活躍しているようすを個別にのぞくことで細胞内タンパク質ワールドを理解していきたい」
と書いているが、実際の細胞内でのタンパク質の世界はどのようなイメージなのであろうか。もちろんミクロやナノの世界なのでそのまま見ることはできない。しかし、今までの生化学的な知見(タンパク質濃度など)やタンパク質などの立体構造情報などを元に再現することは可能である。これに関してよく知られているのがDavid Goodsell博士(Scripps研究所、米国サンジエゴ)のイラストであろう。自分の研究発表のイントロでもよく使わせてもらっている。
例えば、大腸菌の中はこんな感じ(ネットに載せるにあたりGoodsell博士から許可取得済み)。タンパク質を含む生体高分子がひしめいているようすが実感としてわかるであろう。
© David S. Goodsell 1999. |
個々のパーツは正確な構造情報を元に描かれている。紫色はリボソーム複合体。サイズはだいたい20nm程度だ。リボソームにくっついている細くて白いヒモは メッセンジャーRNA(mRNA)。青は他のタンパク質たちだが、右の方には、シャペロニンGroELとGroESも登場していてちょうど新生タンパク質を閉じ込めようとしている 瞬間を捉えている。黄色とオレンジは核様体部分(細いヒモはDNA)、というように観てきたかのようにリアルに描かれている。
他にも、Goodsellは思わず引き込まれるイラストを多数描いており、以下のサイトにて鑑賞可能である。
Molecular Art | Molecular Science Home of David S. Goodsell
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さて、Goodsell氏のイラストは静止画であるが、実際の細胞内の分子は動的であり、タンパク質をはじめとする生体高分子が「うごめいて」いる。この細胞内動態の研究はまだまだこれからであり、自分たちでも追究しているが、計算によるシミュレーションで細胞内を再現しようという試みがある。昨年の海外出張で知り合ったElcock博士がYoutubeに投稿している動画を貼り付けよう(実際の原論文はPLoS Comput Biol. 2010)。
Youtube "Cytoplasm Full Energy Model" by Adrian Elcock et al.
この動画はかなり印象深いものである。実際、自分のプレゼンテーション時にこの動画を見せたあとにはほぼ必ず「あの動画はどこでもってこれるのか」と聞かれるほどだ。
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