ふと気になって「タンパク質 パズル」という検索をした。本サイトの記事は11位にランクインされたが、上位の10位まではすべてが「Foldit」というタンパク質フォールディングのゲームにリンクされていることが判明した。たとえば、こんな感じ。
タンパク質パズルで医療に貢献、米大学がゲーム開発
ワシントン大学は、時間のかかるコンピュータシミュレーションに人間の直感力を取り入れようとしている。
(ITmedia news 2008年05月09日)
本ソフトはブラウザー上で行うのではなくアプリケーションをダウンロードして実行する(Windows XP/Vista, Intel Mac, Linuxに対応)。オフラインでも遊べるが、基本はオンラインでデータを開発元のサーバとやりとりするようになっている。
Foldit http://fold.it/
まずはイントロ的なパズルで練習を積んだ後に本格的なタンパク質のフォールディングを行うということになっている。実によくできていて、マウスでポリペプチドの側鎖や主鎖をつかんで動かしたりして遊びながら、フォールディングの基礎を学ぶことができる。例えば、側鎖同士が近すぎると立体的な反発が生ずるのでマイナス点、うまく離すと「Congratulations!」・・・。他にも、疎水側鎖を内側に隠すコアとか、主鎖を折り曲げてタンパク質内の隙間をなるべく小さくするとかイントロパズルで練習できる。
開発者の中には、人工タンパク質のデザイン、フォールディング予測など計算によるタンパク質研究で飛ぶ鳥を落とす勢いのDavid Bakerが加わっている。サイトの解説によると右の図のようにBaker博士が専門家として「助言」もしてくれるようだ。
さて、まだイントロ的なところを遊んでいるだけだが、サイエンスパズルと称する本丸はかなり本格的である。というより、今まさにBakerラボで予測している構造未知タンパク質がパズルとして出されているのである。そして、そこにこのゲームの目的がある。サイトの科学的背景のページから引用すると、
Foldit attempts to predict the structure of a protein by taking advantage of humans' puzzle-solving intuitions・・・.
ということで、人間のもつ「パズルを解く直感」をタンパク質の立体構造予測に使おうというもくろみだ。実際、BakerラボではRosettaというタンパク質構造予測アルゴリズムを使って構造予測をしているが、このFolditの位置づけはインタラクティブなRosettaというものらしい(このRosettaを個人のPCでも少しでも計算しようというのがRosetta@homeである。日本語解説有り)。
とは言え、本番の問題はおそろしく難しそうだ。側鎖を良さそうな方に動かしたら別の相互作用に取って不都合が生じるという「あちらを立てればこちらが立たず」状態にすぐ陥る。すべての相互作用を矛盾なく(郷信広博士が最初に提唱した「consistency principle」)安定に仕上げるのは至難の業であるのがすぐにわかる。
Rosettaで人の直感をどう使うのかはよくわからないが、このゲームが公開されてから1年くらいの間にコンピュータよりすぐれた結果を出した「直感」をもつ人が現れたのか気になる。
ふだんタンパク質の立体構造は完成型を眺めるだけだが、このソフトでは自分でいじれるのが楽しい。
オンラインで個人のPCのCPUを集めてフォールディングシミュレーションするものとしてはRosetta@homeよりもFolding@homeが知られているかもしれない。興味ある方はこちらもどうぞ。
2010/01/03
Foldit: タンパク質フォールディングを実感できるゲーム
登録:
コメントの投稿 (Atom)
1 コメント:
http://blog.esuteru.com/archives/4917006.html
どうやらコンピュータよりも良い結果が出たようですよ
コメントを投稿