ブログでは紹介していなかったが、この数ヶ月で研究環境に大きな変化が生じた。
田口が代表として申請していた科研費新学術領域研究にめでたく採択されたのだ。
「新生鎖の生物学」
(いつもは大きなフォントは使わないが、例外的に強調したいので大きくしてみた)
今年度から30年度までの5年間の新学術領域研究の一つとして「新生鎖の生物学」を推進できることになった(注1)。
ごく最近、リボソームで合成されつつある新生ポリペプチド鎖(新生鎖)を主役として、フォールディング、シャペロンといったタンパク質研究とRNA研究の接点から、新たなバイオロジーが生まれつつある。新生鎖は何事もなく進む合成の通過点ではない、ことを示す知見が急増している。新生鎖は、リボソームに自ら働きかけることで自身の翻訳速度を制御しつつ、シャペロン群と相互作用しながら正しいフォールディングに向かう。タンパク質の品質管理は新生鎖の段階からすでに始まっている。そればかりか、異常mRNAの品質管理も新生鎖を介して行われるらしい。さらに、新生鎖自身が成熟タンパク質とは異なる新規の機能を有する例もわかってきた。そこで、以上の開拓的な研究を遂行してきた研究者を中心に“新生鎖”を主役とする新たな研究領域を設定し、技術開発も含めながら、新生鎖が関わるさまざまな生命現象の包括的な解明をめざす。概要図があるとわかりやすいであろう。
つまり、新生鎖とは新生ポリペプチド鎖である。リボソームの中でtRNAが結合したままなので、ポリペプチジルtRNAとも言える。
事務局は稲田利文さん(東北大学)に置き、既にウェブサイトもオープンしている(→こちら)。
図は空をリボソームを模した飛行船がぷかぷかと浮いていて、そこから「新生鎖」が伸びていき、最後は飛行機雲となる。よく見ると飛行機雲はタンパク質のかたちっぽくなっている。つまりフォールディング完了しているということだ。カラフルなアミノ酸が連なった変性状態の新生鎖のそばには白い雲らしき何かがそばにいるが、これはシャペロンのつもりである。
ということで、今後は「新生鎖の生物学」にまつわるトピックスも紹介していくことにする。
思い起こせば本ブログでも新生鎖にまつわる話題は既にときどき扱っている。
もっともそれっぽいのは以下の写真を紹介した2008年の「The Waltz of the Polypeptides」である。
アメリカのCold Spring Harbor研究所でのミーティングの際に撮った写真である。
このモニュメントでは新生鎖は既にフォールディングしているが、 実際にいつもそうなのかどうかを調べるのが本領域でのミッションの一つである。
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注1:通常もっと長い領域名称が正式にあり、略称を付けるのが常である。が、本領域は正式名称が「新生鎖の生物学」だ。この7文字は最短記録ではないか、と調べたら(新学術一覧)、5文字と6文字のが一つずつ存在した。ついでに言えば、5文字の領域(原子層科学)は略称でさらに短く3文字(原子層)にしている。本領域も略称は「新生鎖」にすればよかったか。)
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