2011/04/23

サイエンスカフェ

 すっかりこのブログをごぶさたしてしまった。もしときどき覗きに来てくれている人がいたならすみません。元々、日記的なブログではなく、ネタがあるときだけ、というスタンスではあるが、ちょっと間が空きすぎたかもしれない。実はネタもあって下書きまでできているストックはそこそこあるのだが、3月11日の地震の後はいろいろなことを考えさせられ、公開する気になれなかったということもある。

 3.11については表層的なことだけ書くと、東北地方への出張が取りやめになったり、ラボがしばらくは実験停止になったり・・・。震災の影響は過去形ではなくこれからがもっとたいへんなことになるのは確実だろうが、4月になってある程度は元の生活に戻りつつある。元気な新人も研究室にたくさん入ってきた。新学期のことについては別のエントリーにしよう。

さて、4月始めにサイエンスカフェで講師をする機会があった。

題して「タンパク質カフェ」。そのままのタイトルである。


 そもそもの事の始まりは、昨秋の東工大での「ものつくりバイオコンテスト(高校生バイオコン2010)」で審査員をした際、外部審査員として来てくださったサイエンスコミュニケータの蓑田さんに自分の研究の話しをしたのがきっかけである。話しの中で「タンパク質のフォールディングにまつわるパズルなんかを集めるのが趣味なんですよ」などと話したのが面白いと思ってくれたらしく、サイエンスカフェに誘ってくれた。

 事前に主催の蓑田さんらが東工大に来て打ち合わせをしたのだが、その際に写真も撮り、ポスターも作ってくれた。ここで示すように本ブログで紹介してきたパズルやおもちゃを散りばめたポスターである。

 参加者は理系に全く縁のない方も来るということで専門用語はできるだけ使わず平易に説明してください、とのこと。さらには、プロジェクタを使った講演会形式ではなく、紙芝居形式で大事なポイントを記した紙を10枚程度準備して10分くらい説明したら後は対話しながら進めてください、ということでいつもの学会発表などとはだいぶ勝手がちがうので始まるまではどうなるか少し心配であった(昨年末の芸大生相手のレクチャーは自分のペースで勝手にしゃべった)。
 
当日は、千駄木のこぢんまりとしたカフェで10数人を相手に話しをした。年齢や性別もいろいろで一番若い参加者は高校1年生!。男女比は女性が少し多いくらいだった。講師のぼくも含めてみながケーキを食べながらというのがまさにサイエンス「カフェ」。

 テーブルにパズルやおもちゃを適当に並べていじってもらったりしながら会はスタート。紙芝居の要領で図を見せたり、ポリペプチドもどきのおもちゃをいじったりしながら、タンパク質とは何かから話しを始める。会のようすも写真、あと、Twitter?(Togetter WEcafe Vol13)でまとめてくれている。

 基本的には芸大生向けの講義のときのような感じでできるだけかみ砕いて話していったつもりであるが、ところどころで進行役(ファシリテータと呼ぶらしい)のサイエンスコミュニケータの蓑田さんが、よりわかりやすくするための突っ込みを入れてくれる。また、会場からけっこう気軽に質問が出たりする。双方向性が高いのは、確かにふだんの講演や講義とはまったくちがう。何でもいいから質問してくれるのはうれしいものである。

 タンパク質についての説明のあとは、フォールディングの基礎原理(Anfinsenのドグマ)、シャペロン、プリオン、と結局は自分の専門になった。主催の蓑田さんからは、「個別の知識を知ってもらうのだけではなく、その背景にある科学的な思考を体得してもらえたら最高です」という課題をいただいていたが、さてどうだったか。途中からはぼくの説明が多すぎたかもしれない。とは言え、プリオンはやはり興味があるらしく、病気に関係するいろんな質問が出てすべては答えられなかった。

 時間にして2時間くらいがあっという間に終わった。結果として非常におもしろい体験だった。どんな質問が飛び出るかわからないという点で、ふだんの発表とはちがった緊張感もある。また、自分たちの研究を専門家以外にどう伝えるかというまたとないチャンスでもあった。
いずれまた機会があればぜひ参加して、一人でも多くの方々に自分たちの行っている研究の楽しさ、研究者の醍醐味を伝えてみたい。