2011/10/09

膨潤して空洞が大きくなるおもちゃ


 研究室で旅行に行った折りにぶらりと入ったおみやげ屋さんにて、一つネタがころがっていた。





 前に紹介したスイッチピッチに似ているかな。

 特に模様が反転したりするというわけではなく大きく膨らんだり、小さく折りたたまれたりする、というおもちゃである。

2011/10/06

Foldit 再び

先日の投稿にて本ブログのページビューがある週に見たこともない数字になったと書いた。年間ページビューの半分くらいが一週間に集中したのだから驚いた。
理由が気になったので、どこから飛んできて、どのエントリーを訪問したかをチェックしたところ、2ちゃんねるからFolditの解説ページ(2010/01/032010/08/052010/10/11)を訪問するケースが圧倒的に多いことがすぐに判明した。


もう少し調べると、最近Nature Struct. Mol. Biol.(NSMB)誌に出たFolditに関する論文(NSMB,18, 1175-1177, 2011 フリーアクセス)が2ちゃんねるにて取り上げられ、その中でこのブログにリンクが貼られていたのである。

【分子生物】ゲーマーの恐るべき創意工夫能力…ゲーム愛好者らが酵素の構造を解析/米ワシントン大

ということで、Folditの続報がNSMB誌に出ていることは知っていたし、とある科学雑誌から取材もあったのだが、2ちゃんねるでまで取り上げられているとはまったく知らなかった。

そのNSMB誌の論文タイトルは

Crystal structure of a monomeric retroviral protease solved by protein folding game players

訳すと「タンパク質フォールディングゲームのプレイヤーによって解明された単量体レトロウイルスプロテアーゼの結晶構造」。ごく簡単に言えば、オンラインフォールディングゲームFolditで結晶構造を決める最終段階をパズルとして出題したところ、これまでコンピューターでうまく解けなかった構造が決まった、というようなものである。David Bakerグループの論文であるが、著者の途中には Foldit Contenders Group, Foldit Void Crushers Group とあり、この2者はFolditでプレイするゲーマー集団ということだ。

内容としては、X線結晶構造解析の際に用いられる分子置換法がうまく行かなかったケースにFolditで粗いモデルを出題したところ、X線回折データによく合う立体構造をゲーマーたちが3週間で決定した、というものだ。

インパクトとしては前のNature論文の方が高いと思う。が、今回は難問だったタンパク質の立体構造を最終的に決定するお手伝いを「リアルに」行ったということでNSMB誌に掲載となったのであろう。考察では、創薬などにも活かせるのではないかということで締めくくっている。

注意しないといけないのは、ゲーマーたちはまったくかたちの無い状態から折りたたんでいった訳ではないことだ。実際の出題はBakerグループが開発したRosettaというアルゴリズムを使っておおよその立体構造まで出してあり、Folditプレイヤーたちはそれを「精密化」していったというのが正しい。ただ、計算機が苦手とするところを人間の「直感」が越える部分があったのは確かなようだ。

最初の話しに戻れば、2ちゃんねるで盛り上がったのはゲーマーの面目躍如ということであろう。Folditは英語版しかなく、日本から参加しているプレイヤーはかなり少ないようだが、今後ぜひ日本からも貢献してほしいものである・・・。

と書いたところで、以前のFolditのNature論文のあとに「実験医学」誌に書いたコラムの最後を思いだした。

「・・・・今の世の中、チェスや将棋などで人類はコンピューターに負ける話しばかりである。タンパク質フォールディングで人類はコンピューターに一矢報いた、ということで少し愉快になった。が、まだまだ参加者は少ないので人類の英知の本領発揮はこれからではないか。もっとゲーマーが増えれば天才的フォールディングプレイヤーが出現し、構造予測ラボにこっそり雇用される、なんて出てこないだろうか。実験医学 28, 3117-3118 (2010)」

ということで、デイトレーダーならぬデイフォールダーみたいな職業ができるかもしれない。

と書いたところで、さらに連想が広がった。
Natureに以前載っていたアマチュアバイオ実験家の記事だ。

Garage biotech: Life hackers Nature 467, 650-652 (2010)

おもしろい記事だったので、いずれ解説することにしよう。

2011/10/04

次号のニュースレターは延期

 科研費特定領域研究「タンパク質の社会」の領域ニュースレターをこれまで半年に一度ずつ編集長として発行してきた。

 今までのペースだと年度半ばの10月始めに発行してきたのだが、本領域最終年度の今年度は諸般の事情により、年一号だけの発行と決まった。ということで、次の号は来年2月末日発行予定である。

 ニュースレターを楽しみにしてくれている読者のみなさま、さらには今秋発行と言うことで既に原稿を書いてもらったみなさん、たいへん申し訳ございません。

 次号は最終号として、これまで以上に充実した内容のニュースレターになることをお約束できると思いますので、こうご期待!

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 写真は今日の「7量体」

 今年オーストリアに行った際のフライト中に出てきたスナック菓子の一つ。「おっとっと」みたいな感じ。

2011/10/03

ラスカー賞にシャペロニンGroEL研究者

 20年以上、シャペロニンGroELの研究をしている。

 最初に始めたころはシャペロンの概念がまだ確立したころであり、分野はまだまだ黎明期。「シャペロン」というより、熱ショックタンパク質Hspと呼ぶことが多かったと記憶するが、シャペロンの研究なぞまだ海の物とも山の物ともつかなかった時代である。

 そんなシャペロン研究もノーベル賞候補者が出てくるようになってきた。一つには、数年前にインパクトファクターなどで知られるトムソン・ロイター社がシャペロンの概念の提案で知られるJohn EllisとシャペロニンGroEL研究で功績の大きいUlrich Hartl、Arthur Horwichの三人をノーベル賞候補として発表したのだ(→2007年の予想)。

 そして、今年。ラスカー基礎医学研究賞にHartlとHorwichが選ばれた。Lasker Foundationのトップページにはおなじみの写真が並んでいる。

ラスカー賞は「アメリカのノーベル賞」とも呼ばれ、実際、これまでに80人ものラスカー賞受賞者がノーベル賞を取っているそうだ。

 それはさておき、お二人の受賞理由は、
For discoveries concerning the cell's protein-folding machinery, exemplified by cage-like structures that convert newly made proteins into their biologically active forms.
ということである。

意訳すると、

細胞内でのタンパク質のフォールディングを助ける分子マシン、特に、新生タンパク質を活性のある構造に変換する「かご」状構造、の発見

というようなものである。「シャペロン」や「シャペロニン」という単語は出てこないが、この「かご」状構造がシャペロニンGroELのことである。ラスカー賞の受賞理由の記述にはGroELの構造や反応サイクルがきちんと載っている。

二人の功績は確かに大きい。あまりに詳しく知っているので(当たり前だが)、ここで書き出すといくら書いてもキリがない。

Cell誌にRothmanとSchekmanの二人の大物がこのラスカー賞について解説を書いている。
Molecular Mechanism of Protein Folding in the Cell

ぼく自身もGroELの研究に長く携わってきて、彼らの研究に感嘆することもあれば、ちがうんじゃないの、ということもある。実際ずいぶんと議論してきた。感慨もひとしおである。

個人的にもお二人にはとてもよくしてもらっていて、それぞれご自宅にまで招待されてたいへんな歓待も受けてきた。

Congratulations!


ただ、本当はもう一人入ってほしかった。George Lorimerだ。

特に、GroELがフォールディングを助ける分子マシンとしてはたらくことを最初に見出したのはLorimerである(Goloubinoff et all., Nature, 1989)。

個人的にはLorimerにもお世話になっており、ぼくにとっての「シャペロン」の一人だ。修士の頃にアメリカのLorimerラボに行かせてもらって、好熱菌GroELの実験を少し行ったのが、そのあともGroEL研究を続けるきっかけとなったのだ(そのときの実験自体は失敗に終わったが、その失敗理由を考えたことがぼくの初の論文、JBC1991、につながった)。
そのLorimerがなぜ選に漏れたのかもよくわかるだけにさみしいものがある。


さて、別の小ネタを。

90年代前半にラスカー賞の二人は実りのある共同研究もしてきた仲である。

・・・が、現在の二人のGroEL研究はうまくかみ合っているわけではない。相当激烈な論争のまっただ中である。
 この微妙な関係で受賞式のときとかどうなるのかな、と少しだけ気になるところだ。

↑このあたり、科研費「タンパク質の社会」のニュースレターにいくつか記事を書いた(6号コラム4号特集)に詳細に書いたので興味のある方はぜひ読んでみてほしいところである(コラムはそのまま読めますが、4号のpdfはパスワード制限あり。ただ、パスワードはメールをいただけたらすぐに教えます)。

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写真は今日の「7量体」

近所の公園での葉っぱだが、数えてもらうとGroELのマジックナンバー7ということで写真に撮っていた。


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2011/09/25

そろそろ復活?

 すっかりご無沙汰してしまっているうちに秋になってしまった。

書きたくなるようなネタがなかったというのは言い訳で、サボっていたのが正確なところだ。実際、仕上げを待っている下書きはけっこうたまっているのだ。

そろそろ復活せねばなるまい。その理由は以下の通り。

(1)学会などで久々に再会した方や初対面の方など思いがけない方々から、このブログを楽しみにしています、ということを聞いた。

(2)何人くらいがこのブログを見ているのか解析していて、自動で週間レポートがメールで届くようになっている。最近はそのメールを開くことすらしていなかった。更新してないんだから減っていくばかりだしなぁ、ということで・・・。

今日思い付いてこの一ヶ月ほどのを開いてみたら・・・。

なんと増えているではないか! しかも、つい最近のは今まで見たこともない数字が並んでいて驚いた。

理由は定かではないが、思いのほか読んでもらっていることは確かである。

再開せねばなるまい。


 写真は本文の内容と関係ないが、春に行ったEMBOミーティング(Grundlsee、オーストリア)での一枚。ザルツカンマーグートというザルツブルクからバスで2時間はゆうにかかる山と湖が織り成す美しいところだった。サウンドオブミュージックの舞台のそばということだ。

2011/05/04

ニュースレター第7号発行

ニュースレターの第7号が発行済みだ。

今回も盛りだくさんの内容だが、中でも目玉はPeter Walter博士インタビューであろうか。「Life is not linear」というタイトルで大いに語ってもらった。

目次はこちら(→ pc7_contents.pdf

表紙は昨年末に縁のあった東京芸大の学生さんの一人に書いてもらった。

興味ある方は、ぜひpdfパスワードの請求を。
(事務局メールアドレス→protein.community@gmail.com

2011/04/23

サイエンスカフェ

 すっかりこのブログをごぶさたしてしまった。もしときどき覗きに来てくれている人がいたならすみません。元々、日記的なブログではなく、ネタがあるときだけ、というスタンスではあるが、ちょっと間が空きすぎたかもしれない。実はネタもあって下書きまでできているストックはそこそこあるのだが、3月11日の地震の後はいろいろなことを考えさせられ、公開する気になれなかったということもある。

 3.11については表層的なことだけ書くと、東北地方への出張が取りやめになったり、ラボがしばらくは実験停止になったり・・・。震災の影響は過去形ではなくこれからがもっとたいへんなことになるのは確実だろうが、4月になってある程度は元の生活に戻りつつある。元気な新人も研究室にたくさん入ってきた。新学期のことについては別のエントリーにしよう。

さて、4月始めにサイエンスカフェで講師をする機会があった。

題して「タンパク質カフェ」。そのままのタイトルである。


 そもそもの事の始まりは、昨秋の東工大での「ものつくりバイオコンテスト(高校生バイオコン2010)」で審査員をした際、外部審査員として来てくださったサイエンスコミュニケータの蓑田さんに自分の研究の話しをしたのがきっかけである。話しの中で「タンパク質のフォールディングにまつわるパズルなんかを集めるのが趣味なんですよ」などと話したのが面白いと思ってくれたらしく、サイエンスカフェに誘ってくれた。

 事前に主催の蓑田さんらが東工大に来て打ち合わせをしたのだが、その際に写真も撮り、ポスターも作ってくれた。ここで示すように本ブログで紹介してきたパズルやおもちゃを散りばめたポスターである。

 参加者は理系に全く縁のない方も来るということで専門用語はできるだけ使わず平易に説明してください、とのこと。さらには、プロジェクタを使った講演会形式ではなく、紙芝居形式で大事なポイントを記した紙を10枚程度準備して10分くらい説明したら後は対話しながら進めてください、ということでいつもの学会発表などとはだいぶ勝手がちがうので始まるまではどうなるか少し心配であった(昨年末の芸大生相手のレクチャーは自分のペースで勝手にしゃべった)。
 
当日は、千駄木のこぢんまりとしたカフェで10数人を相手に話しをした。年齢や性別もいろいろで一番若い参加者は高校1年生!。男女比は女性が少し多いくらいだった。講師のぼくも含めてみながケーキを食べながらというのがまさにサイエンス「カフェ」。

 テーブルにパズルやおもちゃを適当に並べていじってもらったりしながら会はスタート。紙芝居の要領で図を見せたり、ポリペプチドもどきのおもちゃをいじったりしながら、タンパク質とは何かから話しを始める。会のようすも写真、あと、Twitter?(Togetter WEcafe Vol13)でまとめてくれている。

 基本的には芸大生向けの講義のときのような感じでできるだけかみ砕いて話していったつもりであるが、ところどころで進行役(ファシリテータと呼ぶらしい)のサイエンスコミュニケータの蓑田さんが、よりわかりやすくするための突っ込みを入れてくれる。また、会場からけっこう気軽に質問が出たりする。双方向性が高いのは、確かにふだんの講演や講義とはまったくちがう。何でもいいから質問してくれるのはうれしいものである。

 タンパク質についての説明のあとは、フォールディングの基礎原理(Anfinsenのドグマ)、シャペロン、プリオン、と結局は自分の専門になった。主催の蓑田さんからは、「個別の知識を知ってもらうのだけではなく、その背景にある科学的な思考を体得してもらえたら最高です」という課題をいただいていたが、さてどうだったか。途中からはぼくの説明が多すぎたかもしれない。とは言え、プリオンはやはり興味があるらしく、病気に関係するいろんな質問が出てすべては答えられなかった。

 時間にして2時間くらいがあっという間に終わった。結果として非常におもしろい体験だった。どんな質問が飛び出るかわからないという点で、ふだんの発表とはちがった緊張感もある。また、自分たちの研究を専門家以外にどう伝えるかというまたとないチャンスでもあった。
いずれまた機会があればぜひ参加して、一人でも多くの方々に自分たちの行っている研究の楽しさ、研究者の醍醐味を伝えてみたい。

2011/01/10

あけましておめでとうございます。


 珍しくラボ用に年賀状を作成した。と言っても印刷用ではなく、海外の知り合いにメイルの添付で送るために作ったものだ。考えてみたら昨春に東工大に移った(戻った)ということすら連絡していなかったのである。

 東工大に来て9ヵ月が過ぎ、ラボも落ち着いてきたと思うが、これもひとえに写真に写っているメンバーたちのおかげである。何もないところから始まるということを知っていながら参加してくれたメンバーのみなさん、ほんとうにありがとう。おかげで幸先の良いスタートを切れたと思います。
今年もよろしくお願いします。

と同時にこの不定期更新ブログを見てくれている方々もありがとうございます。日記風にするつもりはないので紹介したいネタがあるときだけですが、今後もどんどん載せていくつもりです。楽しみにしていてください。

2010/12/21

ARTODAY 芸術家の卵に蛋白質研究をレクチャー

 縁あって芸術を専攻する学生に生命と蛋白質に関するレクチャーを行った(詳細はこちら)。
 
 東京芸術大学の岩間賢さんが主宰するゼミの一環ということで、岩間さんと岩間ゼミ履修生10名ほどが東工大に来てくれて、まずはこのブログで紹介しているタンパク質パズル・おもちゃで少し遊んでもらい、そのあとで蛋白質についての講義を聴いてもらった。

 蛋白質研究と現代芸術に接点はあるのか、と思うかもしれない。自分自身「?」な部分があるのが正直なところだが、蛋白質の立体構造の美しさ、かたちのないところからかたちが形成される現象(つまりフォールディング)、かたちが機能を決定するという蛋白質の基本原理についてわかってもらえるよう、このブログのネタを随所に登場させたりして工夫したつもりである。(例えば、シャペロニン・ケーキ。これは思いのほか受けた)


 講義のあとには、うちのラボのメンバーにも手伝ってもらって簡単な実験(GFPの変性・再生実験→写真動画)をしてもらったり、GFP発現酵母や大腸菌を蛍光顕微鏡でのぞいてもらったりした。芸大の学生さんにとってはとても新鮮な体験だったようだ。


 最後に懇親会を行い、そこでは芸大の学生さんが持ってきてくれた作品ファイルを見せてもらった。一言で言えば、とても素晴らしかった。絵、インスタレーションの記録、映像作品、などなど。アートに詳しいわけではないが、一人一人がそれぞれまったくちがうスタイルで何かを表現していることはよくわかる。来てくれたのは油画専攻一年生ということでタイトルに「芸術家の卵」と書いてしまったが、大学以外ですでに発表の場を作っていたりもして、もはや立派なアーチストである。そのクオリティーの高さに非常に強い感銘を受けるとともに理系の実験系の学生ではこういう表現をすることはなかなかできるものではないな、とも感じた。

 これまでたまに美術館に行くことなどはあっても、作家さんと直接交流しながら作品を見るという機会はほとんどなかったので、アーチストさんが何を考えて作品を作っているか、その一端を垣間見ることができたと思う。アートとサイエンスで通じる部分もけっこうある。うちのラボの学生たちにも強い印象を与え、刺激になったことだろう。

 いずれにしてもとても楽しい時間を過ごさせてもらった。このような会を企画してくれた岩間さんに感謝である。岩間さんご自身、現代美術家であり、この企画の前にも会ってお話ししたり、作品を見させてもらって楽しませてもらっている。興味ある方は岩間賢さんウェブサイト(http://www.oh-mame.com)をご覧ください。
 

2010/12/18

経路のちがうフォールディングパズル

 このブログ(補足情報)にはいろいろな立体パズルを登場させているが、記念すべき第一弾はタンパク質のフォールディング、特に格子モデルを模した木製キューブパズルである。その後の情報によると立方体(天然構造)をバラした「変性」状態はくねくねしてヘビっぽいのでスネークパズルとも呼ぶらしい。

 このパズルはその後もさまざまなところで活躍中であり、本当に重宝している。不満としてはもう「飽きた」こと。パズルとして解がわかっているので、今や目をつぶってもできるくらいである。それはそれで講義などで使う分には、ささっと折りたためてかっこいいのであるが、自分としてはちょっと物足りない。100円ショップのチェーンで入手した別のも同じフォールディング経路であった・・・。

 ところが、ここにきて別の「経路」のパズルがあることが判明した。しかも、7種類もあるという! 100円ショップで同様の物が売っているのを知っているとおののく価格だが、シャペロン屋の「商売道具」ということで売り切れを除いて入手可能な6種を大人買いした。


 チェコ製というこのパズル、なかなかいい質感と動きで大枚はたいた甲斐があったというものである。色によって難易度もちがうということだが、最難関のがあっさりフォールディングしたりしたのでよくわからない。



 どれも27個の小さなキューブ型木片が硬いゴムでつながっているという点では同じだが、色によってつながり方が微妙にちがっている。端から見て、ある色は2−2−3−・・・、また別の色は3−3−3−・・・、というようにちがっていて、その「トポロジー」のちがいによってフォールディング経路が異なるわけである。




 何本もの「変性状態」を絡み合わせば、「凝集体」も簡単に作れる優れもの。




 と、これを読んで欲しくなった人、いるでしょう? 「コブラ チェコ」ですぐにわかります。ぜひ楽しんでください。



2010/10/25

ニュースレター第6号発行

 予定より一ヶ月遅れでニュースレターを発行しました。あいかわらず毎号難儀していますが、できあがるとうれしいものです。


 編集長という立場上、いろいろと小ネタを書いているのでこの機会に一部だけ公開することにしました。

1)コラム・書評の公開:このブログの以下のエントリーにあるように自分で書いたコラム、書評は公開することにしました(→こちら)。

2)目次の公開:pdfパスワードをご存じない方はどんな内容かもわからないかと思い、今回から目次のページだけは公開することにしました(ニュースレターダウンロードページ)。


目次を見て興味を持った方は事務局か編集長の田口までお気軽にご連絡ください。

2010/10/21

ニュースレターのコラム一覧を作りました

 科研費特定領域研究「タンパク質の社会」ニュースレターの編集をしていて、ページの埋め草にコラム、書評、学会レポートなどけっこういろいろと書いてきた。このニュースレターは論文未発表の内容などにも多々触れているために基本的にはクローズドの冊子であるが、自分の書いたコラムは田口研HPにまとめて載せることにした。

→ コラム一覧 URL:http://www.taguchi.bio.titech.ac.jp/paper/column/column.html

このブログの記事から載せたコラムもあるが、初出の内容も半分くらいはある。

2010/10/11

「Foldit」がNature論文に!(その2)

前のエントリーを書いてからあっという間に二ヶ月も経ってしまった・・・。
もし、続きを待っておられた方がいたら申し訳ありません。

さて、続きです。

 この論文のサプリメントにはこのオンラインゲームに参加した人たちへのアンケート結果が掲載されていて興味深い。

例えば、

・ゲームを行っている人たちの学歴では大学院レベルの人は4分の1程度。

・国別では多い順に、アメリカ、イギリス(ここまでで約半数)、ドイツ、フランス、ポーランド、スウェーデン、オランダ、オーストラリア、ロシア、ポルトガル。日本はどこにも出てこない。

・ただ、トップ50プレイヤーで見るとフランス、オランダの健闘が目立つ。

・年代では、ゲーム参加者全体では3分の2が35歳以下だが、トップ50では4分の3が36歳以上! 積み上げてきた人生経験がフォールディング予測に寄与したということか・・・。

などなど、ふだん読む論文とはちがった楽しみ方がある。

 さらには、上級者へのメールインタビューまで載っていて、どのような「戦略」でフォールディングさせたかが紹介されていたりもする。中には「ゲーム中毒になって7ヵ月で2日を除いて毎日やっていた」という者や「とにかく人よりハイスコアを出したいという一心でがんばった」という者までいたりと、人間味あふれる内容となっている。

 それにしても、こういった遊び心を専門家をも唸らせる研究にまで仕立て上げる懐の深さに感嘆した。 ・・・見習いたいものである。

2010/08/05

「Foldit」がNature論文に!(その1)

 このブログを読んでおられる方々ならタンパク質のフォールディングがいかに難しいかよくご存じのことと思う。ちょっと思考実験すると、アミノ酸が連なったポリペプチドのヒモが取り得る立体構造の場合の数は膨大であることがわかる。たとえば、アミノ酸が2個並んだジペプチドが取り得る構造が3通りとしてもアミノ酸が101個並んだら3の100乗という天文学的な場合の数になるのだ。この膨大な中から1秒も経たずに一つの天然構造(自由エネルギー最小の状態)にフォールディングが起こるのは実にフシギだ、というのがフォールディング業界でよく引き合いに出されるLevinthalのパラドックスである。

 この複雑さにより、アミノ酸配列がわかってもタンパク質の立体構造をコンピューターで正確に予測するのは今でも難しい。世界中の計算科学者がタンパク質の立体構造予測コンテストを行うくらいなのである(→CASP)。

 さて、今年はじめのエントリーにて、オンラインでのタンパク質フォールディングゲーム「Foldit」を紹介したところである。Folditは、ワシントン大のBakerらが開発したRosettaというタンパク質の立体構造予測アルゴリズムをベースに一般の人たちがポリペプチドをいじって「フォールディング」をシミュレーションできるゲームである。この「人力」フォールディング後にはエネルギー計算が施され、エネルギーが安定な構造を作った人ほど高いランクになる。

 とここまではイントロで、今回驚いたのは、このFolditが何とNatureの論文になった(→こちら)。れっきとしたオリジナルペーパーである。Nature誌での扱いはかなり大きく、通常の解説欄(News and Views)ではなくNews Features欄の「Citizen Science: People Power」と題された記事で著者(Baker博士)の写真まで入ったかたちで紹介されている。

 とにかくユニークでこんな論文見たことない、というのが第一印象だ。

 まず驚かされるのが著者欄。ラスト「オーサー」が「・・・and Foldit players」となっている。そう、この論文はネットでFolditをプレイしていた人たちをも巻き込んだ論文なのである。

 なぜFoldit playersが「著者」に加わったかというと、トッププレーヤーたちが作り上げた立体構造は世界有数のコンピューター予測を超えてよい成績を収めることが多々あったというのだ。このトッププレーヤーたちはまさに「シャペロン」である。


 いろいろな点で驚かされるこの論文。時間が取れ次第もう少し解説してみたい。ということで次回に続く。

(以下は、自分のシャペロンの講演の締めくくりでたまに用いる写真。くねくねのポリペプチドもどきを「人力」でフォールディングしてヘリックスにする。)


 

2010/07/07

eSOL(蛋白質可溶率データベース)の拡張

 我々が行った大腸菌全タンパク質の凝集体形成傾向のデータ(Niwa et al. PNAS 2009, pdf)がeSOLというデータベース(DB)として公開されている。
 このたび、統合データベースプロジェクトの畠中さんのご尽力により、eSOLが蛋白質関連の統合DB(TogoProt)に登録された。



 この統合により、ある蛋白質に関するデータを多面的に調べたい方はバラバラに調べることなくまとめて情報を得ることができると期待される。

 (eSOLは大腸菌タンパク質だけなので検索時には、たとえば metk ecoliというようにecoliを付けてください)

2010/07/03

光るオワンクラゲ

 以前のエントリーで鶴岡出張の際に加茂水族館にてオワンクラゲを見てきた件について記した(「オワンクラゲ」2009/1/10)。その続きとして、先日、慶應大学先端生命科学研究所に用事があって鶴岡を訪れた際に、再度加茂水族館を訪ねたのでその顛末を紹介したい。


 前回唐突に訪れた際、精製したGFPを差し上げたところたいへんに喜ばれ、ニュースになるくらいであったが、残念ながら館長さんに会うことはできなかった。その後、加茂水族館ではオワンクラゲと一緒にGFPタンパク質そのものを展示したり、館長さんからは直筆の手紙や著作をいただくなどしていたのでぜひとももう一度伺いたいと思っていたところ、再び慶應大学(鶴岡)に行く機会に恵まれ、再訪することができた。

 今回は事前に連絡を入れておいたので、村上館長に会うこともでき、一般のお客さんには非公開の「クラゲ研究所」に案内していただいたり、直々にクラゲ生育の苦労話を教えていただいたりと楽しい時間を過ごした。最後にはクラゲの絵柄入りネクタイやタイピンまでいただき、たいへん満足して水族館を後にした。

 前回訪れた際にはオワンクラゲは「光ってなかった」が、今回はブラックライトに照らされて美しく緑に光るクラゲを見ることができたのもうれしかった(下のきれいな写真は、同行した卒研生が撮してくれた)。


 なお、前回の鶴岡訪問のきっかけとなった慶應大学との共同研究は実を結び、シャペロニンGroELの細胞内基質タンパク質をきちんと決めることができた(Fujiwara et al, EMBO J. 2010 日本語での解説は「タンパク質の社会」の成果欄を参照)。

2010/06/27

「タンパク質の社会」国際会議(奈良、2010/9/13-9/16)

 事務局を仰せつかっている科研費特定領域「タンパク質の社会」の大イベントが今年開催される。奈良にて国際会議が開催されるのである。

 詳細は会議専用のウェブサイト(→こちら)をみていただきたいが、関連分野のトップサイエンティストが勢揃いである。刺激的なミーティングになるのはまちがいなく、今から楽しみだ。







 ちなみにポスターは業者に依頼して作ったのではなく全部自作である。早い段階で「とりあえず」作った(作らされた?)のがそのままアップデートされて出回っている。

2010/06/06

ニュースレター第5号発行

3月上旬に特定領域「タンパク質の社会」のニュースレター第5を発行した。


 5年間続く「タンパク質の社会」科研費特定領域(19-23年度)も折り返し点を過ぎ、今年度は9月に奈良で盛大に国際会議を開く。ということで、この号の表紙は奈良がモチーフである。

 編集はいつもぎりぎりのスケジュールであるが、今号は自分の異動とも重なったために発行が危ぶまれるほど(ほんとに)大変だったが、何とか年度内に発行できホッとしている。関係者のご協力に感謝いたします。

2010/04/05

東工大に移りました!

4月1日より東京工業大学に移りました(生命理工学研究科生体分子機能工学専攻・教授)。

 東大・新領域に移ってから6年半で母校に戻ってラボを主宰できることになり、気持ちも新たに張り切っていきたいと思います。

 東大からは野間さん、丹羽君も付いてきてくれることになり心強い限りですし、着任早々、東工大の卒研生4人が配属になりました。他にも野島君(京産大・吉田賢右研)も田口研に参加してくれることになっています。

 3月末にラボの引っ越しをしてまだ数日で段ボールだらけの中です。そんな中、研究室発足パーティーの前にメンバーみなが集まってセットアップ途中の各部屋や桜が咲く道の前で記念撮影を行いました。

 さらには、記念に残る写真にということでホワイトボードに何か書いてくれ、と言ったら、「田口研発足」という以外にも楽しい絵をいっぱい描いてくれました。左下の「婦人」は書いてくれた卒研生のもつ「シャペロン」のイメージだそうです。酵母、プリオン、フットボールもあります。何年かして何周年かのときにはまたちがった絵が描けるよう新しいことにもチャレンジしていきたいな、と思います。

2010/01/16

「柏キャンパスライフ」と富士山

 新領域のサイトを見ていたら、柏キャンパスにいる学生による「柏キャンパスライフ」のページがあることがわかった。
 キャンパス内のことだけでなく周辺のお店のことや住環境などけっこう細かく書かれているので、東大の柏キャンパスってどんなところ?って思っている方々はぜひどうぞ。

http://noc.k.u-tokyo.ac.jp/campuslife/

 また、これを読んでいる柏キャンパスにいる学生さん、この「柏キャンパスライフ」に柏での生活に関する記事・エッセイを書いて採用されると原稿料として3000円もらえるそうです(記事・エッセイ募集)。ぜひ寄稿してみてください。

ついでにぼくからの柏キャンパス情報を一つ。

 空気がきれいな日にキャンパス内から富士山が見えるのはご存じでしょうか。写真は夕陽が沈むころに、キャンパスの東の外れ(総合研究棟の前あたり)を歩いていて出くわした富士山のシルエット。携帯電話のカメラなんでイマイチですが、実際には見惚れるくらい美しい眺めでした。キャンパス内を東西に貫くメインストリート(図書館前を通る道路)の西の延長上(ローソンの看板とかぶる位置)に富士が見えます。

 ちなみに少し高いところからだと北東の方に筑波山が見えるのはキャンパスにいる多くの人がご存じだと思います。こちらは位置的には近い印象だからそれほど意外性はないかもしれません。

2010/01/03

Foldit: タンパク質フォールディングを実感できるゲーム

  ふと気になって「タンパク質 パズル」という検索をした。本サイトの記事は11位にランクインされたが、上位の10位まではすべてが「Foldit」というタンパク質フォールディングのゲームにリンクされていることが判明した。たとえば、こんな感じ。

タンパク質パズルで医療に貢献、米大学がゲーム開発
ワシントン大学は、時間のかかるコンピュータシミュレーションに人間の直感力を取り入れようとしている。
(ITmedia news 2008年05月09日)

本ソフトはブラウザー上で行うのではなくアプリケーションをダウンロードして実行する(Windows XP/Vista, Intel Mac, Linuxに対応)。オフラインでも遊べるが、基本はオンラインでデータを開発元のサーバとやりとりするようになっている。

Foldit http://fold.it/


 まずはイントロ的なパズルで練習を積んだ後に本格的なタンパク質のフォールディングを行うということになっている。実によくできていて、マウスでポリペプチドの側鎖や主鎖をつかんで動かしたりして遊びながら、フォールディングの基礎を学ぶことができる。例えば、側鎖同士が近すぎると立体的な反発が生ずるのでマイナス点、うまく離すと「Congratulations!」・・・。他にも、疎水側鎖を内側に隠すコアとか、主鎖を折り曲げてタンパク質内の隙間をなるべく小さくするとかイントロパズルで練習できる。

  開発者の中には、人工タンパク質のデザイン、フォールディング予測など計算によるタンパク質研究で飛ぶ鳥を落とす勢いのDavid Bakerが加わっている。サイトの解説によると右の図のようにBaker博士が専門家として「助言」もしてくれるようだ。




 さて、まだイントロ的なところを遊んでいるだけだが、サイエンスパズルと称する本丸はかなり本格的である。というより、今まさにBakerラボで予測している構造未知タンパク質がパズルとして出されているのである。そして、そこにこのゲームの目的がある。サイトの科学的背景のページから引用すると、

Foldit attempts to predict the structure of a protein by taking advantage of humans' puzzle-solving intuitions・・・.

ということで、人間のもつ「パズルを解く直感」をタンパク質の立体構造予測に使おうというもくろみだ。実際、BakerラボではRosettaというタンパク質構造予測アルゴリズムを使って構造予測をしているが、このFolditの位置づけはインタラクティブなRosettaというものらしい(このRosettaを個人のPCでも少しでも計算しようというのがRosetta@homeである。日本語解説有り)。
 とは言え、本番の問題はおそろしく難しそうだ。側鎖を良さそうな方に動かしたら別の相互作用に取って不都合が生じるという「あちらを立てればこちらが立たず」状態にすぐ陥る。すべての相互作用を矛盾なく(郷信広博士が最初に提唱した「consistency principle」)安定に仕上げるのは至難の業であるのがすぐにわかる。
 Rosettaで人の直感をどう使うのかはよくわからないが、このゲームが公開されてから1年くらいの間にコンピュータよりすぐれた結果を出した「直感」をもつ人が現れたのか気になる。

 ふだんタンパク質の立体構造は完成型を眺めるだけだが、このソフトでは自分でいじれるのが楽しい。

 オンラインで個人のPCのCPUを集めてフォールディングシミュレーションするものとしてはRosetta@homeよりもFolding@homeが知られているかもしれない。興味ある方はこちらもどうぞ。

2009/12/24

シャペロニン vs. F1-ATPase

タイトルはマジメ(?)だが、何のことはないケーキでの勝負である。

 恩師の吉田先生が昨年度末で東工大を退職ということで同窓会が催され、その会のメインイベントの一つとして出されたのがこれらのケーキ。同窓生有志(大阪大学・野地研の田端さん、上野さん、野地さんら)が事前にシフォンケーキからして手作りで作った大作だ(ぼくはアイディアは出して企画段階では関わったが、制作段階ではシャペロニンの方の生クリームを塗ったくらいです)。

 我らがシャペロニンGroELはGroESが一つ結合した弾丸型構造を模している(右上写真)。基質タンパク質と見立てるお菓子のヒモが少しはみ出ているのも意味深いのだが、それにはここでは触れない。


 一方、左に載せたF1-ATPaseはα3β3の6つのサブユニットの間に回転子γ(ガンマ)サブユニットと見立てるフランスパンが突っ立っている。

このF1-ATPaseにはとてつもない仕掛けがほどこされている。何とこの「γ」フランスパンが回転するのである。



 右の写真を見てもらおう。台座にモーターが仕込まれており、「γ」フランスパンと直結している。モーターには当然スイッチが付いているというわけだ。ご丁寧にスイッチは回転が切り替えられるようになっており、ATPの分解方向、合成方向が指一本で制御可能なハイテクだ。




 宴たけなわにて、このケーキたちの登場とあいなった。F1ケーキにはなんとジェット風船が装着されている。まさにF1-ATPaseの回転の可視化である。

 吉田先生によるスイッチオンでクライマックスに達し、集まった同窓生一同の度肝を抜いたのは言うまでもない。




 「回転」を実感してもらうという意味で、やはり動画を見せないことにはおさまらないであろう。(以下のリンクもしくは写真をクリック)


ということで勝敗はあっという間に決し、F1-ATPaseの圧勝である。

 いや、野地研の技術力にはおそれ入りました。おかげでぼくも含めて集まった皆がたいへん楽しめました。

(このネタ、いつか載せようと思いつつ半年以上経ってしまい鮮度が落ちてしまいました・・・)

以下 、おまけの制作風景です。GroELは円筒形のシフォンケーキなので空洞もきちんと空いている。フタのGroESはメロンパンである。




2009/12/23

フットボール型ケーキ

 かなり古い話題になってしまったが、今年のぼくの誕生日にラボでお祝いをしてもらった際、メンバーたちが二種類ケーキを作ってくれた。ケーキでお祝いしてくれるだけでもたいへんうれしいことだが、今回はさらにおまけがついた。なんと、研究テーマに関連した「かたち」にケーキを仕上げてくれたのである。

 一つはシャペロニンGroEL/ES複合体のフットボールを模したケーキ。真ん中の四角いところがGroELのダブルリングで、上下の三角がGroESである。ちなみにフットボール複合体は研究者によっては「Symmetric complex」ということもあるように上下で対称のかたちになっている。イメージを伝えてケーキ屋さんに加工してもらったということだ。




もう一つは一見ふつうのケーキのように見えるかもしれないが、中心に書かれているのは「出芽酵母」のつもりということだ。上が母細胞、下が娘細胞という出芽した状態の細胞で、星で現したプリオンタンパク質が母から娘へと流れ込むようすを示しているらしい。さらに言えば、星は量子ドット(Qdot)を意味している。この背景には、最近当研究室で行ったプリオンタンパク質にQdotを結合させて個別のプリオンタンパク質の動態を可視化する、という研究にインスパイアされた、ということだ。

このような楽しい企画を考えてくれたメンバーに感謝したい。

なお、この「シャペロニン」ケーキが、次に紹介する吉田研同窓会でのメインイベント「回転するF1ケーキ」につながったことを付記しておきたい。

2009/12/13

寄木細工の「プリオン」


箱根に行く機会があった。箱根の伝統工芸として寄木細工がよく知られている。とあるギフトショップにて発見したのが写真の寄木細工キーホルダー。何に見立てるかというと、プリオンである。

プリオンはタンパク質性の感染因子と定義されていて、概念を説明するときには下のような図を使っている。簡単に説明しておこう。

よく知られているクロイツフェルトヤコブ病、狂牛病などのプリオン病の研究から、タンパク質の立体構造の異常が増殖していく現象が見つかった。プリオンは、タンパク質(の異常構造)が自己増殖するという点でタンパク質科学の常識を破る概念であるが、今では出芽酵母などにも多数プリオン的な挙動をするタンパク質が発見されている。



この概念図の赤い矢印のような形で示したのがプリオンである。丸い緑の正常型が構造変換すると分子間で規則的に結合していき結果として線維状タンパク質となる。この線維(アミロイド線維)が伸びるときには方向性がある、という結果を以前示したこともあり(Inoue, Y., et al. J. Biol. Chem. 2001)、矢印でベクトルを示したわけである。

前置きが長くなったが、上で紹介した寄木細工のキーホルダーを見て、思わず「プリオンだ!」となったわけである。アミロイド研究者なら、これをアミロイドと見立てるかもしれない(実際、プリオンとアミロイドの境界は明確ではなく、最近の知見では「プリオン=増殖しやすいアミロイド」というようになってきている)。

みやげ物屋では寄木細工の仕掛け箱(箱に仕込まれている仕掛けを手順を踏んで解除しないと開かないようになった箱)の実演も楽しんだ。


2009/11/22

変性タンパク質もどき消しゴム?


海外に出かけるとネタが増える。

次に紹介するのはケンブリッジの博物館のショップで購入した消しゴム(だと思う)。

きれいな色がねじれているような硬めのゴムであまり自由にくねくねとはしないが、シャペロニンを模した幾何学玩具(8量体シャペロニンもどき)と組み合わせると、[ シャペロニンー変性タンパク質 ] 複合体と見立てることができる。


ちなみにそのケンブリッジの博物館ではダーウィン展が開かれていた。


2009/11/15

7量体リングのシャペロニン(GroEL)入手!

 1年ほど前のこの欄に「8量体シャペロニン?」と題した投稿をした。先日の海外出張の途中で自分の専門である7量体シャペロニン、つまり真正細菌型シャペロニン(GroEL)に類したおもちゃを見つけたのでここに紹介したい。

背景としては、シャペロニンは進化的に見て大きく二つ、真正細菌型GroELと真核細胞(グループ2)型CCTに分類される。CCTは8つの異なるサブユニットからなるリングが二つ重なったタンパク質で、以前紹介したのは「8量体もどき」であった。自分の専門はGroEL型であり、こちらは7量体(が重なったダブルリング構造)であるので実は「これが7つだったらなぁ・・・」と思っていたのが正直なところであった。


その想いが通じたのか、パリの街を歩いているときに露天商が売っているこのおもちゃを見て、「サブユニット」を数えたときにはうれしかった。7つだったからだ。
その露天商はその場で針金とペンチを使ってこれを組み上げていた。インドから来ているという彼いわく「一つ作るのに2時間かかる」、「これはインド発祥なのだ」とか。出来もいいので、迷わず価格交渉を行い、色違いを3つまとめて購入(GroELを研究しているメンバーへのおみやげとした)。そのインド人はなぜぼくが3つも購入したのか不思議だったかもしれない。



なお、最初に見つけた「8量体」の方がサイズが大きく、「7量体」は小さい。

こういうおもちゃやパズルはなぜか海外で見つかることが多いのが、少しさみしいような気もしないでもない。大きい方は日本の知育玩具のお店で見つけたものである。研究室の一般公開や講義の小道具にもうってつけの一品。シャペロン研究者ならぜひ入手してもらいたいものである。 (「パワーオーブ」で検索すると出てきます)

(一部、「タンパク質の社会」ニュースレターのコラムより抜粋)

2009/11/08

ニュースレター第4号発行

10月上旬に特定領域「タンパク質の社会」のニュースレター第4を発行した。


この号の表紙はこのブログを読んできた方には一目瞭然。シャペロニンのフットボール複合体である。特集は、手前味噌のGroEL特集。最近我々の研究を含めてGroELの作用機構について新しい知見が蓄積しているのでそれをまとめてみたのである。さらには、HorwichとHartlというシャペロニン分野の大物二人の間での論争の経緯なども紹介している。




他にもいつものように関連シンポジウムなどのレポート、海外留学記なども載せてある。読みたい方は事務局(protein.community@gmail.com)まで連絡をください。ウェブ版PDFのパスワードを教えます(もしくは発送リストに載せます)。

2009/08/25

eSOL: 大腸菌全タンパク質可溶性データベース


シャペロンがない状態で大腸菌の全タンパク質(4000種類強)を個別に試験管内で合成して、凝集体になりやすいかどうかを網羅的に調べた(Niwa, T. et al., PNAS 2009 → pdf)。この結果はベーシックなタンパク質科学としてたいへんに興味深い知見(タンパク質には凝集になりやすい集団とそうでない集団の二つに分かれる、などなど)があったのも重要だが、実用的な意味でも今後貴重なリソースになると考えている。実際、バイオインフォマティクスの研究者を中心に予想以上に反響があって、うれしい限りである。

ただ、論文では統計的にしか結果を示していないので、個々のタンパク質が溶けやすいのか、凝集になりやすいのかは論文を見ただけではわからない。
そのようなこともあって、国立遺伝学研究所の専門家にウェブで検索可能なデータベースを構築してもらうことになり、既に公開されているのでここでも紹介しておきたい。
 
eSOL (Solubility database of all E. coli proteins)
http://www.tanpaku.org/tp-esol/

みなさんぜひお使いください。
使い勝手などで要望などありましたら、どうぞお気軽にコメントをお寄せください。

2009/03/30

ニュースレター第3号

 3月末に特定領域のニュースレター第3号を発行した。


 この号の目玉はHartl博士のインタビューである。HartlはシャペロニンGroEL研究を牽引するだけでなく、今ではシャペロン関連の分野のリーダーの一人でもある。インタビューは神戸で開催された分生・生化学会合同年会に彼が特別講演者の一人として招待されたのを機に行った。はじめてのインタビューで事前に質問などある程度は準備したが、実際に始まるとそれどころではないことがわかった・・・。同行してくれた名大の遠藤斗志也さんにもずいぶんと助けてもらって何とかこなせた、というのが実感である。本当はもっといろいろと話を聞いたのだが、割愛した部分も多々ある。さらには、もっと突っ込んだことを聞きたくもあったのだが、流れというのが一回できると関係ないことを聞くのは難しいものである。

 他にも領域班会議や関連シンポジウムなどのレポートが満載である。読みたい方は事務局(protein.community@gmail.com)まで連絡をください(と言ってもぼくのところに届くわけですが)。ウェブ版PDFのパスワードを教えます(もしくは発送リストに載せます)。

2009/03/29

地図合わせパズル


 以下で少し珍しい色合わせパズルを紹介した。そのときに一緒に購入したのがこの地球儀型パズルである。

 地球儀に切れ目が見えると思うが、そこの一部がルービックキューブのように回転するようになっていて、配置が崩れて元に戻すという代物だ。

 表面は紙で、動きはぎこちない。なので、あまり動かしすぎると表面がすぐにはがれてきそうで今のところ元の地球の配置のままである。

 なお、この地球儀パズルも含めて、下のレインボーキューブや「光学異性」ペン、その他を購入していた近所の店が3月で閉店するということでかなり残念。この地球儀パズルとレインボーキューブは前から店にあることは知ってはいたが、そうやって見ている人ばかり多かったのかもしれない。他にも見ていてほれぼれとする芸術品の積み木(たとえばネフ社)などを置いていたが、かなり高かったからなぁ。

レインボーキューブ

 80年代初頭に一世を風靡したルービックキューブがまた息を吹き返し、その流れを汲むパズルが多数世に出回っている。

 ここで紹介するのはその一つで名前はレインボーキューブ。フォールディングというわけではないが、カラフルで美しいので思わず購入した。

 説明書によると「理化学研究所が結晶構造をモデルとして開発した色合わせパズル。他の色合わせパズルとの大きなちがいは回転軸が4本あることです」ということでである。

難しく言うと「面心立方最密充填構造」というらしく、この構造をとる金や銀などがやわらかくて延伸性があって加工しやすいのは滑り面が多いかららしい。

 がちゃがちゃ動かしてばらばらの色にしたのが下の写真。
ランダムになったらなったでかなり美しい・・・ので直す気にならない??