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2024/09/21

「マルチファセットプロテインズ」的なギフトあれこれ

2020年度に始まった科研費学術変革(A)「マルチファセット・プロテインズ」もあっという間に最終年度となってしまった。

本領域の基本コンセプトは、従来見えていなかった、見ようとしなかった、見ることができなかった、「タンパク質の世界」の新たな面(ファセット)を開拓する、ということで、領域のシンボルは多くの「ファセット」を有して光り輝くダイヤモンドである。

ということで、領域発足後に卒業生が私にくれるギフトは、このロゴにちなんだモノが多い。2021年3月の卒業生たちのマルチファセット的なランプ(手作り!)は以前ブログに書いた(→2021年4月「マルチファセットプロテインズ的なランプのギフト」)。

その後ももらっているけど紹介していなかった。

2023年3月卒業生


これは「ストームグラス」と呼ばれているモノでいろいろな形の商品が販売されている。容器に密閉された樟脳(しょうのう)の結晶形が天気によって複雑に変化するので天気予報に使えるということだ(それほどの精度はないようだが)。

これをひっくり返すと、


ダイヤモンド的になる!

真上から見ると・・・


8角形である。これが7角形だったら、シャペロニンGroELの7量体コレクションの一つにもエントリーできたのだが・・・。まぁ、普通この手のモノを7角形にする必要はないので仕方ない。

2024年3月卒業生

今年3月は、ダイヤモンド型の3Dジグソーパズルをもらった。


パーツは41ピース

ゼロから始めて完成させようとしばらくもがいたが、できそうもないので、答えを見ながら完成させた(パズル好きだが、パズルを解くのが得意ということでは全然ない)。なお、3Dジグソーパズルは初めてだったが、なかなかうまくできていて、少しずつ形が整っていって、最後に見事に組み上がるのは快感である。

かなりキレイだ。プラスチックではあるが質感もなかなかしっかりしている。

透明なので、何かひと工夫してできないかということで、調べるとディスプレイ用のライトが市販されているようだ。それは買ってないが、手元にあるブラックライトを下に置いて光を当ててみた。

それなりにキレイに輝く。

オマケとして、このダイヤモンドパズルと、マルチファセット・プロテインズのうちわを並べてみた。このうちわは、昨年9月に定山渓で領域会議を開いた際に世話人の内藤哲さん(北大)が作成してくれた代物である。















2019/12/10

キューブパズルに着想を得たフォールディング論文(by 郷信広博士)

今回はごく最近出版された論文紹介をしたい。内容は、本ブログで何度も登場しているキューブパズルに着想を得た本格的な蛋白質フォールディングの論考で、著者は郷信広 京大名誉教授の単著である。

Snake cube puzzle and protein folding
Nobuhiro Go
Biophysics and Physicobiology, Vol. 16, pp. 256–263 (2019)
doi: 10.2142/biophysico.16.0_256 (無料でpdfダウンロード)


日本語版(2021年3月追記)
Snake Cube Puzzleとタンパク質フォールディング
郷 信広
生物物理 61, 005-011 (2021)
https://doi.org/10.2142/biophys.61.005(無料でpdfダウンロード)

日本の生物物理のパイオニアのお一人で蛋白質フォールディングのシミュレーションの世界的な先達である郷先生の論文はどんな内容なのか。論文を紹介する前にいくつか背景を書いておこう。(パズルのことと郷先生の功績をよく知っている方は飛ばして下へ)

スネークキューブパズル
【背景1:キューブパズル】
キューブパズルは27個のパーツを折りたたんでコンパクトな3×3×3の立方体に戻すパズルである。パズルをばらすとヘビみたいなのでスネークパズルとかコブラパズルとか呼ばれることもある。蛋白質に見立てると、ヘビの状態でくねくねといろんなカタチを取り得るところが蛋白質の変性状態に似ている。このヘビを折りたたんで3×3×3のキューブにした構造が蛋白質でいう天然構造である。

最後にキューブになるのはどれも同じだが、経路はいろんなバリエーションが売っている。私のコレクションは10種類ほどあるが(注1)、そのいくつかの「変性」状態と「天然」構造を写真にて紹介する。

#ブログでの紹介例
経路の違うフォールディングパズル(2010年12月)
新規フォールディング経路のキューブパズル(2018年9月)


 【背景2:蛋白質フォールディングの整合性原理とGo(郷)モデル】
Wikipedia(folding funnel)より
蛋白質の立体構造形成、すなわちフォールディング(折りたたみ)の基本は、アミノ酸配列さえ決まれば蛋白質の立体構造は一義に決まる、というものである(Anfinsenのドグマと呼ばれる)。別の言い方をすると、蛋白質フォールディング反応は自発的、熱力学的に言えば、ギブズの自由エネルギー(ΔG)が負ということである。これを概念的に図示する場合、よく使われるのが右に示すようなフォールディングのエネルギー地形で、フォールディングをファネル(漏斗)に例える。この「漏斗」の上方はさまざまな変性状態が集まっていてエントロピーが大きい状態で、下へ落ちるにしたがって少しずつΔGが小さくなっていく(図の上ほどエネルギー大)。最終的にΔGが最小になったところ(漏斗の一番下のとんがった部分)でフォールディングは完了して天然構造となる。
  このファネル理論は米国の研究者たちが1990年代に使い出したものだが、その源流に郷先生が1983年に提唱した「整合性原理(consistency principle)」があり、Go(郷)モデルと呼ばれることもある。整合性原理は「タンパク質は天然構造において2次構造と3次構造すべての相互作用が整合して全体を安定化している」という考え方である(この原理の解説を多数著している京大理学研究科の高田彰二さんの表現:注2)。要は、漏斗のどこでも下へ向かって落ちていって最終的に一番下の天然構造に向かっていくということとも言える。

【論文の内容紹介】
 前置きが長くなったが、今回紹介する郷先生の論文は日本生物物理学会が刊行している「Biophysics and Physicobiology」誌の郷先生80歳記念の特集に郷先生自らが寄稿したフォールディングに関する論考である。
 ざっくりと言えば、このパズルでの27個のパーツをどのような「配列」にしたときに、3×3×3の立方体にフォールディング可能か、また、そこから出発して、このパズルに「疎水性相互作用」を導入するなどして、蛋白質らしさの本質とは何かを考察している。

 「配列」と言っても20種類のアミノ酸が並ぶ配列ではない。その説明のために図解を付けてみる。


 先にも見せたキューブパズルは同じ配列ではない。黄色(A)、青色(その下の濃淡の茶色も同じ配列:B)、薄い茶色(C)の三種類は並び方が違うのがわかるだろうか。
 例として、黄色(A)で説明する。27個のパーツの末端2つを e (end)、内部の25個は折れ曲がる部分をb(bend)もしくは3つ直線に並ぶ真ん中をs(straight)と定義する。この場合、黄色パズル(A)の「配列」は

esbsbbbbsbbbbbbbbsbbbsbbbse 


となる(注3)。

こう考えると、eは置き場所が決まっていて、内部の25個で b s の2通りがあり得るので、配列の場合の数はトータルで2の25乗(3300万種類ほど)となる。
 この総数の中で3×3×3のキューブ型に折りたたむことが可能な「配列」を全て計算で求めたところ、22,897種であった。つまり、あり得る配列空間の中のたった約0.07%(=22,897/2の25乗)のみが折りたたみできる、ということである。
 この中には(3×3×3のキューブ型にはなるものの)複数の折りたたみ構造をもつ配列も多数あるが、7,268種の配列はその折りたたみ構造が特異的(ユニーク)であった。写真の3種類はいずれもユニークな配列だった。(私の感想としては、このキューブパズルで商品化されている「構造」はごくごくわずかであると言えよう)。

 実はこの辺りの論考は既に世界のパズルマニアが似たような計算をしているということだ(例えば Jaap's Puzzle Pages)。そこで、郷先生はパズルをより蛋白質らしくしていく。このスネークパズルは幾何学的に3×3×3を実現するという点でファンデルワールス(van der waals: VdW)力をベースにしているとも言えるが、それとは別に疎水相互作用(hydrophobic interaction)を導入したHPパズル、さらにHPパズルとファンデルワールスを組み合わせた複合(compound)パズルを考案して、これらのパズルの蛋白質らしさについて議論している。実際の蛋白質は20種類のアミノ酸が数百、数千並んで複雑な立体構造になるが、ここで示したように単純なモデルにすることで、蛋白質とは何かという本質を抽出した論文であると言えよう。途中、郷先生自らによる整合性原理の解説も含まれている。
 興味をもった方は論文pdfをダウンロード(無料)してぜひ読んでほしい。

 さて、ここからは余談である。この論文はつい最近、今年秋に公開されたが、実は2年ほど前に郷先生がこのような論考をしていることを知った。私は2002~2006年までJSTさきがけ研究者に採択いただいたが、その際の研究総括が郷先生であった(「生体分子の形と機能」領域)。その領域の同窓会が2年前に開催され(注4)、それぞれの近況を短い時間で話す機会があり、そこで郷先生自らが発表したのがこの論文の原型となる内容だった。フォールディング理論のパイオニアの郷先生自らがキューブパズルに着想を得て話しはじめたのだから聴き始めた私が驚いて鳥肌が立ったのは言うまでもない。しかも、キューブパズルは東寺のがらくた市で見つけて入手したということでなお嬉しくなった(注5)。
 その同窓会での私の発表でもイントロでキューブパズルを使っていたこともあり、郷先生に、私のブログでさまざまな経路のパズルを紹介しています、と伝えていた。その際にお教えした3種類の経路のパズル(上記のパズルA~C)が、今回の論文の中でユニークな配列の例として実際に使われている。つまり、私自身もこの論文に少し影響を与えたというのは実に光栄なことである。

以上、このように複雑な事象を単純化して本質を抽出し、さらにそこから複雑な事象に洞察を与える、という研究を自らも進めてみたい。

2018/09/16

新規フォールディング経路のキューブパズル

前回のブログエントリーにてフランスの学生から立体パズルをもらったことを書いたばかりだが、帰国したその学生から、お礼ということで二つ気の利いたモノをもらった。


下に写っているのは、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」のマグネット。オルセー美術館のショップで買い求めてくれたらしい。
この中心の貴婦人が「シャペロン」であるというのがシャペロンの解説の定番?である。最近では昨年ブレークスルー賞(賞金300万ドル!)を受賞した京大の森和俊さんが受賞時の記者会見でこの絵を使ってシャペロンのコンセプトを説明していた(→記者会見のようすの写真)。


さて、本題はおなじみのキューブ型のパズルである。私にはタンパク質のフォールディングに見えて仕方が無いという代物で、このブログでも何回も登場してもらった。

キューブを崩すと、右のようになる。タンパク質になぞえれば完成した3×3×3の状態が「天然構造」、ほぐしたあとは「変性状態」である。

学部1年生向けの講義や高校生向けの出張講義などでもタンパク質の立体構造形成(フォールディング)を知ってもらうために大活躍してもらっている。

と書くと、このパズルはもういいよ、と思われるかもしれないが、ちょっと新しい点があった。

崩したあとに、完成させるのが難しいのである。

この手のパズルを入手したあと、研究室のみなが集まる部屋に置いておくのだが、このパズルは数日経っても学生たちが誰も解けない。

このパズルは完成型は3×3×3のキューブで同じように見えるが、実は経路がさまざまである。

この写真の左下が今回もらったパズルだが、それ以外に何種類ももっている。
右下は一番最初に入手したもので、今では目をつむっていても解ける。その右下のと、奥のカラフルな中の青色は同じ経路だが、他のは全部作りがちがう。

以前のブログエントリーに経路の写真を全部載せている(→経路のちがうフォールディングパズル)。

今回いただいたパズルの作りを見てみよう。

一番下が、今回もらったパズルだ。その上の以前からあるのと違うのがわかるであろう(下から二番目と青色は同じ作り)。

なぜ難しいかというと、新しいのは可動部が多いからだ。

下から二番目と青色のを例に取ると、3つパーツが並んでいる部分が9ヶ所あるが、新しいのは、3ヶ所しかない。つまり2つ連続部が多いので可動部が多いのである。可動部が多いほど取り得る「変性状態」の場合の数が多くなるので、パズルとしての難しさが高まるのである。

タンパク質のフォールディングと通じるものがある。

この話しには続きがある。ちょっと確認しないといけない内容もあるので、確認が取れたら続編をいずれ書いてみたい。

2018/08/05

フランス産の立体パズルを手土産で

いまラボに一種の共同研究でフランスの大学から修士学生が2ヵ月ほど来ている。

来日後、研究室にお菓子を持ってきてくれたあと、私にもお土産があるということで何かと思ったら、フランス産の立体パズルであった。 袋を開いた瞬間、顔がほころびたいへん喜んだのは言うまでもない。気の利いた手土産だ。


この学生Nさんは、昨年一度打ち合わせで来日し、私のオフィスに来ている。
そのときに、オフィスにところ狭しと並んでいるパズルやおもちゃが印象的だったのか、このブログを見ていたのかは聞いてない。が、私の趣味をきちんと理解してくれていたみたいで嬉しい限りである。


 左側のは、組み木パズル。つまようじみたいな細い棒を抜くと太めの棒がバラバラになって、それを対称性の高い立体に戻す。

似たようなパズルはもっていて、だいぶ前に一度紹介したかもしれないが、そのときのパズルはパーツが散逸して二度と戻らなくなっている。






もう一つのは一見おなじみのキューブパズルだが、拡げるとロボット的になるというパズル。

これも同様のを以前紹介したなと調べるともう5年ほど前に載せていた。「キューブ型パズルと思いきや・・・





崩すと、こんな感じになる。一本のヒモ状ではなく枝分かれ構造である。



実は、このキューブ型ロボットパズルは、
今年の5月にアメリカに行った際のMOMAでも新調して、ラボに置いていた。
 学生が、その「兄弟」と一緒に肩車した状態で飾ってあったのが、右の写真。


Nさん、ありがとうございました!

これを読んでいる皆さんも、こんなおもちゃやパズルがありますよ、という情報があったらぜひお寄せください。もちろんお土産も歓迎します。

2018/03/24

シャペロニン的?なアートカレンダー

 3月に恒例の追いコンにて卒業生一同よりプレゼントをもらった。

 MoMAストアのパーペチュアル(永久)カレンダーである。MoMAのグッズははこれまでにも多数このブログで紹介していることからわかるように、好みに合った立体的に美しいアート作品だ。

 とりあえず、カレンダーをテーブルに置いた状態。磁石がうまく使われていて月と日を手動でセットする。


MoMA Perpetual calendar
月と日の部分を拡大した写真。
 3月24日にセットしたところ

GroELーGroESフットボール模式図

 さて、これを選んだ学生いわく、このカレンダーはシャペロニンのフットボールに似ているという。正円を黒い棒が真ん中から分断しているのでダブルリングに見えるということだろう。

 あと、空間が抜けているところもシャペロニンっぽいかもしれない。つまり、シャペロニンの場合、空洞に基質タンパク質を格納することが機能の本質であり、このカレンダーでは月日を抜けたところに置いているということだ。


 とは言え、形状としてはカレンダーをそのまま見ても若干無理があるなぁと思いつつ、撮影しながら傾けて見ると楕円形になりフットボールっぽくなった。

「フットボール」二つ
奥に置いたのは3Dプリンターで作成したGroELとGroESのフットボール模型だ。

ところで、昨年3月はシャペロニンGroELもどきのサボテンということだった。そのサボテンも立派に成長してラボに置いてあるので一緒に撮影。

「シャペロニン」三つ
左にかけたのは、以前いただいたシャペロニンフットボールの模型ストラップだ。


ということで、ラボに3年もいると私に影響されて?、みんないろんなモノがタンパク質に見えてくるのかもしれない。

 いずれにしても、卒業する修士2年の皆さん、ありがとうございました。美しいコレクションがまた一つ増えました。


2017/10/15

フットボール型?の知恵の輪

 本ブログでは、私が見立てたタンパク質もどきのモノを紹介してきている。
 特に、パズルやおもちゃが多いが、今回は私が長年研究しているシャペロニンGroELもどきの知恵の輪である。
(シャペロニンとはタンパク質のフォールディングを助けるタンパク質の一種だ。)

一種のシリンダーとなっていて、外側の2つのリング内に3つのパーツがぴったりと埋め込まれている。これをバラすので知恵の輪というわけだ(中身をはずすので「はずる」?)。
 国産でもあり普通に入手できるパズルだが、デザインはフィンランドのパズル作家らしい。北欧らしくシンプルだが美しいフォルムである。


取り出すと、扁平な形で上下に少し出っ張りが見える。見本で置かれているのを見て、シャペロニンGroELとGroESからなる「フットボール」複合体に見えたわけだが、普通の人にはフットボールっぽく見えないかもしれない。

これをグイッと上下に引っ張てみよう。


と言っても、ダイキャスト製で硬いので画像処理で上下に延ばしてみた。
 右の写真のように、ダブルリング構造となる。リング内のパーツが上下に少し丸まって突出しているので、見事に(?)フットボール型になる。

ちょっとしたモノがシャペロニンに見えてしまうのだ。



下に示したのが、フットボールGroELーGroES複合体の模式図と結晶構造だ。

実際のシャペロニンは、まだカタチができていないタンパク質(変性タンパク質)をGroELとGroESから形成される「空洞」に閉じ込めて、カタチ作り(フォールディング)をアシストする(上図の緑色の左側が変性タンパク質。丸くなっているのはフォールディング終わってカタチができたあと。シャペロニンは空洞内でフォールディングが最後まで進行することがわかっている)。
シャペロニンでは空洞が大事というわけだが、このパズルは内部までぎっしりと詰まっている点ではシャペロニンらしくない。

さて、パズルを解いてみる。解答はパッケージに入ってないが、ガチャガチャやっていると少しずつバラけてくる。


バラしていく途中。

最後、ばらけた状態。
 




もう一度組み立てて、上から撮った写真。


「シャペロニン」として話しを進めているが、三回対称のタンパク質複合体が外側のリングで取り囲まれているとも見える。これって、膜タンパク質を可溶性として扱う際に最近よく聞くナノディスクっぽいかもしれない。ナノディスクでは、膜タンパク質周囲の脂質をリング部分のタンパク質がつなぎ止めるのである。


2017/07/15

新しいタイプのGFP模型

昨年度より東京工業大学では学部1年生全員(1~7類)が生命科学を必修として履修することとなった。その流れで、教科書で生命科学を教える以外でも全学生に生命科学研究の最先端、面白さを伝えよう、ということでGFP(緑色蛍光タンパク質)を主役として、蛍光が出るしくみの化学から細胞生物学まで全類の学生に教える講義も準備され、私も担当している。

その教材として、GFPの立体構造模型を昨年度初めに特注で作ってもらった(スタジオミダス制作)(注1)。


なかなかカッコイイでしょう。

このようなリボンモデルの3Dプリンター模型は自分自身は初めてで美しい。
GFPはβシートが樽状にぐるっと巻いているためにβバレル(樽)と呼ばれることがあるが、それがはっきりとわかる。

βシートのことを知っている人だとこの白い矢印(βストランド)部分だけではシート状にならず形を保てないのではと思うかもしれない。その通りで実際には白いストランド間を細い棒で一部補強してある(下の写真の赤矢印)(注2)。実際のタンパク質ではこの棒が水素結合として全体をシート状にして立体構造を安定化している。GFPはβシートがとてもきれいに並んで「缶」のようになっているためにとても安定で60℃くらいに熱しても変性しない(色が消えない)し、冷蔵庫で何年も光ったままだ。



同じGFPをラボにある廉価版の3Dプリンターで打ち出すと以下のようになる。
 

何かよくわからない「塊(かたまり)」である。
空間充填モデルで打ち出すとこうなるのだ(注3)。

元の美しいGFP模型に戻ろう。

リボンの中に見える緑の部分はGFPの蛍光団である。ここだけ空間充填モデルになっているが、ここも元はアミノ酸である。特定のアミノ酸配列(GFP野生型ではSer-Tyr-Glyの3アミノ酸)がGFPの立体構造の枠組みの中に配置されると化学反応(脱水反応と酸化反応)が自発的に起こって特別な蛍光団が形成される。タンパク質というのは本当に何でもやってしまう一例である。


スタジオミダスさんは凝っていて、この蛍光団に蛍光塗料を塗ってくれ、さらにはこの模型を置く台座にライトを付けてくれた。光らせたのが以下である。


さて、先ほどラボで打ち出した塊は何だかよくわからない、と書いたが、実際には塊の方が正しい状態と言えて、内部の緑に光る蛍光団はタンパク質の奥に埋もれている(水のない環境に蛍光団が置かれているのが光る理由の一つでもある)。


ーーーーーー
注1)
今回のGFP模型の写真はスタジオミダスさん撮影(GFPの塊の以外)。なお、このエントリーは下書きまでしていたが、すっかり放置していた・・・。

注2)
この1年間でそれなりにあちこちで展示して触っている間に、この補強の棒が折れてしまい、形が崩れやすくなってしまった(現在修理中)。

注3)
このプリンターで学生にGFPのリボンモデルを一度打ち出してもらったが、うまく造型できなかった。
ちなみに同じ空間充填モデルでもシャペロニンGroELーGroES複合体は以下のようになる。GroELは巨大タンパク質複合体で空洞があるからサマになるのだ。スケールは全然違っていて、GroEL(やGroES)の縮尺でGFPを打ち出すとGroESよりも小さくなるくらいだ。GroELの空洞内にGFPが2個分ハマることを実験的に証明したことがある(Sakikara et al., JBC 1999)。


Sakikawa C. et al.,  J. Biol. Chem. 1999より


2017/07/12

シャペロニン「フットボール」のストラップ

 共同研究者の小池あゆみさん(神奈川工科大)からたいへんうれしいギフトをもらった。大腸菌のシャペロニンGroELとGroESのフットボール型複合体構造のストラップだ。


私たち自身が島村達郎さん(京大)たちと共同研究で決定した結晶構造(Koike-Takeshita, A. et al., J. Mol. Biol. 2014, PDB ID: 3WVL)を元にしたモノである。

 野生型のGroELとGroESだとフットボール型はGroELのATPaseサイクルで過渡的にしか形成しないので「フットボール」構造を固定することはできず、結晶作成は通常は無理である(注1)。このフットボール構造はGroELのATPase活性を極端に遅くした変異体ができたから実現した構造である(Koike-Takeshita, A. et al., J. Biol. Chem. 2014)。GroELの52番目と398番目の2つのアスパラギン酸をアラニンにした変異体(GroEL-D52A/D398A)では一週間以上GroELとGroESがフットボールのままとなる(タンパク質のフォールディングを助ける能力は同等)。


フルカラーの3D模型である。石膏製であり、廉価版の3Dプリンターでは作成できない。実際の作成はスタジオミダスさんに特注したものである。スタジオミダス製作の模型はこれまでにも本ブログで紹介してきた(→「シャペロニンの模型が手元に!」)。スタジオミダスさんでは山形大の川上勝さん考案のタンパク質のシリコーンモデル(Kawakami Model)を作っている以外にも、今回紹介した石膏モデルでのタンパク質模型も作成してオンラインショップで売っていたりもする(→SilMol-mini スタジオミダス)。

いずれにしても、小池さん、どうもありがとうございました。

ーーーーーー
追記:
実は、フットボール以外でもタンパク質模型を持っていた。昨年の分子生物学会である企業がノベルティグッズとして配付していたのだ。
リボヌクレアーゼAとその阻害タンパク質の複合体である。


スタジオミダスさん制作で市販されているセットに組み込まれているタンパク質だ。ストラップではほぼ同じサイズだが、実際のタンパク質としては、RNaseA-Inhibitor複合体は分子量6~7万程度、GroELーGroES複合体は分子量100万ほどだから15倍ほど違うことになる。

ーーーーーー
(注1)
 実は同時期にシャペロニンフットボールの立体構造が他からも報告されていて、そこでは野生型GroELを使っている(フットボール複合体と因縁のあるLorimerのグループから。Fei X, et al, PNAS 2014)(さらに2015年には別のグループからHsp60でも)。

野生型GroELでどうやって??と思うかもしれない。

リン酸の類似体であるフッ化ベリリウム(BeFx)を使うとGroELのATPaseサイクルが途中でストップしてフットボール複合体ができるという私たち自身が以前報告した性質(Taguchi et al, JBC 2004)を利用している。


2016/05/28

Snaak:カチカチと折りたたむ3Dパズル

(2016年5月28日掲載だが、更新しようとしたら消えてしまったので再掲)

次もアメリカで入手したモノで立体造形パズルというかおもちゃである。Snaakというらしい。snaak.comによると、"3D puzzle and shape-maker tool."と定義されていた。

日本では未発売のようだが、なかなか気持ちよくいろんなかたちを作ることができる。

まず、一番の典型のキューブ型に造型してみる。
写真ではちょっとわかりにくいが、4×4×4=64個のパーツがゴムでつながっていて、カクカク、カチカチと折れ曲がるようになっている。


では、キューブをバラして、「変性」させてみよう。














購入時は8×8の平面状として販売されていた。


右がパッケージ。MOMAのミュージアムショップにて購入。





説明文として、
Millions of shapes in your hands
ということでかなりいろんなかたちを作ることができる。

研究室のお茶部屋に置いておくとなかなか人気で、学生が日に日に違ったかたちを作ってくれる。



売り場には透明、赤、緑があった。GFPや赤蛍光タンパク質を意識して緑と赤を購入。


緑と赤をそれぞれ GFPとRFP(Red Fluorescent Protein)に見立てると、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)バージョンを作ることも簡単だ。


真ん中の「ペプチド」領域がヘリックスを形成して緑と赤が近いと、エネルギー移動が起こって、緑蛍光を励起したとき、赤蛍光が出る。
以下は、真ん中の「ペプチド」が伸びきって、GFPとRFPの距離が拡がり、FRETが起こらない。


それはさておき、開発元を見ると多様なかたちが紹介されている。
 (→ Snaak Geometry by Gideon Cube-Sherman )。

そのサイトにはDNA二重らせんもある(→ Double Helix by Dane Christianson )。


 さらには、そこにあった動画も載せてみる。カチカチ感が伝わるかもしれない。
(説明の音声注意)





ーーーーー
2017年7月追記
このオモチャはラボでも相当に人気があって、実にいろんなカタチを学生たちが創ってくれる。