2010/12/21

ARTODAY 芸術家の卵に蛋白質研究をレクチャー

 縁あって芸術を専攻する学生に生命と蛋白質に関するレクチャーを行った(詳細はこちら)。
 
 東京芸術大学の岩間賢さんが主宰するゼミの一環ということで、岩間さんと岩間ゼミ履修生10名ほどが東工大に来てくれて、まずはこのブログで紹介しているタンパク質パズル・おもちゃで少し遊んでもらい、そのあとで蛋白質についての講義を聴いてもらった。

 蛋白質研究と現代芸術に接点はあるのか、と思うかもしれない。自分自身「?」な部分があるのが正直なところだが、蛋白質の立体構造の美しさ、かたちのないところからかたちが形成される現象(つまりフォールディング)、かたちが機能を決定するという蛋白質の基本原理についてわかってもらえるよう、このブログのネタを随所に登場させたりして工夫したつもりである。(例えば、シャペロニン・ケーキ。これは思いのほか受けた)


 講義のあとには、うちのラボのメンバーにも手伝ってもらって簡単な実験(GFPの変性・再生実験→写真動画)をしてもらったり、GFP発現酵母や大腸菌を蛍光顕微鏡でのぞいてもらったりした。芸大の学生さんにとってはとても新鮮な体験だったようだ。


 最後に懇親会を行い、そこでは芸大の学生さんが持ってきてくれた作品ファイルを見せてもらった。一言で言えば、とても素晴らしかった。絵、インスタレーションの記録、映像作品、などなど。アートに詳しいわけではないが、一人一人がそれぞれまったくちがうスタイルで何かを表現していることはよくわかる。来てくれたのは油画専攻一年生ということでタイトルに「芸術家の卵」と書いてしまったが、大学以外ですでに発表の場を作っていたりもして、もはや立派なアーチストである。そのクオリティーの高さに非常に強い感銘を受けるとともに理系の実験系の学生ではこういう表現をすることはなかなかできるものではないな、とも感じた。

 これまでたまに美術館に行くことなどはあっても、作家さんと直接交流しながら作品を見るという機会はほとんどなかったので、アーチストさんが何を考えて作品を作っているか、その一端を垣間見ることができたと思う。アートとサイエンスで通じる部分もけっこうある。うちのラボの学生たちにも強い印象を与え、刺激になったことだろう。

 いずれにしてもとても楽しい時間を過ごさせてもらった。このような会を企画してくれた岩間さんに感謝である。岩間さんご自身、現代美術家であり、この企画の前にも会ってお話ししたり、作品を見させてもらって楽しませてもらっている。興味ある方は岩間賢さんウェブサイト(http://www.oh-mame.com)をご覧ください。
 

2010/12/18

経路のちがうフォールディングパズル

 このブログ(補足情報)にはいろいろな立体パズルを登場させているが、記念すべき第一弾はタンパク質のフォールディング、特に格子モデルを模した木製キューブパズルである。その後の情報によると立方体(天然構造)をバラした「変性」状態はくねくねしてヘビっぽいのでスネークパズルとも呼ぶらしい。

 このパズルはその後もさまざまなところで活躍中であり、本当に重宝している。不満としてはもう「飽きた」こと。パズルとして解がわかっているので、今や目をつぶってもできるくらいである。それはそれで講義などで使う分には、ささっと折りたためてかっこいいのであるが、自分としてはちょっと物足りない。100円ショップのチェーンで入手した別のも同じフォールディング経路であった・・・。

 ところが、ここにきて別の「経路」のパズルがあることが判明した。しかも、7種類もあるという! 100円ショップで同様の物が売っているのを知っているとおののく価格だが、シャペロン屋の「商売道具」ということで売り切れを除いて入手可能な6種を大人買いした。


 チェコ製というこのパズル、なかなかいい質感と動きで大枚はたいた甲斐があったというものである。色によって難易度もちがうということだが、最難関のがあっさりフォールディングしたりしたのでよくわからない。



 どれも27個の小さなキューブ型木片が硬いゴムでつながっているという点では同じだが、色によってつながり方が微妙にちがっている。端から見て、ある色は2−2−3−・・・、また別の色は3−3−3−・・・、というようにちがっていて、その「トポロジー」のちがいによってフォールディング経路が異なるわけである。




 何本もの「変性状態」を絡み合わせば、「凝集体」も簡単に作れる優れもの。




 と、これを読んで欲しくなった人、いるでしょう? 「コブラ チェコ」ですぐにわかります。ぜひ楽しんでください。



2010/10/25

ニュースレター第6号発行

 予定より一ヶ月遅れでニュースレターを発行しました。あいかわらず毎号難儀していますが、できあがるとうれしいものです。


 編集長という立場上、いろいろと小ネタを書いているのでこの機会に一部だけ公開することにしました。

1)コラム・書評の公開:このブログの以下のエントリーにあるように自分で書いたコラム、書評は公開することにしました(→こちら)。

2)目次の公開:pdfパスワードをご存じない方はどんな内容かもわからないかと思い、今回から目次のページだけは公開することにしました(ニュースレターダウンロードページ)。


目次を見て興味を持った方は事務局か編集長の田口までお気軽にご連絡ください。

2010/10/21

ニュースレターのコラム一覧を作りました

 科研費特定領域研究「タンパク質の社会」ニュースレターの編集をしていて、ページの埋め草にコラム、書評、学会レポートなどけっこういろいろと書いてきた。このニュースレターは論文未発表の内容などにも多々触れているために基本的にはクローズドの冊子であるが、自分の書いたコラムは田口研HPにまとめて載せることにした。

→ コラム一覧 URL:http://www.taguchi.bio.titech.ac.jp/paper/column/column.html

このブログの記事から載せたコラムもあるが、初出の内容も半分くらいはある。

2010/10/11

「Foldit」がNature論文に!(その2)

前のエントリーを書いてからあっという間に二ヶ月も経ってしまった・・・。
もし、続きを待っておられた方がいたら申し訳ありません。

さて、続きです。

 この論文のサプリメントにはこのオンラインゲームに参加した人たちへのアンケート結果が掲載されていて興味深い。

例えば、

・ゲームを行っている人たちの学歴では大学院レベルの人は4分の1程度。

・国別では多い順に、アメリカ、イギリス(ここまでで約半数)、ドイツ、フランス、ポーランド、スウェーデン、オランダ、オーストラリア、ロシア、ポルトガル。日本はどこにも出てこない。

・ただ、トップ50プレイヤーで見るとフランス、オランダの健闘が目立つ。

・年代では、ゲーム参加者全体では3分の2が35歳以下だが、トップ50では4分の3が36歳以上! 積み上げてきた人生経験がフォールディング予測に寄与したということか・・・。

などなど、ふだん読む論文とはちがった楽しみ方がある。

 さらには、上級者へのメールインタビューまで載っていて、どのような「戦略」でフォールディングさせたかが紹介されていたりもする。中には「ゲーム中毒になって7ヵ月で2日を除いて毎日やっていた」という者や「とにかく人よりハイスコアを出したいという一心でがんばった」という者までいたりと、人間味あふれる内容となっている。

 それにしても、こういった遊び心を専門家をも唸らせる研究にまで仕立て上げる懐の深さに感嘆した。 ・・・見習いたいものである。

2010/08/05

「Foldit」がNature論文に!(その1)

 このブログを読んでおられる方々ならタンパク質のフォールディングがいかに難しいかよくご存じのことと思う。ちょっと思考実験すると、アミノ酸が連なったポリペプチドのヒモが取り得る立体構造の場合の数は膨大であることがわかる。たとえば、アミノ酸が2個並んだジペプチドが取り得る構造が3通りとしてもアミノ酸が101個並んだら3の100乗という天文学的な場合の数になるのだ。この膨大な中から1秒も経たずに一つの天然構造(自由エネルギー最小の状態)にフォールディングが起こるのは実にフシギだ、というのがフォールディング業界でよく引き合いに出されるLevinthalのパラドックスである。

 この複雑さにより、アミノ酸配列がわかってもタンパク質の立体構造をコンピューターで正確に予測するのは今でも難しい。世界中の計算科学者がタンパク質の立体構造予測コンテストを行うくらいなのである(→CASP)。

 さて、今年はじめのエントリーにて、オンラインでのタンパク質フォールディングゲーム「Foldit」を紹介したところである。Folditは、ワシントン大のBakerらが開発したRosettaというタンパク質の立体構造予測アルゴリズムをベースに一般の人たちがポリペプチドをいじって「フォールディング」をシミュレーションできるゲームである。この「人力」フォールディング後にはエネルギー計算が施され、エネルギーが安定な構造を作った人ほど高いランクになる。

 とここまではイントロで、今回驚いたのは、このFolditが何とNatureの論文になった(→こちら)。れっきとしたオリジナルペーパーである。Nature誌での扱いはかなり大きく、通常の解説欄(News and Views)ではなくNews Features欄の「Citizen Science: People Power」と題された記事で著者(Baker博士)の写真まで入ったかたちで紹介されている。

 とにかくユニークでこんな論文見たことない、というのが第一印象だ。

 まず驚かされるのが著者欄。ラスト「オーサー」が「・・・and Foldit players」となっている。そう、この論文はネットでFolditをプレイしていた人たちをも巻き込んだ論文なのである。

 なぜFoldit playersが「著者」に加わったかというと、トッププレーヤーたちが作り上げた立体構造は世界有数のコンピューター予測を超えてよい成績を収めることが多々あったというのだ。このトッププレーヤーたちはまさに「シャペロン」である。


 いろいろな点で驚かされるこの論文。時間が取れ次第もう少し解説してみたい。ということで次回に続く。

(以下は、自分のシャペロンの講演の締めくくりでたまに用いる写真。くねくねのポリペプチドもどきを「人力」でフォールディングしてヘリックスにする。)


 

2010/07/07

eSOL(蛋白質可溶率データベース)の拡張

 我々が行った大腸菌全タンパク質の凝集体形成傾向のデータ(Niwa et al. PNAS 2009, pdf)がeSOLというデータベース(DB)として公開されている。
 このたび、統合データベースプロジェクトの畠中さんのご尽力により、eSOLが蛋白質関連の統合DB(TogoProt)に登録された。



 この統合により、ある蛋白質に関するデータを多面的に調べたい方はバラバラに調べることなくまとめて情報を得ることができると期待される。

 (eSOLは大腸菌タンパク質だけなので検索時には、たとえば metk ecoliというようにecoliを付けてください)

2010/07/03

光るオワンクラゲ

 以前のエントリーで鶴岡出張の際に加茂水族館にてオワンクラゲを見てきた件について記した(「オワンクラゲ」2009/1/10)。その続きとして、先日、慶應大学先端生命科学研究所に用事があって鶴岡を訪れた際に、再度加茂水族館を訪ねたのでその顛末を紹介したい。


 前回唐突に訪れた際、精製したGFPを差し上げたところたいへんに喜ばれ、ニュースになるくらいであったが、残念ながら館長さんに会うことはできなかった。その後、加茂水族館ではオワンクラゲと一緒にGFPタンパク質そのものを展示したり、館長さんからは直筆の手紙や著作をいただくなどしていたのでぜひとももう一度伺いたいと思っていたところ、再び慶應大学(鶴岡)に行く機会に恵まれ、再訪することができた。

 今回は事前に連絡を入れておいたので、村上館長に会うこともでき、一般のお客さんには非公開の「クラゲ研究所」に案内していただいたり、直々にクラゲ生育の苦労話を教えていただいたりと楽しい時間を過ごした。最後にはクラゲの絵柄入りネクタイやタイピンまでいただき、たいへん満足して水族館を後にした。

 前回訪れた際にはオワンクラゲは「光ってなかった」が、今回はブラックライトに照らされて美しく緑に光るクラゲを見ることができたのもうれしかった(下のきれいな写真は、同行した卒研生が撮してくれた)。


 なお、前回の鶴岡訪問のきっかけとなった慶應大学との共同研究は実を結び、シャペロニンGroELの細胞内基質タンパク質をきちんと決めることができた(Fujiwara et al, EMBO J. 2010 日本語での解説は「タンパク質の社会」の成果欄を参照)。

2010/06/27

「タンパク質の社会」国際会議(奈良、2010/9/13-9/16)

 事務局を仰せつかっている科研費特定領域「タンパク質の社会」の大イベントが今年開催される。奈良にて国際会議が開催されるのである。

 詳細は会議専用のウェブサイト(→こちら)をみていただきたいが、関連分野のトップサイエンティストが勢揃いである。刺激的なミーティングになるのはまちがいなく、今から楽しみだ。







 ちなみにポスターは業者に依頼して作ったのではなく全部自作である。早い段階で「とりあえず」作った(作らされた?)のがそのままアップデートされて出回っている。

2010/06/06

ニュースレター第5号発行

3月上旬に特定領域「タンパク質の社会」のニュースレター第5を発行した。


 5年間続く「タンパク質の社会」科研費特定領域(19-23年度)も折り返し点を過ぎ、今年度は9月に奈良で盛大に国際会議を開く。ということで、この号の表紙は奈良がモチーフである。

 編集はいつもぎりぎりのスケジュールであるが、今号は自分の異動とも重なったために発行が危ぶまれるほど(ほんとに)大変だったが、何とか年度内に発行できホッとしている。関係者のご協力に感謝いたします。

2010/04/05

東工大に移りました!

4月1日より東京工業大学に移りました(生命理工学研究科生体分子機能工学専攻・教授)。

 東大・新領域に移ってから6年半で母校に戻ってラボを主宰できることになり、気持ちも新たに張り切っていきたいと思います。

 東大からは野間さん、丹羽君も付いてきてくれることになり心強い限りですし、着任早々、東工大の卒研生4人が配属になりました。他にも野島君(京産大・吉田賢右研)も田口研に参加してくれることになっています。

 3月末にラボの引っ越しをしてまだ数日で段ボールだらけの中です。そんな中、研究室発足パーティーの前にメンバーみなが集まってセットアップ途中の各部屋や桜が咲く道の前で記念撮影を行いました。

 さらには、記念に残る写真にということでホワイトボードに何か書いてくれ、と言ったら、「田口研発足」という以外にも楽しい絵をいっぱい描いてくれました。左下の「婦人」は書いてくれた卒研生のもつ「シャペロン」のイメージだそうです。酵母、プリオン、フットボールもあります。何年かして何周年かのときにはまたちがった絵が描けるよう新しいことにもチャレンジしていきたいな、と思います。

2010/01/16

「柏キャンパスライフ」と富士山

 新領域のサイトを見ていたら、柏キャンパスにいる学生による「柏キャンパスライフ」のページがあることがわかった。
 キャンパス内のことだけでなく周辺のお店のことや住環境などけっこう細かく書かれているので、東大の柏キャンパスってどんなところ?って思っている方々はぜひどうぞ。

http://noc.k.u-tokyo.ac.jp/campuslife/

 また、これを読んでいる柏キャンパスにいる学生さん、この「柏キャンパスライフ」に柏での生活に関する記事・エッセイを書いて採用されると原稿料として3000円もらえるそうです(記事・エッセイ募集)。ぜひ寄稿してみてください。

ついでにぼくからの柏キャンパス情報を一つ。

 空気がきれいな日にキャンパス内から富士山が見えるのはご存じでしょうか。写真は夕陽が沈むころに、キャンパスの東の外れ(総合研究棟の前あたり)を歩いていて出くわした富士山のシルエット。携帯電話のカメラなんでイマイチですが、実際には見惚れるくらい美しい眺めでした。キャンパス内を東西に貫くメインストリート(図書館前を通る道路)の西の延長上(ローソンの看板とかぶる位置)に富士が見えます。

 ちなみに少し高いところからだと北東の方に筑波山が見えるのはキャンパスにいる多くの人がご存じだと思います。こちらは位置的には近い印象だからそれほど意外性はないかもしれません。

2010/01/03

Foldit: タンパク質フォールディングを実感できるゲーム

  ふと気になって「タンパク質 パズル」という検索をした。本サイトの記事は11位にランクインされたが、上位の10位まではすべてが「Foldit」というタンパク質フォールディングのゲームにリンクされていることが判明した。たとえば、こんな感じ。

タンパク質パズルで医療に貢献、米大学がゲーム開発
ワシントン大学は、時間のかかるコンピュータシミュレーションに人間の直感力を取り入れようとしている。
(ITmedia news 2008年05月09日)

本ソフトはブラウザー上で行うのではなくアプリケーションをダウンロードして実行する(Windows XP/Vista, Intel Mac, Linuxに対応)。オフラインでも遊べるが、基本はオンラインでデータを開発元のサーバとやりとりするようになっている。

Foldit http://fold.it/


 まずはイントロ的なパズルで練習を積んだ後に本格的なタンパク質のフォールディングを行うということになっている。実によくできていて、マウスでポリペプチドの側鎖や主鎖をつかんで動かしたりして遊びながら、フォールディングの基礎を学ぶことができる。例えば、側鎖同士が近すぎると立体的な反発が生ずるのでマイナス点、うまく離すと「Congratulations!」・・・。他にも、疎水側鎖を内側に隠すコアとか、主鎖を折り曲げてタンパク質内の隙間をなるべく小さくするとかイントロパズルで練習できる。

  開発者の中には、人工タンパク質のデザイン、フォールディング予測など計算によるタンパク質研究で飛ぶ鳥を落とす勢いのDavid Bakerが加わっている。サイトの解説によると右の図のようにBaker博士が専門家として「助言」もしてくれるようだ。




 さて、まだイントロ的なところを遊んでいるだけだが、サイエンスパズルと称する本丸はかなり本格的である。というより、今まさにBakerラボで予測している構造未知タンパク質がパズルとして出されているのである。そして、そこにこのゲームの目的がある。サイトの科学的背景のページから引用すると、

Foldit attempts to predict the structure of a protein by taking advantage of humans' puzzle-solving intuitions・・・.

ということで、人間のもつ「パズルを解く直感」をタンパク質の立体構造予測に使おうというもくろみだ。実際、BakerラボではRosettaというタンパク質構造予測アルゴリズムを使って構造予測をしているが、このFolditの位置づけはインタラクティブなRosettaというものらしい(このRosettaを個人のPCでも少しでも計算しようというのがRosetta@homeである。日本語解説有り)。
 とは言え、本番の問題はおそろしく難しそうだ。側鎖を良さそうな方に動かしたら別の相互作用に取って不都合が生じるという「あちらを立てればこちらが立たず」状態にすぐ陥る。すべての相互作用を矛盾なく(郷信広博士が最初に提唱した「consistency principle」)安定に仕上げるのは至難の業であるのがすぐにわかる。
 Rosettaで人の直感をどう使うのかはよくわからないが、このゲームが公開されてから1年くらいの間にコンピュータよりすぐれた結果を出した「直感」をもつ人が現れたのか気になる。

 ふだんタンパク質の立体構造は完成型を眺めるだけだが、このソフトでは自分でいじれるのが楽しい。

 オンラインで個人のPCのCPUを集めてフォールディングシミュレーションするものとしてはRosetta@homeよりもFolding@homeが知られているかもしれない。興味ある方はこちらもどうぞ。

2009/12/24

シャペロニン vs. F1-ATPase

タイトルはマジメ(?)だが、何のことはないケーキでの勝負である。

 恩師の吉田先生が昨年度末で東工大を退職ということで同窓会が催され、その会のメインイベントの一つとして出されたのがこれらのケーキ。同窓生有志(大阪大学・野地研の田端さん、上野さん、野地さんら)が事前にシフォンケーキからして手作りで作った大作だ(ぼくはアイディアは出して企画段階では関わったが、制作段階ではシャペロニンの方の生クリームを塗ったくらいです)。

 我らがシャペロニンGroELはGroESが一つ結合した弾丸型構造を模している(右上写真)。基質タンパク質と見立てるお菓子のヒモが少しはみ出ているのも意味深いのだが、それにはここでは触れない。


 一方、左に載せたF1-ATPaseはα3β3の6つのサブユニットの間に回転子γ(ガンマ)サブユニットと見立てるフランスパンが突っ立っている。

このF1-ATPaseにはとてつもない仕掛けがほどこされている。何とこの「γ」フランスパンが回転するのである。



 右の写真を見てもらおう。台座にモーターが仕込まれており、「γ」フランスパンと直結している。モーターには当然スイッチが付いているというわけだ。ご丁寧にスイッチは回転が切り替えられるようになっており、ATPの分解方向、合成方向が指一本で制御可能なハイテクだ。




 宴たけなわにて、このケーキたちの登場とあいなった。F1ケーキにはなんとジェット風船が装着されている。まさにF1-ATPaseの回転の可視化である。

 吉田先生によるスイッチオンでクライマックスに達し、集まった同窓生一同の度肝を抜いたのは言うまでもない。




 「回転」を実感してもらうという意味で、やはり動画を見せないことにはおさまらないであろう。(以下のリンクもしくは写真をクリック)


ということで勝敗はあっという間に決し、F1-ATPaseの圧勝である。

 いや、野地研の技術力にはおそれ入りました。おかげでぼくも含めて集まった皆がたいへん楽しめました。

(このネタ、いつか載せようと思いつつ半年以上経ってしまい鮮度が落ちてしまいました・・・)

以下 、おまけの制作風景です。GroELは円筒形のシフォンケーキなので空洞もきちんと空いている。フタのGroESはメロンパンである。




2009/12/23

フットボール型ケーキ

 かなり古い話題になってしまったが、今年のぼくの誕生日にラボでお祝いをしてもらった際、メンバーたちが二種類ケーキを作ってくれた。ケーキでお祝いしてくれるだけでもたいへんうれしいことだが、今回はさらにおまけがついた。なんと、研究テーマに関連した「かたち」にケーキを仕上げてくれたのである。

 一つはシャペロニンGroEL/ES複合体のフットボールを模したケーキ。真ん中の四角いところがGroELのダブルリングで、上下の三角がGroESである。ちなみにフットボール複合体は研究者によっては「Symmetric complex」ということもあるように上下で対称のかたちになっている。イメージを伝えてケーキ屋さんに加工してもらったということだ。




もう一つは一見ふつうのケーキのように見えるかもしれないが、中心に書かれているのは「出芽酵母」のつもりということだ。上が母細胞、下が娘細胞という出芽した状態の細胞で、星で現したプリオンタンパク質が母から娘へと流れ込むようすを示しているらしい。さらに言えば、星は量子ドット(Qdot)を意味している。この背景には、最近当研究室で行ったプリオンタンパク質にQdotを結合させて個別のプリオンタンパク質の動態を可視化する、という研究にインスパイアされた、ということだ。

このような楽しい企画を考えてくれたメンバーに感謝したい。

なお、この「シャペロニン」ケーキが、次に紹介する吉田研同窓会でのメインイベント「回転するF1ケーキ」につながったことを付記しておきたい。

2009/12/13

寄木細工の「プリオン」


箱根に行く機会があった。箱根の伝統工芸として寄木細工がよく知られている。とあるギフトショップにて発見したのが写真の寄木細工キーホルダー。何に見立てるかというと、プリオンである。

プリオンはタンパク質性の感染因子と定義されていて、概念を説明するときには下のような図を使っている。簡単に説明しておこう。

よく知られているクロイツフェルトヤコブ病、狂牛病などのプリオン病の研究から、タンパク質の立体構造の異常が増殖していく現象が見つかった。プリオンは、タンパク質(の異常構造)が自己増殖するという点でタンパク質科学の常識を破る概念であるが、今では出芽酵母などにも多数プリオン的な挙動をするタンパク質が発見されている。



この概念図の赤い矢印のような形で示したのがプリオンである。丸い緑の正常型が構造変換すると分子間で規則的に結合していき結果として線維状タンパク質となる。この線維(アミロイド線維)が伸びるときには方向性がある、という結果を以前示したこともあり(Inoue, Y., et al. J. Biol. Chem. 2001)、矢印でベクトルを示したわけである。

前置きが長くなったが、上で紹介した寄木細工のキーホルダーを見て、思わず「プリオンだ!」となったわけである。アミロイド研究者なら、これをアミロイドと見立てるかもしれない(実際、プリオンとアミロイドの境界は明確ではなく、最近の知見では「プリオン=増殖しやすいアミロイド」というようになってきている)。

みやげ物屋では寄木細工の仕掛け箱(箱に仕込まれている仕掛けを手順を踏んで解除しないと開かないようになった箱)の実演も楽しんだ。


2009/11/22

変性タンパク質もどき消しゴム?


海外に出かけるとネタが増える。

次に紹介するのはケンブリッジの博物館のショップで購入した消しゴム(だと思う)。

きれいな色がねじれているような硬めのゴムであまり自由にくねくねとはしないが、シャペロニンを模した幾何学玩具(8量体シャペロニンもどき)と組み合わせると、[ シャペロニンー変性タンパク質 ] 複合体と見立てることができる。


ちなみにそのケンブリッジの博物館ではダーウィン展が開かれていた。


2009/11/15

7量体リングのシャペロニン(GroEL)入手!

 1年ほど前のこの欄に「8量体シャペロニン?」と題した投稿をした。先日の海外出張の途中で自分の専門である7量体シャペロニン、つまり真正細菌型シャペロニン(GroEL)に類したおもちゃを見つけたのでここに紹介したい。

背景としては、シャペロニンは進化的に見て大きく二つ、真正細菌型GroELと真核細胞(グループ2)型CCTに分類される。CCTは8つの異なるサブユニットからなるリングが二つ重なったタンパク質で、以前紹介したのは「8量体もどき」であった。自分の専門はGroEL型であり、こちらは7量体(が重なったダブルリング構造)であるので実は「これが7つだったらなぁ・・・」と思っていたのが正直なところであった。


その想いが通じたのか、パリの街を歩いているときに露天商が売っているこのおもちゃを見て、「サブユニット」を数えたときにはうれしかった。7つだったからだ。
その露天商はその場で針金とペンチを使ってこれを組み上げていた。インドから来ているという彼いわく「一つ作るのに2時間かかる」、「これはインド発祥なのだ」とか。出来もいいので、迷わず価格交渉を行い、色違いを3つまとめて購入(GroELを研究しているメンバーへのおみやげとした)。そのインド人はなぜぼくが3つも購入したのか不思議だったかもしれない。



なお、最初に見つけた「8量体」の方がサイズが大きく、「7量体」は小さい。

こういうおもちゃやパズルはなぜか海外で見つかることが多いのが、少しさみしいような気もしないでもない。大きい方は日本の知育玩具のお店で見つけたものである。研究室の一般公開や講義の小道具にもうってつけの一品。シャペロン研究者ならぜひ入手してもらいたいものである。 (「パワーオーブ」で検索すると出てきます)

(一部、「タンパク質の社会」ニュースレターのコラムより抜粋)

2009/11/08

ニュースレター第4号発行

10月上旬に特定領域「タンパク質の社会」のニュースレター第4を発行した。


この号の表紙はこのブログを読んできた方には一目瞭然。シャペロニンのフットボール複合体である。特集は、手前味噌のGroEL特集。最近我々の研究を含めてGroELの作用機構について新しい知見が蓄積しているのでそれをまとめてみたのである。さらには、HorwichとHartlというシャペロニン分野の大物二人の間での論争の経緯なども紹介している。




他にもいつものように関連シンポジウムなどのレポート、海外留学記なども載せてある。読みたい方は事務局(protein.community@gmail.com)まで連絡をください。ウェブ版PDFのパスワードを教えます(もしくは発送リストに載せます)。

2009/08/25

eSOL: 大腸菌全タンパク質可溶性データベース


シャペロンがない状態で大腸菌の全タンパク質(4000種類強)を個別に試験管内で合成して、凝集体になりやすいかどうかを網羅的に調べた(Niwa, T. et al., PNAS 2009 → pdf)。この結果はベーシックなタンパク質科学としてたいへんに興味深い知見(タンパク質には凝集になりやすい集団とそうでない集団の二つに分かれる、などなど)があったのも重要だが、実用的な意味でも今後貴重なリソースになると考えている。実際、バイオインフォマティクスの研究者を中心に予想以上に反響があって、うれしい限りである。

ただ、論文では統計的にしか結果を示していないので、個々のタンパク質が溶けやすいのか、凝集になりやすいのかは論文を見ただけではわからない。
そのようなこともあって、国立遺伝学研究所の専門家にウェブで検索可能なデータベースを構築してもらうことになり、既に公開されているのでここでも紹介しておきたい。
 
eSOL (Solubility database of all E. coli proteins)
http://www.tanpaku.org/tp-esol/

みなさんぜひお使いください。
使い勝手などで要望などありましたら、どうぞお気軽にコメントをお寄せください。

2009/03/30

ニュースレター第3号

 3月末に特定領域のニュースレター第3号を発行した。


 この号の目玉はHartl博士のインタビューである。HartlはシャペロニンGroEL研究を牽引するだけでなく、今ではシャペロン関連の分野のリーダーの一人でもある。インタビューは神戸で開催された分生・生化学会合同年会に彼が特別講演者の一人として招待されたのを機に行った。はじめてのインタビューで事前に質問などある程度は準備したが、実際に始まるとそれどころではないことがわかった・・・。同行してくれた名大の遠藤斗志也さんにもずいぶんと助けてもらって何とかこなせた、というのが実感である。本当はもっといろいろと話を聞いたのだが、割愛した部分も多々ある。さらには、もっと突っ込んだことを聞きたくもあったのだが、流れというのが一回できると関係ないことを聞くのは難しいものである。

 他にも領域班会議や関連シンポジウムなどのレポートが満載である。読みたい方は事務局(protein.community@gmail.com)まで連絡をください(と言ってもぼくのところに届くわけですが)。ウェブ版PDFのパスワードを教えます(もしくは発送リストに載せます)。

2009/03/29

地図合わせパズル


 以下で少し珍しい色合わせパズルを紹介した。そのときに一緒に購入したのがこの地球儀型パズルである。

 地球儀に切れ目が見えると思うが、そこの一部がルービックキューブのように回転するようになっていて、配置が崩れて元に戻すという代物だ。

 表面は紙で、動きはぎこちない。なので、あまり動かしすぎると表面がすぐにはがれてきそうで今のところ元の地球の配置のままである。

 なお、この地球儀パズルも含めて、下のレインボーキューブや「光学異性」ペン、その他を購入していた近所の店が3月で閉店するということでかなり残念。この地球儀パズルとレインボーキューブは前から店にあることは知ってはいたが、そうやって見ている人ばかり多かったのかもしれない。他にも見ていてほれぼれとする芸術品の積み木(たとえばネフ社)などを置いていたが、かなり高かったからなぁ。

レインボーキューブ

 80年代初頭に一世を風靡したルービックキューブがまた息を吹き返し、その流れを汲むパズルが多数世に出回っている。

 ここで紹介するのはその一つで名前はレインボーキューブ。フォールディングというわけではないが、カラフルで美しいので思わず購入した。

 説明書によると「理化学研究所が結晶構造をモデルとして開発した色合わせパズル。他の色合わせパズルとの大きなちがいは回転軸が4本あることです」ということでである。

難しく言うと「面心立方最密充填構造」というらしく、この構造をとる金や銀などがやわらかくて延伸性があって加工しやすいのは滑り面が多いかららしい。

 がちゃがちゃ動かしてばらばらの色にしたのが下の写真。
ランダムになったらなったでかなり美しい・・・ので直す気にならない??

研究室ジグソーパズル


 研究室の送別会にて卒業生たちが送ってくれたのがこのジグソーパズルだった。
卒業生のみなさん、たいへんお疲れさまでした。

 ばらしてからくみ上げるのがパズルにとって本望だろうが、ばらしてだれかの顔のピースがなくなったら・・・と思うとこのまま飾っておくしかないかな。

真ん中上あたりに見えるケーキについては別欄にてあらためて紹介したい。

2009/03/28

どこで見つけるの?


 フォールディングでもシャペロンでもプリオンでもない(笑)が、単に見ていて気に入ったので買った木のおもちゃ。

 これを買ったのは先日行った神戸市某区での科研費特定領域の会議の後である。その会議にてある方が、「ホームページにいろんなパズルやら何やら載せているが、どこで調達するのか?」と質問してくれた。「どこと決まっているわけではないけど、最近は近所の知育玩具のお店ですかね・・・」なんて話していた翌日の帰り道にこの亀?のおもちゃと下のポリペプチドもどきを買った。ちなみにTさん、駅のすぐ横の売店です。

 この亀さんは実は静止画だと良さがフルには伝わらない一品である。動かすと上に乗っかっているカラフルな玉が一緒に回りとてもキレイというかかわいいのだ。いつか思いだしたら、動画を撮ってアップしたい。

フォールディングパズル再び

 以下で似たようなのをいくつか紹介しているが、ポリペプチド鎖のようなおもちゃを見つけたので紹介。

材質は木。あまり自由度はないし、16個しかつながっていない。短いのでペプチドレベルというべきか。




2009/02/20

「分子シャペロンの基礎」がオンラインで読める

 もうかれこれ10年近く前だが、東工大時代に吉田先生と一緒に「分子シャペロンの基礎」という総説を「分子シャペロンによる細胞機能制御」(2001、シュプリンガーフェアラーク)に書いた。この内容は吉田賢右研究室ウェブサイト(現・京都産業大学)のシャペロンの解説記事の元ネタであるが、「原典」の3分の2程度がオンラインで読めることが判明した(→こちら)。Googleに「ブック検索」というコーナーがあり、そこで引っ掛かってきたのだ。基本的にはプレビューということだが、この総説の肝心なところは幸いカバーされているので、これを読んでいる「シャペロンって何」って思っている方々はぜひ読んでください。

 この総説はシャペロン入門とでも言うべきもので、「教授」が研究室見学に来た「学生」にシャペロンとは何かを対話形式で説明していくというスタイルである。その二人以外にも研究室の「院生」がちゃちゃを入れながら話が進んでいくのだが、この対話形式は話の展開がしやすくてなかなか書きやすかったのを覚えているし、かなり好評を博した(主に同業者間ですが・・・)。ほんとうは新たに書き直した「シャペロンの基礎2009」みたいなのを作りたいが、なかなか余裕がないのが残念・・・。

2009/01/10

オワンクラゲ

 GFPについて11/6に少し書いて、それは次のネタへの伏線・・・と書いた後、更新をさぼっていた。


 GFPがオワンクラゲ由来であることはノーベル賞受賞の下村博士のおかげで多くの一般の人にまで知られるようになった。しかし、実際にそのクラゲを見たことがある人は少ない、というよりほとんどいないだろう。そもそもオワンクラゲを見ることができる場所がほとんどない。

 日本で見ることができるのは、山形県鶴岡市の加茂水族館である。加茂水族館はそれほど大きな水族館ではないが、クラゲの展示数が世界一多いことで知られている。
 で、先日(と言ってももう10月下旬)、慶応大学の鶴岡キャンパス(山形県)に共同研究で行く用事があったので、そのついでに加茂水族館に立ち寄ってきた。オワンクラゲを一目見たいと思ったのだ。
 
 30種類以上のクラゲが展示されているとあって、クラゲの展示は圧巻である。オワンクラゲの展示に到達する前に種々の美しい
クラゲがゆらりゆらりと動く姿に見とれて歩いていくとオワンクラゲがいた。展示自体は他の水槽と同じ大きさで特別扱いはなかったが、説明には下村博士のノーベル賞受賞について触れられていた。
 クラゲ全般に言えるのだが、ゆったり動くさまを見ていると実に癒やされるのでデジカメ動画も載せることにします。


 他に展示されているクラゲ全体を見渡すと、オワンクラゲは割と地味かな、というのが第一印象だ。例えば、ツリガネクラゲなど見ていて飽きないほどである。タコクラゲもおもしろい。
 




 


 以下は余談。

 ぼくの研究室では以前より精製したGFPをときおり扱ってい
て、このサイトでも写真で試験管に入った緑に光るGFPを紹介し
ている。加茂水族館に立ち寄る数日前には大学の一般公開があり、そこでGFPを見せたところだったこともあり、このGFPを加茂水族館に寄贈してきた。水族館の方々はオワンクラゲは見慣れていてもノーベル賞のGFPは見たことがないだろう、と思ったからだ。突然の訪問で特に連絡をしていたわけではなく、受付の方に名刺と共にGFPの入ったチューブを数本託してすぐに帰ったのだが、ほどなく、館長さんより直々に電話をいただいた。館長さんにはたいへん感激していただき、寄贈したGFPは、すぐに水族館に展示されたそうだ。この寄贈GFPの話しはニュースにもなったということで面はゆいが多くの方に美しいGFPを生で見てもらえてうれしい限りである。

 
おまけとしては、この水族館はクラゲを最大の売りにしていておみ
やげもクラゲグッズが充実しているし、さらには、クラゲ料理も多数準備されている。その名もクラゲレストラン! 行った時間はお昼を食べたあとで、しかもあまり時間がなかったので何も食べなかったが、次に行くことがあったら、海月(くらげ)ラーメン、クラゲ定食、クラゲアイスをぜひ食してみよう。