2009/01/10

オワンクラゲ

 GFPについて11/6に少し書いて、それは次のネタへの伏線・・・と書いた後、更新をさぼっていた。


 GFPがオワンクラゲ由来であることはノーベル賞受賞の下村博士のおかげで多くの一般の人にまで知られるようになった。しかし、実際にそのクラゲを見たことがある人は少ない、というよりほとんどいないだろう。そもそもオワンクラゲを見ることができる場所がほとんどない。

 日本で見ることができるのは、山形県鶴岡市の加茂水族館である。加茂水族館はそれほど大きな水族館ではないが、クラゲの展示数が世界一多いことで知られている。
 で、先日(と言ってももう10月下旬)、慶応大学の鶴岡キャンパス(山形県)に共同研究で行く用事があったので、そのついでに加茂水族館に立ち寄ってきた。オワンクラゲを一目見たいと思ったのだ。
 
 30種類以上のクラゲが展示されているとあって、クラゲの展示は圧巻である。オワンクラゲの展示に到達する前に種々の美しい
クラゲがゆらりゆらりと動く姿に見とれて歩いていくとオワンクラゲがいた。展示自体は他の水槽と同じ大きさで特別扱いはなかったが、説明には下村博士のノーベル賞受賞について触れられていた。
 クラゲ全般に言えるのだが、ゆったり動くさまを見ていると実に癒やされるのでデジカメ動画も載せることにします。


 他に展示されているクラゲ全体を見渡すと、オワンクラゲは割と地味かな、というのが第一印象だ。例えば、ツリガネクラゲなど見ていて飽きないほどである。タコクラゲもおもしろい。
 




 


 以下は余談。

 ぼくの研究室では以前より精製したGFPをときおり扱ってい
て、このサイトでも写真で試験管に入った緑に光るGFPを紹介し
ている。加茂水族館に立ち寄る数日前には大学の一般公開があり、そこでGFPを見せたところだったこともあり、このGFPを加茂水族館に寄贈してきた。水族館の方々はオワンクラゲは見慣れていてもノーベル賞のGFPは見たことがないだろう、と思ったからだ。突然の訪問で特に連絡をしていたわけではなく、受付の方に名刺と共にGFPの入ったチューブを数本託してすぐに帰ったのだが、ほどなく、館長さんより直々に電話をいただいた。館長さんにはたいへん感激していただき、寄贈したGFPは、すぐに水族館に展示されたそうだ。この寄贈GFPの話しはニュースにもなったということで面はゆいが多くの方に美しいGFPを生で見てもらえてうれしい限りである。

 
おまけとしては、この水族館はクラゲを最大の売りにしていておみ
やげもクラゲグッズが充実しているし、さらには、クラゲ料理も多数準備されている。その名もクラゲレストラン! 行った時間はお昼を食べたあとで、しかもあまり時間がなかったので何も食べなかったが、次に行くことがあったら、海月(くらげ)ラーメン、クラゲ定食、クラゲアイスをぜひ食してみよう。




2009/01/03

光学異性ペン(左利き用ペン)


 ウェブだけ読んでいる人には知るよしもないが、根っからの左利きである。左利きの人でも、字を書いたり、箸を持つのは右、という人が少なくないが、ぼくはどちらも左だ。

 左利き関連の本やグッズにはふだんから興味ある。いっとき、左利きは早死にする、なんて説がきちんとした学術論文として載ったりしたが、そんな話題にもアンテナを張ってはいる(早死説は気になるところだが、反論もあるようだ。ちなみに、早死説の理由は、左利きはいろんなところでストレスがあったり、事故に遭う確率が高い、ということらしい)。あと、教員として試験監督を行うことがたまにあるが、そんなときに秘かに行っているのは左利き調査だったりする。最近は少しは多くなったのかと思いきや、せいぜい5%というところだろうか。



 前置きはこのくらいにして、ここに紹介するのは左利き用のペンである。ふつうのペンや鉛筆には左も右もないが、こいつは少し凝っていて、人差し指と親指がはまる位置にくぼみがあり、それが左利き用と右利き用を分けている。鏡に写すと右利き用のになるということで、有機化学で言うところの「光学異性」というわけだ。

 ペンの写真だけでは少しわかりにくいかもしれないので実際にペンを持った写真を載せてみる。左で持ったときにはくぼみがピタッとはまるのがわかるだろうか。それに対して、右手で持ったときの写真では人差し指はくぼみにはまっているが、親指がはまっていない。

 書き心地はまずまずかな。少し太めなのでサインを書くようなときにちょうどよい感じだ。 デザインや色合いも秀逸で、最初はそこにピンと来て手に取ってみようとしたら左利きと右利き用があるということに気付いた。ちなみにドイツ製(stabilo.com)。


 左利きグッズで思い出すのは、学生時代に初めて行ったアメリカで、左利き専門のお店をたまたま見つけたときのことだ。こんな店があるんだ、とうれしくなり、小さい店だがくまなく楽しませてもらった。欧米には左利きの人が多いから(というより矯正されないからだと思うが)マーケットとして成り立つのだろうか。  そこでは、左利き用ハサミなるものを購入した。ハサミの刃の付き方も「光学異性」の関係にある。他にもナイフなんかに左だと切りにくいものがあったり、お茶を入れる際の急須も左ではまともに使えない代物だったりするのは右利きの人には知らない世界だろう。

 さて、良い物を買った、と帰国して使ってみたところ・・・、なんとまっすぐに切れない、のだ。左利き用なのに何事か、と思って考察した結果は次のようなものだ。 本来なら使いにくいはずの右利き用の道具なのだが、それに順応してしまっているので、左利き用でもふつうの右利き用の手の動きをしてしまってうまく切れない。

 何とも面倒なことだ。 左利き用ハサミは以来全然使っていない・・・。

 





2008/11/29

Switch Pitch :瞬時の構造転換

 若きシャペロニン研究者より構造変換をする興味深いおもちゃを教えてもらったので紹介したい。

スイッチピッチというもので、放り上げたりしたあとに色がすべて入れ替わる。右の写真では緑が前面になっていて裏にオレンジが見えているが、放り上げて落ちてくる間にオレンジが表に出てくる、という不思議な仕掛けのおもちゃで、一瞬手品のようでもある。


 非常に動的な変換だから写真ではなかなかわかりにくいのでユーチューブ(たとえばココ)や開発元(hoberman.com)での動画やアニメを見るとおもしろさが伝わると思う。構造転換のメカニズム(要はからくり)は、遷移状態(途中の状態)や分解産物を紹介したサイトや仕組みを解説してくれているサイトにくわしい。シンプルな作りながらとてつもなく巧妙なものである。

 ふつうの水溶性の球状タンパク質では、ごく大ざっぱに言ってしまえば親水的なアミノ酸が表面に出やすく、内部は疎水的(水に溶けにくい)アミノ酸が多くなっていて、このおもちゃが模式的にはぴったりである。
 ただ、この親水ー疎水の関係が一瞬で逆転してしまうという現象はタンパク質の世界ではさすがに見あたらないように思う。プリオンでの構造転換は少し似ているようにも最初は思ったが、このおもちゃは「自発的?」に構造転換するという点で、構造転換を促す相手(異常型構造)を必要とするプリオンとはちがうのだ。

 このおもちゃのように「自発的」に瞬時に構造転換するタンパク質があるとどうなるだろう。表面が親水から疎水に変わるのだから水溶液中では不安定ですぐに凝集を作っておしまい、ということになるだろう。

2008/11/06

GFP

 緑に光るタンパク質、GFPが今年度のノーベル賞の対象になって早一ヶ月が過ぎた。そう、アメリカ在住の下村博士がオワンクラゲから発見した自ら蛍光を発するタンパク質である。


 GFPは生命科学の研究者なら知らない人はまずいない、というほど使われているタンパク質だ。そのためにノーベル賞が授与されたわけだが、精製したGFPタンパク質を実際に目の前で見たことがある人は意外と少ないのではないか。たいがいは、細胞の中で興味のある遺伝子にGFP遺伝子をつなげて光らせ蛍光顕微鏡で光っているのを見る、という研究だと思う。

 うちのラボでも蛍光顕微鏡で細胞内でGFPが光るのを見てもいるが、大腸菌でGFPを作らせたあとに精製したピュアなGFPも使う。シャペロニンの基質として使ったりするのだ。自ら光るGFPは、精製して濃いのを目の当たりにすると実に美しい。ついでに言えば精製もクロマトグラフィーの樹脂の中で光っているので簡単である。

実物を見せるだけでも魅せられるほど美しいし、種々のデモ実験でも大活躍する。タンパク質として「かたち」を保っていないと光らないので、タンパク質のかたちが壊れる変性やかたちが元に戻るフォールディング(折りたたみ)を直接見てもらうことができる。そのデモ実験の動画はひっそりと自分のサイトに置いてあるので興味のある方はぜひ見てみてください。

これをきっかけにタンパク質(の研究)のことに興味を持ってくれる人が増えればうれしいものである。

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ということでこの話題は次回に続く、というか次のネタへの伏線である、というかそのネタの背景を書いていたら長くなったのでここでいったん投稿してしまおう。






2008/11/02

ノットパズル

 春にアメリカに行ったときに買ったパズルを出していなかった。写真のようにいくつかのパーツが組み上がったもので、「KNOT(結び目)」ということである。

 かたちが組み上がった状態で売っていたので、自分で少しいじってばらそうとしたが、かなり時間がかかりそうなのであきらめて、そのまま研究室のお茶部屋に放出。


     しばらくするとバラバラになっていた。お見事。



 が、そのあと組み上げには誰も成功しなかった・・・。

買うときの宣伝文句には、確か「most difficult・・・」と書いてあったが、確かにその通り。


 実は答えの冊子が付いていてばらすのも組み立てるのも同じ経路。
 ばらし方を覚えていれば組み立てられるはずだが、がちゃがちゃやっていたらバラバラになった、ということだとふつうは覚えていないものだ。


 このパズルはノット(結び目)ということであるが、実際には一本のヒモで結び目を作っているわけではない。 本欄の趣旨である研究の余談としては、「では、ヒモからなるタンパク質では結び目なんてありえるの?」と思う人がいるかもしれない。タンパク質でも結び目をもつものはあります。ついでに言えば、環状(つまり輪っか)もありえる。このような珍しいトポロジーについてはいずれ別のコラムにするつもりです。


 ちなみにこのパズルの購入先は、ニューヨークのMOMAショップ。パズル屋さんではなく、一種のセレクトショップで、デザインのよいものがいっぱいなので見ているだけで楽しめます。


2008/10/26

ニュースレター第2号発行

科研費特定領域「タンパク質の社会」ニュースレター第2号を10月はじめに発行しました。


領域ウェブサイトに置いてあるpdfのパスワードを解除してご覧になりたい方はご連絡いただければパスワードをお知らせします。一回わかると第1号、今後の号のpdfも開けるようになります。

巻頭記事はミトコンドリア研究の大御所であるSchatz博士のインタビュー記事です(インタビュアーは遠藤斗志也代表)。表紙に見える絵は伝説の生化学者Rackerが描いたポスドク時代のSchatz博士の肖像画です。



2008/10/25

岩波新書「タンパク質の一生」

 ぼくの研究テーマを大きく言えば「タンパク質の一生」を支える分子シャペロンを研究する、というものである。プリオンの研究も、「タンパク質の一生」の中の困った一面という捉え方に入ってくるものである。

 この「タンパク質の一生」という概念をわかりやすく解説するための研究者向けの書籍はそれなりに出ていて、ぼくも何編か書いたりしているが、研究に縁があまりないような一般の読者に向けてのものはこれまでなかった。そこに出たのが紹介するこの本である。永田和宏さんが書いた力作だ。

以下は、「タンパク質の社会」ニュースレターにぼくが書いた書評である(若干改変)。

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 朝日新聞の日曜の書評欄を毎週楽しみにしているが、先日紙面を開いて永田さんの写真が目の前に現れて驚いた。この岩波新書が「著者に会いたい」というコーナーで取り上げられていたのだ。

 かように本書の刊行は、研究にそれほどなじみのない一般の方々への「タンパク質の一生」の浸透に大きく役立つに違いない。生命科学、タンパク質に興味のある人たちだけにとどまらず、歌人としても知られる著者が執筆したということで手に取る人も多いようである。実際、朝日歌壇において、本書を引用した短歌が(著者以外の選者により)採択されていた。

 内容は、このニュースレターを読んでいる多くの方にはなじみの深いものであろう。章立てを見ると、「タンパク質の住む世界」、「誕生」、「成長」、「輸送」、「輪廻転生」、「タンパク質の品質管理」、と、本領域で必須の項目がもれなく並んでいる。ただ、最初の2つの章は、生命科学にふだん触れていない方のために、「一生」の一部という形式を取りながら、実際には、分子生物学、細胞生物学の基本についてコンパクトにまとめた内容にもなっている。

 「タンパク質の一生」分野の全体像を簡単に知りたい分野外の研究者にもうってつけの本であるが、当該分野のプロでも読む価値は十二分にある。研究者向けの本にはふつうは書かない著者の主観的な記述が随所に読めるのがうれしい。また、縦書きが新鮮だ。長らくGroELの研究に携わっているが、縦書きで書かれる「 G r o E L 」の作用機構を読むと新たな気持ちになった。
 評者自身のことで言うと、学部生の講義などで自分の研究についての参考文献を紹介したいと思っても、なかなか適切なものがなかったが(関連書籍はいくつもあるが、数千円もする本は気が引ける)、岩波新書ということで気軽に推薦できるのはありがたい。

 さらに言えば、「タンパク質の一生」の研究の拡がりを反映して、本書の内容は実に多岐にわたる。当然、用語も多数出てくるのだが、本書には用語集のようなものや索引はない。そのような際には、「キーワード:蛋白質の一生」を手元に置いていただければ完璧であろう(と、「気が引ける」方の編者の一人として宣伝・・・)。
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これを読んでいる学部生やこの分野に興味のある研究者の方などはぜひどうぞ。

ついでに、amazon.comでのこの本へのレビューや「この商品を買った人はこんな商品も買っています」もなかなかおもしろいです(こちら)。

2008/08/29

Good News for Football Fans

 小池さんと行ったGroELに関する論文がJBCに採択されたと同時に、JBC Papers of The Weekにも選ばれた。JBC Papers of the Weekは、その号のトップ1%の論文が選ばれるということでたいへん栄誉なものだ。レフェリーたちの評価がよほどよかったのだな、と思われる。

 内容を簡単に書くと、現在流布しているシャペロニンGroELの作用機構に異を唱えるものだ。ごく大ざっぱに言うと、GroELの反応サイクルのモデルを確立するのに用いられた過去の重要な実験に不備があった、ということになる。具体的には、Horwichらが使った超重要なGroEL変異体(D398A)では、ATP存在下でGroESが片側にしか結合しないという「弾丸型」の前提で実験をしているのだが、そうではなくGroELダブルリングの両側に結合して「フットボール」になっている、ということを小池論文では明確に示した。(さらなる詳細は「タンパク質の社会」のサイトに書いた解説記事を参照)

 この号のJBCには一緒に出した船津さんたちの論文もJBC Papers of the Weekに選ばれている(Sameshima et al.)。船津さんたちはFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を使って、野生型のGroELでもATP存在下の定常状態でフットボール複合体が弾丸型複合体と同程度できていることをきちんと示した。

 以前にも少し書いたが、シャペロニンの研究の流れで「フットボール」か「弾丸」かは古い論争である。熱い論争のあと、現在では「フットボール」はほぼ顧みられなくなっていたが、我々のと船津さんたちの論文により、古くて新しい論争になることを期待したい。
 なお、Papers of The Weekに選ばれると編集部の誰かが紹介文を書いてくれる。そのタイトルは「Good News for Football Fans」。なかなか良いタイトルを付けてくれた。レフェリーも隠れフットボールファンだったのだろう。

 また、こういった海外のジャーナルでは珍しく著者紹介も載る(数ヶ月前からのようだ)。JBCからの最初の連絡では、筆頭著者と責任著者の二人分原稿を準備してくれ、ということで小池さんのだけでなく自分のも書いて送ったが、いざふたを開けてみるとぼくのは載っていなかった。もう日の目を見ることがない文章なのでここに紹介します
(さらに言えば、表紙も打診されたので小池さんと一緒に作成して応募したが、不採択。そちらはいつかどこかで出せるかもしれないのでここには載せない)。

Hideki Taguchi

Current Position: Associate Professor of Department of Medical Genome Sciences at Graduate school of Frontier Sciences at the University of Tokyo.

Education: Ph.D. in Biochemical science (1993) from Tokyo Institute of Technology (Japan)

Non-scientific Interests: Travel, especially walking around (old) towns.

After one year of organic synthesis research, I started graduate studies in the Department of Biochemical Science at Tokyo Institute of Technology. Dr. Masasuke Yoshida was my supervisor of graduate studies, and we still collaborate on some of my current projects. Although I did not know anything about biochemistry, he suggested a new project for the graduate theme, the elucidation of the molecular mechanisms of heat shock proteins. Therefore, I purified the chaperonin GroEL/ES complex from a thermophilic bacterium and published my first paper (JBC, 266, 22411-22418, 1991). In the paper, we observed the shape of the GroEL/ES complex by electron microscopy and named the complexes "football" and "bullet", based on their shapes. Thus, the current paper dealing with the football and bullet not only goes back to my classic work, but also starts to unravel novel aspects of the GroEL chaperonin machine. Although almost two decades have passed after since I first met the double-ringed protein complex, I am still fascinated by the rings.

2008/08/25

狂牛病の実体?

 最近、このサイトの更新を楽しみにしています、ということを何人かに言われたので、温存(?)しておいたネタを蔵出ししよう。


 まず紹介するのは、春にCold Spring Harbor Laboratoryに行った際に買ったプリオンならぬ「狂牛病」である。右のプラスチックにあるようにMad CowとかBSEだとか何やら物騒だが、中味は小さなぬいぐるみ(というのかな。10センチに満たないくらいの大きさ)が入っている。

 これがプリオンとなったタンパク質、ということである。容器の裏側には「Facts」としてプリオンや狂牛病のことがそれなりにきちんと書いてあったりもする。

 ちなみに実サイズの1,000,000倍と書いてあるので、10cmとして10nm。プリオン線維としてもちょっと小さすぎるような気もするがご愛敬か。

 その研究所のショップにはプリオンだけでなくいろんな微生物のおみやげが置いてあった。大腸菌とか酵母とか・・・。この記事を書くにあたりプラ容器に書いてあったサイト(giantmicrobes.com)を見てみたら、かなりいろんな「微生物」を販売している。けっこうマニアックな品揃えでネット販売もしているようだが、日本では直接は売ってないみたい。

 少し話変わって、これを書く一週間ほど前に、「もやしもん」という漫画がちまたで人気があることをはじめて知った。テレビアニメにもなっているらしいのに全然知らなかった・・・。サイトによると、顕微鏡など使わなくても菌が「見える」農学部生が主人公らしく、さまざまな菌のキャラクターがいっぱいである。giantmicrobesと通じるものがあるかもしれない。

 

8量体シャペロニン?

 東大柏キャンパスのそばには本屋がない、と嘆いていたのだが、つくばエクスプレスの最寄り駅にできた複合施設には大型本屋ができて状況はよくなった。 その本屋のすぐそばに少し凝った文房具や玩具を売っている店があり、何気なくのぞいていて見つけたのがこのおもちゃである。




 右の写真のような形で展示していて、すぐに「シャペロニンだ!」と飛びつき、次の瞬間には輪がいくつ並んでいるか数えてしまった。左下のように折って平べったくするとわかりやすいが、8つの輪が並んでいる。自分で研究しているシャペロニンGroELは7量体のリングなのでちょっとちがうが、まぁいい。実際、真核細胞のシャペロニンは8つのサブユニットから成り立っている。





 ドイツ製というこのおもちゃ、いろんな形に折れ曲がる。用途はよくわからないが、手でもてあそぶ、という代物かな。中にフォールディングしたタンパク質ということで別のパズルを入れてみたりしたのが右下図。このパズルの紹介は次回のお楽しみです。

2008/06/15

サンフランシスコ・シャペロン

卒業した院生がアメリカに旅行に行った後、おみやげとして写真の小冊子をくれた。

「サンフランシスコ・シャペロン」

この冊子は、ウェブサイトchaperon.com(実にいいURLだ)によると「サンフランシスコをご旅行される方々がより楽しく、安心してお過ごし頂けます様に、現地で役に立つ情報を満載して無料で発行している観光ガイドブックです」というものである。

シャペロン屋のぼくとしては、気の利いたうれしいおみやげである。ただ、もらった瞬間、これを見るのがはじめてではないことにすぐ気付いた。ぼくが修士2年のときにはじめて海外の地を踏んだ記念すべき街、サンフランシスコで発見し、「シャペロン」ってこういう使い方もするんだなぁ、と思った記憶がある。

この「シャペロン」、さまざまなニーズをもつ旅行者(基質タンパク質に相当?)が惑わないように多種多様な情報を提供して満足してもらう(フォールディング完了?)、ということである。さらには、日本語版もあり(写真がそうです)、何とも親切でマルチリンガルなシャペロンだ。おまけに無料(ATPのようなエネルギーがいらない?)。 サンフランシスコを訪ねる方はぜひ入手してください。

そういえば、サンフランシスコにはシャペロン業界の若き超大物がいるなぁ、とふと思った。あ、あとプリオンの名付け親であるあのお方も忘れてはいけない・・・。

2008/06/08

弾丸 vs フットボール

自分のサイト用のfaviconを作ってみた。

と書いても、faviconとは何かを知らない人の方が多いだろう。
ぼくもつい最近まで名称は知らなかった。このサイトではブラウザーの
住所(URL)のhttp://・・と表示される部分の左端に出るサイトを象徴するロゴマークみたいなものである。

このブログのページでは固定されているが、自分のページのものでは割と簡単に変えられる。かなり小さい絵しか使えないので何を意味しているのかわからないかもしれないので、ここで大きく載せてみた。

オレンジ色のシャペロニンGroEL/ES複合体の中で緑の丸で示されたGFP(緑色蛍光蛋白質)が光っているようすである。パワーポイントのスライドで使っていたものを切り抜いただけだ。

このfaviconでは、GroELの片側にGroESが結合していて、そのGroELリング(cisリング)でGFPが光っている。実際にこういう3者複合体ができることがわかっているし、GFPを使った実験もいくつか行っている(例えば、Taguchi, et al., J. Biol. Chem. 2004など)。

最近出てきた自分たちの結果からは、実はこのように片側のリングだけではなく、フタのGroESが両側に付くフットボール型複合体モデルの方がいいのであるが、フットボールだとfaviconには収まりがわるい(けど、思い立って代えるかも)。

ちなみに、片側にGroESが付いたGroEL/ES複合体は、電顕での形から「弾丸型」、GroESが両側に付いたのは「フットボール型」という(最初にこの用語を使い出したのはぼくの実質的な最初の論文、JBC1991である)。弾丸かフットボール、どちらがシャペロニンの作用機構で重要なのかはGroEL業界では実は古い話題で、1990年代中頃にはかなり熱い論争が繰り広げられた。その経緯は研究者の人間臭いドラマも含んでおり、説明しだすと軽く2時間くらいはかかるであろう。1999年頃には基本的に「弾丸型」の勝利、ということで終息していた。が、最近の自分たちの研究は再び「フットボール」を支持する内容である。

弾丸かフットボールかはマニアックな話しであり、シャペロン業界でも他の分野の人は、「そんなのどっちでもいいやん」ということである(つい最近のアメリカでも某教授に言われた)。ただ、シャペロニン業界ではこだわりがあるのだ。

その意味づけはまたどこかで・・・。



2008/05/28

「一つくらいは究めてみる」

 先日、と言ってももう数ヶ月も前だが、ずいぶん久しぶりに母校の東工大すずかけ台キャンパスに行って、話をしてきた。さまざまな道に進んでいる生命理工学部の卒業生を呼んでの「ようこそ先輩」イベント(G-COE主催)に呼ばれたのだ。正確に言えば、ぼくは生命理工学部出身ではなく、その前身の専攻の修了なのだが、まぁそれでもいいよ、ということで話をさせてもらった。

 大学院生くらいの若い人たちに、何かメッセージを、という主催者側の要望なので、研究の話だけをするわけにはいかない。さて、どうしたものかと、ずいぶんと悩んだが、自分の大学院時代のことを思いだして、「一つくらいは究めてみる」というタイトルで話すことにした。慣れない内容を話すのは得意ではないが、会場には知った顔も多く、リラックスして好き勝手話したと思う。

 話の概要を東工大生命理工の同窓会ニュースレターに書いたので、興味のある方は以下からダウンロードしてみてください。p6です。ちなみに、そこに提供した写真は、もう20年近くも前、ぼくが修士のころのスナップ写真です。

東工大生命理工サイト 同窓会ニュースレターVol. 10 (pdf, 2.8MB)

2008/05/14

ニュースレターを発行


 特定領域研究「タンパク質の社会」のニュースレターの編集を終えて3月半ばに発行した。冊子名は「Protein Community」である。
 ホッとしたのもつかの間、年2号発行予定なので、もう次の原稿を集めなければならない・・・。

 編集長として、原稿を依頼してみなさんに書いていただくのはもちろんのこと、空スペースを埋めるためにかなり多量にコラムやエッセイを書いた。研究室の学生にもずいぶんと助けてもらった(文字通り、からだを張って協力してくれた学生も・・・)。

 今思うに、書いたコラム記事の多くは本来ならこのブログに載せるようなものばかりだなぁ。

 ということで思ったのが、このブログをもう少ししっかり書いていって、その中から適当にピックアップしてニュースレターのコラム欄に載せるのが楽でいいのでは、というものである。このブログの読者とニュースレターの発送リストはほとんどかぶっていない(というか、このブログの読者ってどのくらいなんだ?)ので、まぁだいじょうぶだろう。

 ニュースレターはウェブサイトにpdfで置いてあるが、今号よりパスワード保護をかけることになったので気軽には見られないようになっている(こっそりと楽しんできた方々、すみません)。pdfはあくまでも補助的な媒体というスタンスである。なかなかリクエストできないものかもしれないが、一度発送リストに載れば定期購読可能(無料)なので、気軽にメイルで申し込んでください。

 こちらとしては、冊子の質感とともに、お茶でも片手にリラックスしながら読んでほしいと願っています。

2008/05/05

The Waltz of the Polypeptides

 アメリカのCold Spring Harborに来ている。2年に一回のシャペロンのミーティングで発表するためだ。発表は今までにない長い時間をもらえて、光栄なことであった。それはともかく、今回おもしろいオブジェができていた。それがこのタイトルで、リボソームで蛋白質ができていくところを模しているアートだ。思わず写真を何枚も撮ってしまった。横に見える長いヒモのようなものがmRNA、ぽつぽつと見える大きな物体がリボソームである。リボソームの大きいサブユニットと小さいのが合わさっている。


 mRNAにはリボソームが何個もくっついており、少しずつポリペプチドを合成していくのを見せている。左の写真はだいぶ合成が進んだ後を示していて、リボソームから出てきたポリペプチドがフォールディングしているようだ(出てくる位置は見慣れている絵とはちがうような気もするが)。最後にはていねいにもリボソームが解離して、ちょっと離れた位置に「蛋白質」の立体構造のオブジェがある、という流れだ(はたしてこの蛋白質はなんの立体構造なんでしょうか)。


 Cold Spring Harborはワトソン博士がいることでも有名な研究所であり、会場のある建物にはかの有名なDNAダブルヘリックスのオブジェが堂々と置かれている。ここで紹介した蛋白質合成のオブジェは、会場を出てキャビンと呼ばれる宿泊施設へ行く途中にひっそりと置かれており、ミーティングに来た人でも宿泊施設は分散しているので気付かない人も多いだろう。蛋白屋としては、ぜひ目立つところに置いてほしかったなぁ・・・。

2007/12/18

「タンパク質の社会」

ずいぶんと更新していませんでしたが、最近動きがあったのでいくつか報告です。

まずは、今年の夏に採択となった科研費特定領域研究「タンパク質の社会」の事務局を仰せつかることとなったので少し宣伝です。

ロゴの作成、ウェブの立ち上げを行いました。
ロゴはカラフルで明るいイメージで、虹色の輪はCommunityのCに加えて、ChaperoneのCも意味しています。

ホームページもぜひ一度ご覧ください。

「タンパク質の社会」オフィシャルサイト

2007/11/23

パズル(7) 消しゴムパズル

 これはどこかの文房具屋で見つけた消しゴムとして売っていたパズルである。角がいっぱいあるのできっと実用的でもあるのだと思うが、最近では鉛筆はすっかり使わなくなった。






 けっこう難しいし、ゴムだからはめ込んだときの、達成感が少しとぼしいような気がする。





   

2007/11/21

パズル(6)組み木パズル

 (下書きに放置したままの記事が実はたくさんあるので少しずつ仕上げていこう)

これは組み木パズルであるが、パーツはばらばらになる。
もの自体はどこかにいってしまった。 







と、思っていたら、お茶部屋にふつうに置いてあった。

2007/09/28

クワガタが部屋に・・・

7月の終わり頃だったか、自分の居室に入ろうとしたときに黒い物体が床の上に。もしや、ゴキブリか!と思ってよく見たら何とクワガタの雌であった。学生のいたずら?とも思ったが、そうではないらしい。キャンパス内ではカブトムシを見かけることもあるくらいだからいても不思議はないが、自分の部屋にまでいるとは・・・。2センチくらいの小さいやつだったが存在感はあった。

2007/04/29

柏名物 キジに注意


柏キャンパスには種々の野鳥がいて、ときおり目を楽しませてくれる。中でも存在感に圧倒されるのは野生のキジである。噂はかねがね聞いていたが、最初に生で見たときには、こんな大きな鳥が身近にいることに驚きを覚える。金属的な鳴き声もいったん覚えると、「あ、あそこにいるな」とすぐにわかるようになる。桃太郎の「キジがケンケン」というのも納得だ(実際には「キーン」とぼくには聴こえるが)。

昨年だったか大学院の一斉メイルで「キジにご注意ください!」というのが流れてきた。なんでも、雌のキジがヒナを守るために人を脅かすようなことがあるらしい。

2006/11/12

パズル(5) 組み木パズル

 これはパズルらしいパズルで対称性が美しい。中に赤い木の球を入れることから、シャペロニンが変性したタンパク質を中で折りたたんだあとのようすを示している、と見立てる(ちょっと苦しいか・・・)。

 入手先は昨年出張で出かけた上海。ごみごみしたビルの中にあったパズル中心の小さな小さなお店で買い求めた。他にもいろんな木製パズルがあり、中には日本の100円ショップで見かけるものも。 一緒に行った某教授は店の人が言うに「一番難しい」パズルを買って帰ったが、さて解けたのであろうか(解答はない、と確か言っていた)。

 この写真のパズルは研究室のお茶部屋では難なく組み上げられた。規則さえわかれば楽しく立体構造を構築できる。ただ、崩すとパーツがばらばらになるのが困った点で、細い棒が散乱していたので、もう二度とこの美しい姿にはならないかもしれない。


パズル(4)ポリペプチドもどき2

 次に示すのは、よりポリペプチドっぽい感じのものである。これもパズルと言うよりもおもちゃと言うべきものだ。ポリペプチドで言えば、主鎖にあたる部分だけで成り立ち、くねくねと曲がる。変性状態からギュッと詰まったフォールディングした状態、ちょっといじって、ヘリックスも簡単にできる。

 このヒモのようなおもちゃを最初に入手したのは4,5年前だったかの生化学会(京都)である。アメリカ分子生物学・生化学会の宣伝ブースに置いてあったのだが、やはりポリペプチドもどきということなのだろう。
 その後、お台場の科学未来館でも同様のものが売っていることを見つけ、何個か買って、全部つなげると100残基程度までは行くようになった。


 こいつは変性タンパク質っぽさはよく表現できるがカチっとした形のあるタンパク質をつくるのは難しそうだ。色をうまく考えて、疎水性残基は赤、親水的は緑、とか、そのくらいはできるかな。

2006/09/26

マリモとプリオン

 次に紹介するのはパズルではなく、マリモである。これが研究とどう関係するのか? 一見わからないだろうが、ぼくにはこれがプリオンの凝集体に見える! 

 どういうことかまだわからないだろう。プリオンやアミロイドを細胞内で研究するときにはプリオン蛋白質にGFPを融合させて、細胞で発現させる、ということがよく行われる。そのプリオン蛋白質がプリオン化して凝集になると、細胞内で緑に光る輝点(粒)が生じる(注)。それが視覚的にもわかりやすいので、プリオンやアミロイドになった証拠として使われるのだ(それに対して凝集になっていない場合には細胞質全体が緑になる)。

 そこでぼくたちの研究である。
 酵母のプリオンSup35蛋白質でもSup35-GFPの「輝点」がプリオン細胞の目印として用いられる。では、この輝点を酵母が増殖していくときにずっと観察していけばどうなるであろうか。この輝点がプリオンそのものならば「増殖」するはずなので、輝点は2つや3つに分裂して増殖していくのでは?と考えた。

 答えは、否。

 この輝点は分裂して増殖するどころか、観察していくうちに見る見る消失していくことがわかった。
と言っても、ほんとうに「消失」していたわけではなく、大きな輝点がほぐれてオリゴマーとなる(通常の顕微鏡ではオリゴマーは細胞質に拡散して見えるだけである)。詳細はKawai-Noma et al., Genes to Cells, 2006を参照してください。
 
 ここでマリモに戻るが、マリモは酵母プリオンで見えた「輝点」に相当する、と考える。マリモも元はと言えば、小さな藻が球状に集まったものだ。なので、その小さな藻をプリオンのオリゴマーと考えたわけである。

 ちなみにこのマリモは札幌出張の帰りに買ってきたものだ。天然モノではなく人工マリモです。頭の中がプリオンのオリゴマーと巨大な凝集体でいっぱいだったので、見た瞬間、これだ!となった。
 さらに言えば、ずっと観察していてもほぐれてはいきません。マリモとはそういうものだろうけども。

(注)細胞内でプリオンの存在状態というのは案外わかっておらず、試験管内で作るとできるきれいな線維と細胞内プリオンの実体の関係はまだよくわかっていない。

2006/09/24

パズル(3) ポリペプチド鎖

このパズルは特に何かのかたちにするというわけではなく、いろんなかたちのものが作れる。特に答えがあるわけではないので「パズル」というよりは「おもちゃ」であるが、こういうタンパクっぽいものを見かけるとつい買ってしまう。と言っても、これ自体は短いのでペプチドかもしれないが。
 ここでは、同じおもちゃ2つを使って適当な「かたちのあるもの」を作ってみた。このおもちゃは先に紹介したキューブ型のパズルとはちがい、パーツ間をつなぐ部分がゴムになっているのでかなりフレキシブルに動く。という点ではタンパクっぽいかもしれない。

これは一昨年に行ったイタリアのPaviaという小さい街をぶらぶらしているときに見つけた。ちなみにPavia大にはゴルジ体を見つけたゴルジさんの立派な銅像が鎮座していた(とえらそうに書いているが、その場にいた日本人はぼくも含めて誰も「あの」ゴルジさんとはそのとき知らなかった・・・)。

パズル(2) シャペロニンのかご

 パズルの第2弾は、シャペロニンの「かご」を模した(?)パズルである。シャペロニンとはタンパク質のフォールディングを助けるシャペロンというタンパク質であるが、その構造自体がとてもユニークで内部に4〜5nm幅の空洞がぽっかりとあいている。かごのメインはGroELという大きなシャペロニンタンパク質で変性タンパク質を捕らえることができる。そこにGroESというフタがATP依存で結合すると、変性タンパク質が中に閉じ込められ、その内部でフォールディングが最後まで進行する。問題はどうやって内部で戻ったタンパク質を外に出すかであるが、現実のシャペロニンではATPがもう一度使われるのである(詳細は田口の総説など参照)。

で、パズルであるが、かごの中に閉じ込められた星を外に取り出す、というものだ。閉じ込められた星はけっこう大きいのではたしてどうやって取り出すか。この写真からはわからないが、やってみるとけっこう簡単である。




実際のシャペロニン(GroEL-GroES)複合体にタンパク質が閉じ込められたようすのシミュレーション図も載せてみる(Sakikawa, et al., JBC, 1999)。ここで使っているのは実験的に閉じ込めが起こることがわかっている約54kDのタンパク質(BFP-GFP融合物)であるが、けっこうきつきつだ。現実のシャペロニンの空洞の中でフォールディングがどうやって起こるのか、シャペロニンがフォールディングそのものに影響を与えるのかは、まだ議論が多いシャペロニン研究のフロンティアである。

2006/09/13

パズル(1) タンパク質のフォールディング


補足情報としてぜひ載せていきたいものとして、パズルがある。タンパク質はアミノ酸がつながった「ひも」であり、それが折れたたんで(フォールディングして)最終的な「かたち」をもったタンパク質になる。そのプロセスを思い起こさせるパズルというのはけっこうあるもので、これまでにそれなりに集めてきている。自分の発表資料のイントロなんかでもずいぶんと活躍してもらっているし、講義でタンパク質のフォールディングを解説するときに手でもてあそんだりもしている。
 ということでいろいろともっているのだが、まず第一弾は、いかにも「フォールディング」という感じの立方体パズルを紹介したい。このパズルの存在自体は東工大時代にとある院生がオーストラリアでの学会(?)か何かで見つけたと言って見せてくれて感動したのが最初である(ちなみにF1-ATPase研究をしていたが)。その後、自分でもドイツ出張の際に同様のものを見つけた。今は研究室のお茶部屋の友としてみなに愛されている。これができないと田口グループに入れない、という噂もあるが、ぼく自身がどのくらいで完成させられるかは実はヒミツである。
 このパズルのフォールディングとの関係は一見してわかるもので、説明はいらないと思われる。実際、他の研究者でも愛用されていて、阪大の某先生はこれでアミロイドまで作っておられる。
 「変性」、つまりキューブをこわすのは簡単だが、フォールディング、つまり元に戻すのが難しい、というのはタンパク質のフォールディングと同じだ。ただ、ヒモを形成するパーツ(アミノ酸に相当)とパーツをつなぐ部分の回転の自由度はかなり制限されており、その点ルートも限定される。タンパク質のフォールディングはもっとぐにゃぐにゃしたところから、かちっと決まるわけである。
 今では100円ショップでも手に入ります。ぜひお試しを!

2006/09/09

Supplement

 このブログを立ち上げるに際してタイトルを何にするか思案していたが、ふと思いついてSupplementary Online Material on Taguchiとした。これは日頃論文を読み込んでいる研究者の方々ならばおそらくご存じであろう、Science誌のSOM (Supporting Online material)からヒントを得たものである。「Supporting」というと何をサポートするのかよくわからないので、ここではSupplementaryとした。

 研究者でない方には、何のことかわからないかもしれないので簡単に説明しよう。誌面に制約のある学術雑誌(Nature、Science、・・・)では本論文に載せることのできない実験データを補足情報としてオンラインで提供している。ネットが発達しているからできることである。以前なら文中にdata not shownということで終わらせていたデータが今ではサプリメントに載せることができる。極端な場合では、実験方法に関することはすべてオンラインの補足情報に載せる場合すらあるほどだ(Science誌)。

 おもしろいのはこのサプリメント情報を何と呼ぶかが雑誌によって微妙にちがうことである。

Nature → Supplementary Information
Science → Supporting Online Material (SOM)
Cell → Supplemental Data
PNAS → Supporting Information
EMBO J. → Supplementary Information
JBC → Supplemental Data

というような具合で、微妙に少しずつ変えているようだ。
が、EMBO J.とNatureは同じグループだからか同一の名称だ。
では、CellとJBCは?ということになるが・・・。