2017/07/12

シャペロニン「フットボール」のストラップ

 共同研究者の小池あゆみさん(神奈川工科大)からたいへんうれしいギフトをもらった。大腸菌のシャペロニンGroELとGroESのフットボール型複合体構造のストラップだ。


私たち自身が島村達郎さん(京大)たちと共同研究で決定した結晶構造(Koike-Takeshita, A. et al., J. Mol. Biol. 2014, PDB ID: 3WVL)を元にしたモノである。

 野生型のGroELとGroESだとフットボール型はGroELのATPaseサイクルで過渡的にしか形成しないので「フットボール」構造を固定することはできず、結晶作成は通常は無理である(注1)。このフットボール構造はGroELのATPase活性を極端に遅くした変異体ができたから実現した構造である(Koike-Takeshita, A. et al., J. Biol. Chem. 2014)。GroELの52番目と398番目の2つのアスパラギン酸をアラニンにした変異体(GroEL-D52A/D398A)では一週間以上GroELとGroESがフットボールのままとなる(タンパク質のフォールディングを助ける能力は同等)。


フルカラーの3D模型である。石膏製であり、廉価版の3Dプリンターでは作成できない。実際の作成はスタジオミダスさんに特注したものである。スタジオミダス製作の模型はこれまでにも本ブログで紹介してきた(→「シャペロニンの模型が手元に!」)。スタジオミダスさんでは山形大の川上勝さん考案のタンパク質のシリコーンモデル(Kawakami Model)を作っている以外にも、今回紹介した石膏モデルでのタンパク質模型も作成してオンラインショップで売っていたりもする(→SilMol-mini スタジオミダス)。

いずれにしても、小池さん、どうもありがとうございました。

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追記:
実は、フットボール以外でもタンパク質模型を持っていた。昨年の分子生物学会である企業がノベルティグッズとして配付していたのだ。
リボヌクレアーゼAとその阻害タンパク質の複合体である。


スタジオミダスさん制作で市販されているセットに組み込まれているタンパク質だ。ストラップではほぼ同じサイズだが、実際のタンパク質としては、RNaseA-Inhibitor複合体は分子量6~7万程度、GroELーGroES複合体は分子量100万ほどだから15倍ほど違うことになる。

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(注1)
 実は同時期にシャペロニンフットボールの立体構造が他からも報告されていて、そこでは野生型GroELを使っている(フットボール複合体と因縁のあるLorimerのグループから。Fei X, et al, PNAS 2014)(さらに2015年には別のグループからHsp60でも)。

野生型GroELでどうやって??と思うかもしれない。

リン酸の類似体であるフッ化ベリリウム(BeFx)を使うとGroELのATPaseサイクルが途中でストップしてフットボール複合体ができるという私たち自身が以前報告した性質(Taguchi et al, JBC 2004)を利用している。


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